表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/95

山賊と傭兵

「敵襲っー!」


 傭兵の一人が声を上げる。ただ、襲い掛かってきた山賊はたったの七人。このままであれば山賊はただ無残に殺されて終わりだ。数も練度も傭兵とは違い過ぎる。


 頭目は判断を迫られる。このまま攻め込むべきか。それとも見捨てるべきか。もし、見捨てた場合、山賊たちからの信頼に翳りが生じてしまう。仲間は見捨てられない。


 かと言って勝てるかと言われたら怪しい部分がある。それが頭目の判断を鈍らせていた。しかし、早く攻め込まなければ仲間が殺されて終わりである。


「頭目! 行きましょう!」


 周囲の山賊が頭目を急かす。こうなってしまっては攻め込むしかない。幸い、腕の立つ傭兵は頭目の目から見てリーダー格の女性一人だ。彼女を無力化すれば勝機はある。そう考えていた。


「行くぞ、野郎ども! お貴族様から根こそぎ奪い取ってやれ!」

「「「応っ!!」」」


 勢い良く飛び出す山賊たち。既に飛び出していた七人のうち、四人は傭兵たちに殺されていた。インとエメは幌馬車の中で震えている。


 山賊二十人と傭兵十人の乱戦となった。数的優位なのは山賊だが地力に勝るのは傭兵だ。そして両軍のエースである山賊の頭目とコラリーがぶつかる。これではコラリーも指示を出すことが出来ない。


 コラリーを手早く処理して幌馬車を奪うのが頭目の狙いだ。しかし、ここに誤算が一つだけあった。そう。シオンの存在である。


 頭目はシオンを腰に下げている宝剣から貴族だと判断し、軽視していた。しかし、この中で一番強いのは間違いなくシオンである。彼は太刀ではなく剣で山賊をたった一刀のもとに処断していた。


 一対一でシオンに敵う者はここにはいない。一人、また一人と山賊が減っていく。山賊の頭目の企みは、奇しくもシオンたちに有利に働くのであった。その事実に焦る頭目。


「どこ見てんだい? 余所見を許すほどアタシは甘くないよ?」


 心を乱された頭目。思わず視線を切ったその時、コラリーの剣が頭目の腹に深く突き刺さった。致命傷である。これを放置すれば死は免れない。


 シオンが雑魚を片付け、コラリーが頭目を仕留める。ただ、戦いの余波で幌馬車の幌がズタボロになってしまった。傭兵たちは手を抜かない。最後の一人の山賊まできちんと首と胴を物理的に隔離していた。


 太陽が顔を出し、辺りを照らし始める。地面を確認すると、山賊の血で赤く染まっていた。シオンはインとエメに終わったこと。それから外に出るなと注意した。


「それから良くやったな。ココ」

「へへ」


 照れるココ。彼女はシオンに言われた通りの任務を綺麗にこなした。途中、危ない目にも遭ったが結果だけを見れば上出来だろう。


「ココ、アジトの場所はわかるか?」

「もちろん!」


 後始末をコラリーに任せ、シオンはココに山賊のアジトまでの案内を頼む。理由はもちろん、山賊が貯め込んでいるお宝を拝借しようというのだ。


 しかし、彼が望んでいるようなお宝など、この場にはない。


 食い詰めの山賊がどれだけの宝を残しているというのだろうか。せいぜい、大銀貨と銀貨が十数枚ある程度だ。それで良しとするシオン。


 戻るとコラリーたちが山賊の身ぐるみを剝いでいた。これではどちらが山賊かわからない。ただ、武器も金属である。売れば多少の金にはなるだろう。


「全く、散々な目に遭ったわ」

「同感だ。それよりコラリー、これを見てくれ。どう思う?」


 シオンは幌馬車を指差す。ボロボロに傷つけられた幌馬車がそこにはあった。この状況で雨でも降ったら、中の荷まで大惨事になることは確定だ。


 そして、その責任はコラリーにあるとシオンは言いたいのだ。


「いやいやいや! それは違うでしょ!」

「違わないだろ。ああ、だから平地で行こうって言ったのに」


 あからさまに落胆するシオン。コラリーも事前に同意してしまっている以上、反論は出来ない。そしてシオンはこうなることが目に見えていた。見えていて、あえて止めなかったのだ。


 幌馬車の弁償は確定。このままだと中の荷まで弁償しなくてはならなくなる。この道を選んだのは楽したいと思ったコラリー自身なのだ。


 そしてシオンはコラリーにお灸を据えて欲しいとベルグリンデが望んでいたと推測していた。実力はあるがリーダー、隊長としての振る舞いが芳しくないと思っていたのだろう。


「わかったわよ! 何とかすれば良いんでしょ! 何とかすれば!」


 そう言って服を脱ぎだしたコラリー。そしてその着ていた服で穴の開いた箇所を覆って防ごうというのだ。しかし、布面積が全く持って足りない。


「ちょ、バカ、おま、何やってんだよ! やめろっての!」


 シオンがコラリーを制止する。まず、自分の服を脱いで繕う前に山賊から奪った衣服で繕うのが先ではないのだろうか。


「なによ! どうせ難癖付けて請求する気でしょ!」

「そんなことはしないって! な、これが良い教訓になっただろ。幌馬車の幌の費用だけで良いから。な?」


 コラリーを宥めるシオン。どうして年下のシオンが年上のコラリーを宥めなければならないのだろうか。自暴自棄になるコラリーをみてシオンはげっそりする。


 全員でとりあえず幌の補修をする。それで半日が過ぎてしまった。やる気の下がったコラリーを連れてバレラードに向けて歩を進める。あとは山を下るだけだ。


 そうして七日目、八日目を過ぎ九日目になんとかバレラードの地を踏むことが出来たのであった。

励みになりますので、評価とブックマークをしていただければ嬉しいです。

評価は下の☆マークからできます。是非ともお試しください。


感想やレビューも励みになります。

良し悪しだけでも伝えていただけますとモチベーションに繋がります。


今後とも応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=631678712&size=300

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ