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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: 高橋弘
第八章 光営業

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こんなの誤差


 パーティー会場の捜査は婦警二人に任せ、俺は保護対象の解放作業に入ることにした。

 少女と共に権藤の車に乗り込み、指定されたラブホテルへと移動する。

 すでに部屋の予約は済んであるらしく、入ってすぐにプレイを楽しめるとのことだった。

 延長は自由、どうぞ楽しい一時を。そう語ったのは、よりによって少女の父親だった。

 

『中元圭介さんですね、いつもテレビでお見かけしておりますよ。いやあ実にお目が高い。うちの真乃(まの)はこれまでボーイフレンドとは無縁の生活を送ってきた、正真正銘の処女! しかも前もってピルを飲ませておいたんで、今日は避妊せずに楽しめるときた!……で料金の方ですが、こちらの口座に振り込んで頂けますかね?』


 俺はあれ以上の糞親父を見たことがない。

 自分の娘が如何に商品(・・)として優れているかを、笑顔で語る父親。

 あんなものを目の前で見せられた子供がどうなったかというと、当然、目が死んでいる。

 

 被害少女――鈴木真乃(すずきまの)は顔面蒼白で、唇はカサカサに乾き切っていた。

 本来であれば可愛らしいはずの顔が、今は幽鬼のように見える。心ここにあらずといった様子だ。


「なあ真乃ちゃん」


 名前で呼びかけると、少女の肩がビクリと跳ねた。

 俺のことを危ないロリコン野郎と思い込んでいるのだから、仕方ないことだが。


「ホテルに着いたら、話したいことがあるんだ」

「……」


 真乃ちゃんの体は小刻みに震えている。

 一体どんな特殊プレイを要求されるのだろう、と悪い想像を膨らませているのかもしれない。


「安心しろよ、君にとっても悪い話じゃないから」

「……痛くしないで下さい……」


 助手席の権藤が高笑いをする。


「そうビビんなってお嬢ちゃん。中元の旦那は決して悪い男じゃねえ。喧嘩になった相手を殺しかけたり、未成年と淫らな行為に及んだり、外国籍の女を不法滞在させたりする癖があるだけで、根っこの部分は面倒見のいい親分肌よ」


 そのフォロー全然大丈夫じゃねえから。

 わざとやってんのかお前? 

 真乃ちゃんちょっと漏らしてんじゃん! スカートにシミが広がり始めてるんだけど!?

 

「おい、臭いで気付いてるだろうが、お前のせいでシートが汚れたぞ」

「何言ってんだ? 十代女子の尿を『汚れ』と表現するなんて、ヤクでもやってんのかよ? それは俺らの業界じゃ、『仕上げ』って言うんだ。俺の車は今この瞬間完成されたんだ」


 真乃ちゃんはほとんど気絶しかけていた。

 今まさにPTSDが形成されてる真っ最中です、といった感じだ。

 ……いくらおとり捜査とはいえ、子供をここまで怖がらせるのは気分が悪い。

 

 俺は真乃ちゃんを怖がらせないよう、


「大丈夫、女子中高生の扱いには慣れてるから」


 と笑いかけてみた。

 

「それトドメの一撃って言うんだぜ、旦那」


 やがて車は滑らかな動きでホテルの駐車場に滑り込み、音もなく停止した。

 俺は失神した真乃ちゃんを背負い、無人のフロントでチェックインを済ませる。

 オートロック形式らしく、ルームキーの類は渡されなかった。


 俺はピクリとも動かない女子中学生を抱きかかえ、指定の部屋へと向かう。

 パネルを見る限り三角木馬やロープが設置されてるヤバめの部屋みたいだけど、あの父親は何を考えてこんな物件を予約したんだろうか?


 ……十四歳の少女を、ガチめのSMグッズつきホテルに連れ込む三十二歳……。


 客観的に見て実刑判決以外の何でもないが、これは全て少女を救うための演技。


 そうさ、権藤だって言ってたじゃないか。潜入捜査官が売人を騙すために、わざと違法薬物を買うことだってある。俺がやってるのはそれと何も変わらない。単に買ったのが薬じゃなくてJCなだけだ。

 こんなの誤差みたいなもんだ。

 よく考えれ見りゃ、大麻も女子中学生も似たようなもんだしな。

 どっちも口に含んだらハッピーな気分になれるし、白くてさらさらした手触りだし、手を出したら違法だし。


 頭の中で苦しい言い訳を繰り返しながら、薄暗い廊下を歩き続ける。

 目的の部屋まであとほんの数メートルだ。


「……ん……お父さん……もがっ!?」


 おっと危ねえ。

 真乃ちゃんが目を覚ましたので、大慌てで口を塞ぐ。

 悲鳴を上げられると面倒なことになるからな。通報されたら言い訳に困るし。


 ……これもう本物の犯罪者ムーブじゃね? と大変なことに気付いてしまった俺は、愕然としながら204号室に足を踏み入れる。


「いやあ……いやああああー!」


 いきなり絶叫をお見舞いしてくれた真乃ちゃんをベッドに放り投げ、ため息をつく。


「そんな怖がらないでくれよ、何もしないからさ」

「……ひっ! 女子中学生を見てるだけで興奮する性癖なんですか!? 変態! 変態! 変態!」


 真乃ちゃんは周囲のSM器具に気付いたらしく、カチカチと歯を鳴らしている。


「い、いや……絶対見るだけで満足しないですよねこれ……なにこれ……中元圭介ってこんな趣味だったんだ……!」


 ここにリオを連れてきたら喜びそうだな、と全然関係ないことを考えている場合ではないのだろう。

 俺は哀れな少女を安心させるべく、穏やかな声で話しかける。


「実は俺、警察の世話になってるんだ」

「……」


 もしかしたら誤解を招く表現だったかもしれない。

 ここは『実は俺、警察の協力者なんだ』と言うべきだったかもしれない。

 真乃ちゃんは「前科持ち……?」と呟きながら、こわばった顔でこちらを凝視している。しきりに手を股間付近に伸ばしているのは、漏らした跡を隠すためだろうか。

 

「とりあえずシャワー浴びてきたら?」


 パンツぐしょぐしょで気持ち悪いでしょ? とさりげない気遣いを見せてみる。

 ……なぜだろう、真乃ちゃんの目から本格的にハイライトが消えてしまったのだが、今度は何の地雷を踏んだというのか。


「……覗かないで下さい」


 よろよろとバスルームに向かう少女を目で見送りながら、ベッドに腰を下ろす。

 女の子の扱いってなんでこう難しいんだろうな。

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