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孤児兵

 シオンは公爵であり内大臣であるブロンソンを尋ねる。しかし、ブロンソンは忙しなく動き回っており、シオンはたらい回しにされた挙句、ブロンソンには会えず仕舞いであった。


 その代わりと言っては何だが、カベンディッシュ子爵のもとへ向かうよう指示される。その指示におとなしく従うシオン。


 カベンディッシュ子爵はというと、王城の一室で地図を広げ家臣と話し込んでいた。シオンはそこに割って入る。


 最初は怪訝な顔をしていたカベンディッシュ子爵だが、シオンが差し出した一通の手紙を読むと彼を快く受け入れた。


「成程。貴公が噂の准男爵か」

「まさか噂になっているとは。モテる男はつらいですね」


 カベンディッシュ子爵が皮肉を言ってきたのでシオンはそれを軽やかに躱す。お互いに牽制し合いながらそのまま本題へと雪崩れ込んだ。


「貴公はホランド将軍が率いる軍の一翼として私の配下として行動してもらう。聞いていると思うが二百の兵を指揮してもらうぞ」

「それは理解している。その二百を紹介してくれ」


 シオンはため口で返答する。カベンディッシュ子爵はそれを意に介することなく話を進めていく。それ程切羽詰まっているのだ。


「もちろんだ。出発は明日の昼にしてある。それまでに関係を築いておけ。足手纏いになるようなら容赦なく切り捨てるぞ」


 それだけを口にすると、シオンに去るよう手で合図する。そして家臣の一人に首で合図した。どうやらシオンはここでも歓迎されていないようである。


 良い顔をしていない家臣の後に続くシオン。彼の胸中を「またか」という三文字が占めていた。どこに行っても貴族の鼻摘み者である。今はそんなことをしている場合ではないだろうに。


 ただ、その要因はシオンにもあるのだ。郷に入れば郷に従う。貴族になるのであれば貴族の慣習やマナーを習い、守る必要があるのである。


 さらに驚いたのは用意された二百名を見てからだ。その誰も彼もが少年少女だったのだ。若いのは小学校高学年から年齢が高くても高校一年生程度である。完全に嵌められた。シオンはそう思う。


 いや、デュポワは骨を折ってくれたのだろう。最初はこの半分しか与えられなかったはずだ。何度も言うが、数は力だ。戦いは数なのだ。


 シオンは溜息を吐き、頭を乱暴にぐわしぐわしと掻きながらも気持ちを一新させる。そして彼らにこう声をかけた。少年少女たちの瞳がシオンを捉える。


 シオンはココに小声で命じた。インのもとに戻り、オレの置かれた状況を具に報告し、それを踏まえた対策を練ってもらおうというのだ。つまり、シオンは屋敷に戻らないことを意味していた。


 ココが頷き、駆け出す。それを見送ったシオンは少年少女たちに向き直ってこう述べた。


「オレが今から君たちのリーダーだ。言わせて欲しい。危なくなったら逃げろ。命を粗末にするな。そして、これだけは約束する。君たちを危険な目に遭わせないと」


 嘘である。そもそも戦争に行くのだ。危険な目に遭わないわけがない。それでも彼らの信頼を得ようとシオンもシオンで必死だったのである。


 シオンは集められた二百人一人ひとりと言葉を交わした。彼らの名前や境遇を知るためである。そして、そのほとんどが孤児であった。帝国はとうとう孤児まで駆り出してきたのである。


 総力戦。いや、なりふり構っていられないようだ。国家存亡の危機である。そうなるのも理解はできる。理解はできるのだが、シオンは納得できずにいた。


 集められた孤児一人ひとりと交友を深めていく。出征の朝は、もうすぐそこだ。

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