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異世界帰りのおっさんは、父性スキルでファザコン娘達をトロトロに  作者: 高橋弘
第七章 スパイ大作戦

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種馬ライセンス


「確かに教授の意見は一理ある。だが……余計なお世話だと言っておきましょう」


 杉谷さんは鼻で笑うと、俺に対して意味ありげな視線を向けてきた。これは共犯者の顔だ。


「一介の大学教授に過ぎぬ身の上ではご存知ないかもしれませんが、我が国の国防問題は完全に解決されている。無人機なんぞよりよほど高度な判断機能を持ち、燃料費もかからず、それでいて核兵器以上の殺傷力を持つ戦力を有しているのですからな」


 それって俺のことか? と口に出さない神経はさすがに持ち合わせている。

 俺、歩く核兵器なんですと言ったところで教授に正気を疑われるだけだろうしな。

 そうやって沈黙を選んだ俺とは対照的に、杉谷さんは得意げにまくし立て続ける。


「よって、いつ暴走するかもわからない新兵器の製造技術など不要なのです。教授のしていることはリスクを招くだけの行為でしかない」

「言うに事欠いてデタラメかね。だったらその『戦力』とやらを見せてもらいたいものだが」

「もうとっくに見ているのだが、気付いていないようですな」

「何……?」

「私は嘘は言っていない。なんなら後で自白剤でも嘘発見器でも持ってくるとよろしい。それで貴方が納得するなら付き合ってやってもいい」

「……既に私の視界に入っているだと……?」


 大槻教授は顎に手をやると、ブツブツと小声で呟き始めた。

 しばらくその状態で思案を続けていたが、やがて意を決したように顔を上げて、


「ヒントをくれ。自分で回答に辿りつきたい」


 と、実に研究者らしい台詞を吐いた。

 どうやら知的好奇心が首をもたげたらしい。


「その戦力というのは、いつ私の視界に入ったんだ?」

「今も入っておりますが」


 杉谷さんは愉快そうに答える。


「今も……そうか、小型なんだな? ナノマシンか何かか?……自己増殖能力は持っているのかね?」

「まあ一応、子孫を残すという形で増殖できますな」

「生物兵器か! そうだな!? 公安はというのはそこまでやるのか!」


 虫か!? それとも細菌か!? と服を払い始めた大槻教授を、杉谷さんは面白そうに眺めている。案外、悪戯好きな人なのかもしれない。


「とにかく安心して下され。我々はその超戦力の血が絶えないよう、これからも若い牝をあてがうつもりでおります。『最強』の血は脈々と受け継がれ、護国の切り札として存続することが確定している」

「その生物は雄なのか?」


 これからも若い牝をあてがうとか聞き捨てならねー発言が聞こえた気がするけど、俺はこのまま黙ってていいんだろうか?

 

「とうに予算も通ってしまいましたからな。内閣府は彼に無制限種付け許可証を発行するつもりで動いています。遠い将来、チンギス・ハンよりも子孫を残した男になるかもしれませんな」

「ちょ、ちょっと待った! 無制限種付け許可証ってなんだ!?」


 さすがに口を挟まずにはいられなかった。

 このおっさん、シラフの状態で何をほざいてんだ?


「気になりますか」

「当たり前だ……自分のことなんですよ」


 怪訝そうに眉をしかめる大槻教授を放置して、杉谷さんは問題発言をぶちかまし続ける。


「スパイ映画などで、『殺しのライセンス』という言葉を聞いたことはありませんかな? マーダーライセンス、あるいはライセンス・トゥ・キル。任務遂行のためならば殺傷行為すら許される許可証です」

「……昔ゲームで見かけたことがあります」

「ならば話は早い。――我が国は貴方に、それの子作りバージョンを交付しようと動いています」

「意味がわからないんですが」

「簡単に言うと、貴方の遺伝子は無限大の価値があるので、あらゆる邦人女性をいつでも妊娠させて良いことになったのです。責任は全て国が取りますので、ご遠慮なく性を謳歌して下され」

「……は?」

「貴方の人柄ならば、まず無差別な強姦など行なわないでしょうし。それを認めさせたからこそ交付許可が下りたのですが……いやぁ説得には苦労しました。前代未聞ですし、途中で四回も精神鑑定されましたし」

「……えっと……つまりどういう……?」

「中元さん」


 杉谷さんは俺の手を握ると、血走った目で言う。


「貴方はこれから、お国のために生きる種馬となるのです。産ませた子供のうち、誰か一人でも中元さんの身体能力を受け継げば国家安泰、五穀豊穣ですからな」

「農作物とは関係なくないですか!?」

「細かいことはどうでもいいので、さっさと身近な女性を妊娠させてくれると助かるんですが。養育費は税金から捻出されるんですから、無責任に仕込み放題ですぞ。もしもお好きな女優やアイドルなどがいるようでしたら、抱けるよう手配しますが? とはいえできれば身体能力の高い女性を孕ませて頂きたいのですが……ああ、女子バレー代表全員に種付けというのはどうでしょう? 今年の代表チームは中々美人揃いと聞いていますが」

「頭大丈夫か!?」

「背の高い女性はお嫌いですか。ならフィギュアスケート選手などは……」

「人権はどこ行ったんだよ……!?」

「国家の安全が最優先です」

「ふ、ふざけんな……もし俺があんたの娘を手を付けるって言ったらどうするつもりだ!?」

「差し出しますが」

「……正気か?」

「中元さんなら女を手荒に扱うような真似はしないでしょうし、国の守護神に自分の血が入るなら名誉なことだ」

「……杉谷さん……あんたひょっとして、俺の知っている人間の中で一番イカレてるんじゃ……」

「ちなみにこれが私の娘です」


 言いながら、杉谷さんは胸ポケットの中から一枚の写真を取り出した。

 そこにはどこか杉谷さんの面差しを感じさせる、品のいい美少女が映っている。

 肌のハリから察するに、大学生くらいだろうか? 


 あとこれはとても重要なことだが、乳房が愛国的な膨らみを有している。見ているだけで国を想う気持ちがムクムクしてきそうな感じだ。具体的には、Fカップ相当。


「父親の私が言うのもなんですが、娘はそれなりに運動神経はいいですし、小中高とミッション系の女子校に通わせたので男の気配もありませんでしたな。もちろん、大学も女ばかりの環境を選びました」

「上流階級のお嬢様……だと……? ま、まさか、上級生を『お姉様』と呼んでたりしましたか?」

「よくわかりましたな? 言葉使いは厳しく躾けたつもりです」

「じゃ、じゃ、じゃあ、ミッション系お嬢様学校で純粋培養されたFカップ処女ってことになっちゃうんじゃないですか?」

「目視でカップ数を当てるとは、やはり中元さんは種馬の才能がありますな! まったく、平成生まれというのは無駄に発育が良くて困ります。小学五年生の頃からはしたなく膨らみ始めたので、着せる服に悩んだものです」

「え、これ孕ませちゃっていいんですか?」

「中元さんさえ良ければいつでも」

「……」


 いや駄目だ、何を考えてるんだ俺は、と鋼の意思で己を律する。

 隣で大槻教授が「うちの娘に手を付けたくせに俺の目の前で何やってんだ?」と言いたげな顔してるし。


「……話の流れからすると、中元くんが例の『戦力』なのかね」


 胡散臭そうな目を向ける大槻教授に、俺は渋々「そうなんです」と答えた。

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