最強勇者、最低賢者になる
即ちこれから始まろうとしているのは、JCが己の肉体をリトマス試験紙として用いた、ロリペド検査――!
溢れる背徳感に、もはや言葉も出ない。
俺はすっかり脱力し、抵抗する意志を失っていた。
ここは無抵抗な方が楽しいことが起きるのでは? という予感に従ったのもあるが、純粋にショックを受けていたのも事実だ。
俺はされるがまま、真乃ちゃんの乳房を揉まされ……撫でさせられる。
数十分前に触れた早坂さんの完熟メロンとは違う、未成熟な果実。
その罪深い触り心地に、俺の体はというと――
「え……?」
――全く、これっぽっちも反応していなかった。
「は、何をそんなに驚いてるんだ?」
「で、でも……中元さんは女子高生でも平気で食べちゃう、悪い大人なはずなのに……!」
「リオと婚約した件を言ってるのか? あれも実は訳ありなんだ。俺は同年代の女性にしか興味のない、ノーマル男なんだからな」
「それは多分嘘な気がする……!」
まだ信用しきれないらしく、真乃ちゃんはさらに大胆な行動に出てきた。
俺の上にまたがり、唇を吸ってきたのである。
「……」
だがこれは……まるで小鳥が餌をついばむかのような、可愛らしい接吻じゃないか。
おいおい、これじゃただのお遊戯だ。これで成人男子を興奮させようってのか?
所詮は女子中学生のテクだな。鼻で笑ってやろうとした、その時だった。
「――!」
なんと真乃ちゃんは、ぬるりと舌先を差し込んできたのである。
平成生まれの瑞々しい舌を、昭和生まれの口にねじ込み、ディープキスに移行しようというのだ。
……有罪だ。
どんな敏腕弁護士を雇っても、有罪だ。
俺の口内はあっという間にJCの唾液で満たされ、甘く切ない義務教育の味が広がっていった。
制汗剤。黒板消し。ワイシャツの下からうっすらと透けて見えるブラのホック。十四歳の女子を連想させるありとあらゆるイメージが、何度も脳裏に浮かんでは消える。
鼻にかかる息さえも、どこか甘ったるく……。
あどけない舌使いは、いっそ微笑ましいほどで……。
思わず守ってあげたくなるくらい、幼くて……。
――ああ。胸を張って言える。
俺が今感じているのは「この子を叱らなくては」という感情と「自首しよう」という罪悪感で、決して性欲なんかじゃない。
俺は女子中学生には、催さない……!
「俺のストライクゾーンはすっかり下方向にガバガバになっちまったが……さすがに十六歳未満にムラムラするほど落ちる球専門じゃねーんだよなあ」
「何言ってるのかよくわからないけど、本当にロリコンじゃないの……?」
唇を離した真乃ちゃんは、探るような目で俺を見ていた。
「今のではっきりしただろ? 俺は君を性の対象としては見ていない」
「……じゃあ」
「そう。俺は紛れもなく、警察の協力者だ。真乃ちゃんを買ったのも、あくまで保護目的に過ぎない」
少女の目に、じわりと涙が浮かぶ。
「……信じていいの?」
「俺は何があっても君の味方だよ」
誠意が伝わったらしく、真乃ちゃんは声を殺して泣き始めた。
……可哀想に。
体を使って男の真意を確かめるなんて、思い付きでできることじゃない。
きっと今までも似たような経験があったからこそ、やろうと思ったのだろう。
おそらくあの糞親父に強要され……業界人に体で媚びを売るような真似をさせられてきたのだ。
「辛かったな」
俺は真乃ちゃんの肩を抱き寄せると、あやすように頭を撫でた。
言葉は要らない。今この子に必要なのは、包み込むような父性だ。
「……中元さんがちゃんとした人でよかった」
「だろ?」
「えへへ。私今日、ここでロストヴァージンするんだろうなあって覚悟してたから。なんか力抜けちゃった」
「俺が正義感の塊で良かったな」
「うん……中元さんは正義の味方で、子供の体に興味を持たないマトモな大人」
まあ種明かしをすると、今の俺が賢者モードだから何とかなってるんだけどな。
実はマンションを出る直前、フィリアと風呂場で洗いっこをしてたら、そのなんだ、暴発してしまったのである。
今日のフィリアは正気だったので、昔話をしながらイチャイチャしてるうちに、恋人気分になってしまい……気付けば意思とは関係なく煩悩が吐き出され、あいつを大喜びさせる事態となったのだ。
さすがに一線を越えるような真似はしなかったが、それ以外のことは全部やってしまった。
およそ一ヵ月分のスッキリを味わっただろうか?
バスタオル一枚の真乃ちゃんにベロチューされても、無反応でいられるのはそれが理由である。
ぶっちゃけ平常時の俺なら普通に反応していたと思うが、そんな不都合な事実を明かす必要はどこにもない。
「もう少し時間を潰したら、ここを出ようか」
「うん!」
真乃ちゃんの瞳は、澄んだ光を俺に向けていた。無垢な信頼の光。俺を信じきっている光。
「……中元さんの目、見てると安心する。欲望がどこにもないんだもん。私とくっついても、えっちな気分になってないのが伝わってくる」
「ははは。俺は紳士だからね」
「さっきは……」
「ん?」
「さっきは試すような真似して、ごめんなさい」
「気にするな。子供は大人を試したがる生き物なんだ。誰だってそうやって大きくなる」
「……怒ってないんですか?」
「どうして俺が怒らなきゃいけないんだい?」
落ち着き払った声で返すと、真乃ちゃんは照れくさそうに俯いた。
「……なんでここまでしてくれるのかって、聞いていい?」
「女の子を助けるのに理由なんて要るのか?」
女の子はいい匂いがするし、触るとふにふにして気持ちいいし、味も美味しい。
喋るスイーツみたいなもんだ。
目の前でケーキに蹴りをかましている人間がいたら、誰だって制止するだろう?
それだけの話さ。
今割と格好いいこと言ったつもりなんだけど、味って表現が混じったせいで全部台無しな気がするなこれ。
「中元さんって、ドラマに出てくる人みたい」
「ならヒロインは君か?」
「……年が離れすぎてるよ」
「キャスティングの段階でおかしかったってわけだな。主演女優が可愛いってとこ以外、何の見どころもない作品になりそうだ」
「それ本気で言ってる?」
「客観的に見て美少女だと思うよ。俺と同年代だったら惚れてたかもな」
えー私の体じゃ興奮しなかったくせにー。と真乃ちゃんは照れ笑いを浮かべている。
……何やってんだろうな俺。
現役女子中学生と的確に距離を縮めてるっつーか、ナチュラルに口説きモードに入ってね?
日常的に女子中高生のご機嫌取りをしてるからか、彼氏風のコミュニケーションしか取れない障害に陥ってね?
【パーティーメンバー鈴木真乃の、中元圭介に対する感情が「疑念、不信」から「信頼、恋慕」に変化しました】
【鈴木真乃の好感度は、性交渉及び婚姻が可能なレベルに到達しました】
【鈴木真乃を配偶者に指名しますか?】
やっちまったか、と俺は天井を見上げる。
共演者の女の子や女性スタッフ達もこんな風に好感度を上げてしまい、今ではレギュラー番組がどこも俺の大奥と化しているというのに、またもやハーレムメンバーを増やしてしまうとは。
もう俺、どうやれば女の子に嫌われるのかわかんねえよ!
と弱音を吐きかけたが、世間一般の人からすれば「は? 死ねよ」としか言いようのない愚痴なのはわかっているので、自分の中で押し留めておくことにした。




