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読み合い

 シオンにそれが伝えられたのは翌朝のことであった。呑気に朝食の用意をしていたところ、後ろからグレンダにその朝食のベーコンを奪われたところから始まる。


「それはオレの朝食なんだが」

「知っているぞ。理解した上で食べているんだ。中々旨いじゃないか」


 指をペロリと舐めるグレンダ。シオンは努めて冷静に抗議する。行軍中だ。指揮官が無暗矢鱈に叫ぶのは士気に関わるのである。


「オレの朝食は高いぞ」

「熨斗付けて返してあげるわよ。無事に帝都まで帰ってこれたらね」


 ふふんと鼻を鳴らすグレンダ。その口ぶりから、また厄介ごとが降ってきたことを察する。こんなことならば昨日、フラグを立てなければ良かったと後悔するシオン。


「で、今度は何をやらされるんだ?」

「お前たちを我が隊に組み込むことになった。そして、我が隊は右翼に展開することになったぞ」

「右に展開って……どうやってするつもりだ?」

「決まってる。無理やり行軍するんだよ」


 それを聞いたシオンはがっくりと肩を落とした。道なき道を無理やり進もうというのだ。まず、馬では通れないだろう。そもそもシオンは馬を連れてきていないので関係のないことだが。


「出発は?」

「直ぐに出る。準備を整えさせろ」


 無茶を言うグレンダ。シオンは「あいあい、マム」と適当に返事をするとシオンはインにこの情報を共有する。そしてインと二言、三言交わした。


「本当に急がせますか?」

「いや、適当で良い。インは急がせた方が良いと思うか?」

「いえ。最後尾に付けるのが良いかと。その方が行軍も楽になります」


 二人は兵士たちを急がせることはしないが前進することは伝える。モタモタと準備をしてグレンダ軍の最後尾に付けた。何故、最後尾が良かったのか。それは前の部隊が道を作ってくれるからである。


 シオンたちは彼らが作ってくれた道を歩くだけであった。これで幾分かの体力を温存することが出来る。道は悪路で草木も生え放題である。行軍の速度は上がらなかった。


 しかし、それでもグレンダは急がせる。彼女は早く目的地について兵士たちに休息を与えたいと思っていたのだ。間に合わなければ中央が不利になるのである。


「どうだ?」

「まだ大きく進まないと敵の側面は突けそうもありません」

「そうか」


 グレンダは焦っていた。何度も斥候を出し、彼我の位置を確認して移動する。せっかく右翼を任されたのであれば相手の背後は難しくても側面は突きたい。そうなると移動量が大きくなる。このジレンマは歯痒い。


 それになによりも、山から下りられる道がなければならないのだ。流石に崖からは危なくて降りられない。なだらかな斜面になっている場所を探す必要がある。


 彼女は時間を決めて移動することにした。日が暮れるまで移動し、そこで休憩を入れる。そして明日はそこから攻勢に出ようと考えていたのである。


 対してゴードラルドは早々に降る場所を決めた。そして、兵を休ませる。ゴードラルドは中央であるベンジャミンと足並みを揃える、彼らを補助するために左翼を引き受けたのである。


 首長国が兵をゴードラルド隊に割けば、それだけ中央が突破しやすくなるのだ。自分の身を囮にしてでも中央軍を突破させる。愛国心溢れる男である。


 中央はじっと息を潜めて待つ。ベンジャミンが出来ることと言えば何か策を弄しているように見せかけることだけである。首長国軍は偵察を出しているはず。ベンジャミンはそう思っていた。


 問題は両翼がどれだけ首長国に把握されているかだ。両翼の動きが戦場の霧として帝国軍のアドバンテージになるのだ。だがベンジャミンは両翼ともに位置までバレて居る想定で動くことにしたのであった。

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