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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: タカハシ ヒロ
第八章 光営業

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知らない女


「さっきのって……」


 激戦を終えた俺に対して、真乃ちゃんは宇宙人でも見るような目を向けてきた。

 無理もない。俺は大の男をブン殴って、数メートルも吹き飛ばしたのだ。

 不信感や恐怖心を抱かれるのは当然であろう。


「あの、赤ちゃん返りがどうこうって聞こえたんですけど」


 ……そっちか。

 女子中学生からすると、惚れた男の性癖は何よりも重要な問題らしい。

 俺は真乃ちゃんの頭を優しく撫でつつ、


「あの変態どもに話を合わせたのさ」


 とホラを吹いた。

 真乃ちゃんはしばらく黙り込んだあと、「そうですよね。中元さんに限って、ありえないですよね」と納得してくれた。

 あるいは「自分が信じたい方向に身を投げた」といったところか。人はそれを深みにはまると言うのだが。


「ひとまず移動した方がいいな」


 魔法を習得したチンピラがうろついている以上、もはやこの街に安全な場所などない。

 ……俺のマンションという、戦力が過剰集中しているスポットを除いて。




「ただいまー」


 俺は真乃ちゃんを連れ、少し早めの帰宅を果たしていた。

 アンジェリカ達には「また新しい女の子を拾った」とスマホから連絡を入れておいたので、大した騒ぎにはならないはずだ。

 最近はもう三日に一度のペースで女を持ち帰ってるし、あいつらも耐性ができてるはずだろうよ、と人間失格なことを考えながら玄関を開けると、


「おかえりケイ君!」


 なんか、知らない女に出迎えられた。

 え、誰だこいつ。

 エプロン姿で右手にお玉を持っていて、長い銀髪を後ろにまとめあげているようだが、顔はフィリアそのものである。


 ……多分、フィリアだよなこれ。


 なんでこんな若奥様みたいな恰好してるんだ? 

 あと一番気になるのは、


「ケイ君って何?」


 まずそこから説明してほしかった。

 いつもの事務的な勇者殿呼びか、錯乱してる時のお父様呼びじゃないと落ち着かないんだが?


 フィリアは一瞬きょとんとしたあと、


「だって私達って、もう付き合ってるんでしょう?」

 

 と返してきた。


 ……重いわ!

 一緒に風呂入って勇者汁を浴びせかけただけで、当然のように彼女面してきやがる。

 いや確かにそれは彼氏彼女でなければ許されない行為なのだが、あれは単なる事故であって……。


「とりあえず話があるから、こっち来てくんないか」

「式の段取りですか?」


 年増女ってすぐ結婚したがるよな。

 真乃ちゃん的にはどうなんだこれ? いきなり修羅場が始まるのか? 

 恐る恐る様子を窺ってみると、「よかった……中元さんはロリコンじゃなかったんだ……」と安堵しているのが言見えた。


 どうやら大人の女をたぶらかしているというのは、JC的には好印象なようだ。

 こういうのも怪我の功名と言うんだろうか? 

 俺は二人の機嫌がいいうちに話を済ませておくべきと判断し、寝室に連れていくことにした。

 

 右手はフィリア、左手は真乃ちゃんと繋ぎ、廊下を進む。

 両手に花と呼ぶには少々片方のとうが立ちすぎているが、贅沢は言うまい。


「おやお父さん、おかえりなさい」

「……おかえりなさい」


 途中、リビングでアンジェリカと綾子ちゃんを見つけたが、なにやらノートパソコンの画面を覗き込むので忙しらしく、そっけない反応であった。

 あいつらは今のフィリアを見てなんとも思わないんだろうか? 


「なあ、アンジェ達に何か言われなかったのか?」


 フィリアにたずねてみると、右の頬に手を当てる、満たされた奥様ポーズで答えられた。


「神聖巫女でしたら、私を見るなり『今日はいつもより症状が酷い』と言い出して、統合失調症とやらを調べ始めましたが」

「……そうか」


 おそらくあれは、綾子ちゃんと一緒に調べ物をしている真っ最中なのだろう。

 賢明な判断である。

 俺はアンジェリカ達の心中を察しながら寝室に入り、先にフィリアと真乃ちゃんをベッドに座らせた。

 両手が空いたところで、ドアを閉めにかかる。


「ふう」


 後ろ手で鍵をかけながら、本題に切り込む。


「フィリア」


 俺の呼びかけに、異世界の女神官はピクリと片眉を上げた。


「こっちの世界の住人を、レベリングしてる輩がいる。間違いなくあっちの世界の刺客だろう。何か心当たりはあるか?」

「……ふむ。その前に私からも一ついいでしょうか」

「なんだ?」


 フィリアはこれ以上の重要事項はない、と言いたげな顔で告げる。


「私のことはふぃーたんって呼んで?」

「……」


 お前いつまでそのノリ続ける気なの?

 高校生カップルじゃねえんだぞ! 

 俺は三十二歳だし、お前なんて実年齢は四十代半ばじゃん。 

 いくら肉体年齢が二十代後半でも、キツイものがある。

 ……高齢処女なせいで、恋愛観が妙に乙女なんだよなこいつ。


「ふざけてないで、神官長として知っていることを洗いざらい話してほしいんだが」

「知っていること……? ああ、ケイ君のどんなところが好きか聞かせてほしいってことですか? えっと……がっちりしてるところとか、あっちの世界の男より肌が綺麗なところとか、なんだかんだ言って面倒見のいいところとか。あと時々見せる乱暴さがオレ様でキュンキュンするし、亜人を殺して頭から食べるワイルドさなんてたまらないかなあって……もう! 何言わせるんですか!」


 駄目だこの女……浮かれすぎて使い物にならない……。

 早く元のフィリアに戻さないと、必要な情報を引き出せそうにない……。

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オーバーラップ文庫様より、第三巻発売中!
今回もたっぷりと加筆修正を行い、書下ろし短編は二本収録! そしてフィリアのあのシーンにも挿絵が……!?
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i358673
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