シオンとコラリー
【東暦 一〇〇五年 四の月 一の日】
帝都を出発し、一路北に進路を取るシオン一行。一日に歩く距離は三十キロだ。東京駅から横浜駅までの距離を毎日歩いていると思ってもらえば想像が付くだろう。
そして三百キロ離れたバレラード地方を目指すのである。言わば歩いて東京から仙台に向かっているのだ。たったの十日でである。
これがインやエメのような歩き慣れていない、身体を動かし慣れていない者であれば地獄でしかないだろうが、彼女たちは荷馬車に放り込まれている。歩いているのは傭兵たちだ。
シオンはココも歩かせていた。なにも彼女を虐めているわけではない。斥候としての技術を身に付けさせるためである。コラリーにその基礎を叩き込ませていたのである。
斥候が持って来る情報が一番大事と言っても過言ではない。先手を取れるか取れないか、部下が生きるか死ぬかは斥候にかかっているのである。
相手の位置が判明していれば作戦を練りやすい。情報は大事な武器なのだ。
それから二日、三日と過ぎていく。この辺りは比較的治安も良い。帝都に近い領地は上級貴族が治めている。彼らが賊を見過ごすわけがない。沽券に関わるのだ。
辺境に行けば行くほど賊が出ると思っても良いだろう。そしてシオンが向かうのは最北の地である。七日目以降が正念場だとシオンは考えていた。
ほかにも領地の近くに賊のアジトがあるかもしれない。それもどうにかしなければならないのだ。ここでベルグリンデの言葉が思い出される。彼女は『上手く扱え』と言っていた。
そう。上手く扱えれば良いのである。ただ、どう誘導すれば周囲の賊をコラリーたちに潰してもらえるのかがシオンには思いつかなかった。
そんなことを考えているうちに四日目、五日目を過ぎていつの間にか残す距離も半分となっていた。この辺りから道中の安全が徐々に怪しくなってきていた。
季節は初春。まだ日は短い。夜に奇襲を受けたら一堪りも無い。ルート選びが大事になってくる。奇襲を受けないよう、森や山、谷などの周囲を見渡せない地形を通らない道を選ばなくてはならない。
シオンとコラリーの二人が地図を見ながらルートを決める。地図はもちろんデュポワから拝借した(書き写させてもらった)ものである。地図のような高価なものをシオンが持っているわけがない。
「遠回りになるが山を迂回してバレラードに入った方が良くないか?」
「それだとアタシたちが残業する羽目になるじゃないか。山を越えてさっさと終わらせようよ」
「山だと戦闘になる可能性があるぞ。その方が残業よりダルくないか?」
シオンとしては賊を倒したい。倒したいのだが、荷を安全に運びたい気持ちもある。今回は荷を安全に運ぶ方を優先したようだ。しかし、その提案をコラリーが一蹴する。
「可能性じゃん。出ると確信しているならまだしも、出ない可能性もあるんだから山を突っ切った方が良いって!」
「わかった。それで構わないが、もし荷駄に何かあった場合はわかってるな?」
頷くコラリー。もし、これで被害が出た場合、コラリーが責任をもって補填しなければならないのだ。
なので、普通の傭兵ならば保険を掛ける。保険をかけて安全な道を提案する。そして雇い主が無茶を言う場合、補填の対象外になる旨を伝えるのだ。
これがベルグリンデと話していた傭兵の基本的な契約である。なので、基本的には護衛の任務であれば雇い主に従っておいた方が得なのだ。そして、雇い主が選んだルートが危険だった場合、彼らを見捨てて逃げ去るのだ。
しかし、今回はまったくの真逆である。傭兵であるコラリーが早く終わらせたいがために、無茶なルートを突き進もうというのだ。なんともおかしな話である。
「はぁ。そこまで自信があるなら最短距離で行くか」
「ん」
シオンは進路を最短距離の山道を通ることに同意した。実際問題、迂回した場合は距離が長くなるのだが高低差がない分、到着時間は山道とそう変わらないのである。二人にはそれを導くための知識、知恵がなかった。
標高千メートルに届かない山を超える。兵庫の六甲山を超えると思って貰って構わない。しかも、現代のように舗装されていないのだ。
シオンとコラリーは馬車がなんとか通れるほどの獣道を突き進むのであった。
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