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それぞれの思惑

「シオン=バレラード準男爵閣下はおられますでしょうか!」


 喧しい声に起こされ、シオンは不機嫌な表情を浮かべた。そして手短に「なんだ?」と回答する。声の主はシオンのその声に安堵し、言葉をつづけた。


「『軍議を始める故、急ぎ会議室まで来られたし』とのことにございます!」

「わかった。すぐ行く」


 シオンがそう言うと兵士が立ち去る足音がした。シオンは立ち上がろうとして気が付く。腕の中にココが居ることを。涎を垂らしてシオンの腕にがっしりとしがみ付いていた。


 それを何とか振りほどいて立ち上がると、水を一杯、胃に流し込んで部屋を出る。歩きながら髪を手櫛で整え、思考を巡らせる。軍議ということだが、どのような題目の軍議なのか。


 会議室に入ると、傍らで直立していた兵が大きな声でシオンの名を叫ぶ。それからシオンは前回と同じく、ラースル辺境伯側の端の席に座った。まだ席は空いているにもかかわらず、あえて端を選んだのだ。


 シオンの心がラースル辺境伯から離れていると考える者。シオンが准男爵なので、その自分の立場を弁えて端に座ったと思う者。それを見た周囲の反応は様々だった。


 そうこうしているうちに全員が揃う。ラースル辺境伯が軍議の開始を宣言した。そして、そのままラースル辺境伯が本題を切り出す。


「今日、卿らに集まってもらったのは他でもない。今後、我らはどうするべきかを話し合うためである」


 ラースル辺境伯のこの言葉を聞いてホランド陣営からため息が漏れた。それはラースル辺境伯も認識している。ラースル辺境伯は一呼吸おいて、心を落ち着かせてから言葉を紡いだ。


「我らとしてもこの如何ともし難い状況を打開したいと思っている。そこでどうだろう。斥候を出し、王国が何を考えているのかを探ってみるのは如何か?」


 そう提案するラースル辺境伯。ホランド将軍は顎の下に手を持って行き、考え込む。辺境伯が何を狙っているのかを見極めるよう、将軍は慎重に言葉を発した。


「それは……我らに偵察に向かえと。そう仰っておられるのか」

「いえいえ、そうではございません。斥候は我々から出しましょう。その斥候の持ち帰った情報をもとに次の策を練ろうではありませんか」


 最初、ホランド将軍はホランド陣営を消耗させるため、自陣営から偵察隊を出せと言われるのだと、それを危惧していた。しかし、どうも様子が違う。


 そして気が付く。偵察に行ったフリをして情報操作をしようとしているのだと。それだけは阻止しなければならない。では、どうやって阻止するか。自分たちからも偵察を出すのである。


「お待ちくだされ。任せきりでは私の立つ瀬がない。こちらからも偵察を出しましょう」


 笑顔でそう述べるホランド。この笑顔の裏にはラースル辺境伯の好きにはさせないぞという強い意志が見え隠れしていた。


「では、お互いに斥候を出し、その偵察の意見が一致した場合の情報をもとに次の対応を練るとしましょう」

「もし、片方の偵察しか戻らなかった場合は?」

「戻った斥候の意見を尊重する。これで如何かな?」


 粛々と会話を続けていく二人。この時、二人は脳裏でこんなことを考えていた。打って出たい将軍は辺境伯側の偵察を潰し、自分たちの偵察だけを安全に城に戻す。そして意見を操作しようと考えていた。


 一方、籠城を引き延ばしたい辺境伯は斥候に出す兵の一部を城内に隠し、もし、斥候部隊が帰ってこなくても隠れていた部隊の一部を登場させ、絶対に意見を一致させないつもりであると。


 しかしながら、両者ともに同じ問題を抱えていた。その問題とは誰を偵察および斥候として派遣するかである。包囲されている状況だ。危険を伴う任務である。


 だからといって信用の置けない者に任せられる仕事ではない。さて、どうしたものか。二人揃って頭を捻る。そこから他愛もない会話が続く。その会話をしている最中に偵察の責任者を決めようというのだ。


 先に口を開いたのはラースル辺境伯であった。彼はこの軍議中、誰が斥候に適任なのかをじっと考えていた。そして口を開く。


「さて、では話を元に戻そうか。誰に斥候に行ってもらうかだが……私の方からはグロウェルに行ってもらいたいと思う。やってくれるかね?」

「もちろんです、閣下」


 ラースル辺境伯はふと気が付いたのだ。自身の部下には絶対に危害が加えられないことに。いや、正確にはグロウェルには危害が加えられないのだ。何せ、彼は城内に身を潜めてしかるべきタイミングで現れれば良いのだから。


 それを知っているのか、グロウェルも大きな声で二つ返事で回答した。どうやら二人の絆は固いようである。この決定に困るのはホランド将軍の方である。


「そうですか。では、私はカベンディッシュ卿を推したい。卿、行ってくれるかね?」

「もちろんでございます!」


 そう威勢良く返事をしたものの、カベンディッシュは自分ではなく配下に行かせようと思っていた。つまるところ、孫請けに出そうとしているのである。


 シオンは自分に振られなくて良かったと安堵の表情を浮かべた。彼は自分自身は鳥居強右衛門にはなれないと思っていたのである。


 これでシオンは斥候だか偵察だかが戻ってくるまで暫し待機となるのであった。軍議は進む。それぞれの思惑を乗せて。

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