人間失格
その日の夜。
ベッドの上でフィリアと綾子ちゃんに挟まれ、乳房と太ももで手足をロックされ、首筋をちうちう吸われながら寝息を立てていると、枕元に人の気配を感じた。
「……真乃ちゃんか」
こんな時間にどうしたんだい? と努めて穏やかな声を作る。
真乃ちゃんは行く当てがないため、今夜は俺の家に泊めることにしたのだが、肝心の保護者の許可を得ていない。得られるはずがない。
なので親御さんが通報したら、余裕で誘拐罪が成立する。
さきほど真乃ちゃんが父親に送った『今日は一人でホテル泊まるから』というホラが、俺の社会的生命をギリギリのラインで支えているのである。
万が一真乃ちゃんが機嫌を損ね、『もしもし週刊文秋さんですか? 私、中元圭介さん家に泊まりました』なんてタレコミをしたら、俺の人生は終わるのである。
そんな悲劇は誰も望まないため、真乃ちゃんに優しくしているのだが……。
「泣いてるのか?」
「……」
真乃ちゃんはグスグスと鼻をすするばかりで、何も答えない。
なぜだ? なぜなんだ?
若い女の子の考えていることはさっぱりわからない。
真乃ちゃんは女子中学生で。
俺のことが好きで。
俺は今、二人の女と淫らに絡み合いながらイビキをかいている。
この状況のどこに少女を泣かせる要素があるんだ……?
マジでわっかんねーな。女心って謎だわ。もしかして腹が減ってんのか?
「夜食でも食う?」
「どこでどうバグればそういう結論に行き着くんですか」
真乃ちゃんはいじけた声で突っ込みを入れる。
「鈍感を通り越して、頭がおかしいと思います」
そんなこと言われてもな。
俺の精神は度重なる戦闘で亀裂が走り、ひび割れてしまった。しかもその隙間に、アンジェリカの母性という劇薬が流し込まれたのだ。割れた鎧に母乳を注ぎ込んだら、それはもう防具の形をしたベビー用品だ。
おまけにリオや綾子ちゃんやフィリアやエリンも俺の争奪戦に加わってきたのだから、正常な判断力など維持できるはずがない。「あれ? なんか俺おかしくね?」と疑念を抱く瞬間が稀にあるのだが、すぐさま誰かが押し付けてくる乳尻で思考力を粉砕されてしまう。
要するに俺は、女の子達によって快楽堕ちさせられてしまったのだ。
俺こそが性被害者なのだ。
訴えたら金がもらえるんじゃないだろうか?
そんな屁理屈を口にしたところ、真乃ちゃんは一層激しく泣き始めた。
「……ひ、酷い……じゃあここの女の人達は、嫌がる中元さんに、無理やり……え、えっちなことをしてるんですね?」
いや、別に嫌がってはないんだけど。
むしろ嫌じゃないのが困るというか。
アンジェリカ達とイチャイチャするたび、俺の中のモラルが死んでいく。その取り返しのつかない感覚は、恐ろしいと同時に喜ばしい。
無駄使いや暴飲暴食にも近い、禁断の悦びと言える。
まあ真乃ちゃんが俺にとって都合のいい解釈をしてくれる分にはありがたいので、勝手に泣かせておくことにする。
俺にはよくわからないが、女性というのは泣いたり愚痴を吐いたりすると、まるで問題が解決したかのような気分に陥るらしい。
なので目の前で泣き始めたら、好きなだけ泣かせておけばいいのだ。
そしてほとぼりが冷めた頃を見計らって、「そんな顔させちゃってごめんな」「俺が悪いんだよな」「お前が一番好きなのにな」「おっぱい揉んでいい?」と畳みかけると、仲直りついでにパイタッチできたりする。
連日のように女を持ち帰っているせいで、最近は日替わりで家の中の女が泣いているわけだが、そういう時はこうやって解決しているのだ。
俺はフィリアと綾子ちゃんに挟まれながら囁く。
「真乃ちゃん……そんな顔させちゃってごめんな」
「……」
「俺が悪いんだよな」
「……やっとわかったんですか」
「お前が一番好きなのにな」
「な、なに言ってるんですか!?」
「今日はもう寝なよ。中学生に夜更かしは早いよ」
さすがに現役JCにパイタッチをねだらない程度の理性は残っている。それは「死体を食べない」とか「裸で街を歩かない」レベルの、人間として最低ラインの理性な気がしないでもないが、残ってるったら残ってるのだ。
「とりあえず、朝まで休戦ということにします」
「助かるよ。……おやすみ」
「おやすみなさい」
真乃ちゃんの気配が遠ざかったのを確認すると、俺は再びフィリアと綾子ちゃんをまさぐる作業に戻った。
フィリアの唇を吸いながら、綾子ちゃんの髪を撫でる。
俺だって好きでこんなことをしているわけではない。
この二人は正真正銘の危険人物で、定期的に可愛がってやらないと殺人をほのめかすような言動をし始めるのだ。
よってこいつらとのイチャイチャは、感覚としては猛獣に麻酔銃を撃ち込んでいるのに近い。
Gカップ美女とEカップ美少女の全身を弄ぶことで、近隣住民の命を守る。四捨五入すれば完全に正義であろう。




