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トルーマン商会爆買いツアー

 シオンは准男爵に叙爵されたときに授かった指輪を嵌め、宝剣を腰から下げる。この剣を下げる意味は二つある。一つ目は自身が貴族であることを証明するため。そしてもう一つが護衛用である。


 護身用であれば、普通の剣を持ち歩けば良いと思うかもしれない。だが、この貴族の証である宝剣であれば、公的な場所でもある程度は持ち込めるのだ。


 普通、貴族の屋敷や商会の個室に通される場合、帯剣していたら預けなければならない。帝国の常識である。しかし、この宝剣であれば預けずに済むのだ。何故なら貴族の証として皇帝陛下から賜った剣だからである。


 シオンの右側にイン。そして左側にエメが並んでトルーマン商会へと向かう。なんというか、お使いという言葉がしっくりくる風景だ。


 トルーマン商会は帝国の大手商会らしく、帝都のもっとも人通りの多い大通りの一角を占めていた。建物も四階建てはある。この時代にしては非常に大きな建物である。


「すみません。誰か居ませんか?」

「はいはい、おや、旦那。両手に花ですね。プレゼントか何かをお探しですか?」


 丁稚と思わしき少年が軽快な語り口調でシオンに語りかけてくる。少年の口は止まることを知らない。シオンに花やら髪飾りやらを売り込んでいた。小さくても商人であることを嫌でも理解させられる。


「あー、いや、違うんだ。ベネットさんは居るかい?」

「はぁ。えーと、何方からの紹介で?」

「デュポワ大公閣下からの紹介だが」

「大公閣下の?」


 疑わしい目を向けてくる少年。紹介状を貰ってくるんだった。そう後悔するシオン。何とか話を丸く収めることは出来ないか。そう考えたシオンはこう切り出した。


「まだ名乗っていなかったな。オレはシオン=バレラード准男爵だ。准男爵が来たとベネットさんに伝えてくれるか?」

「し、失礼しました! 少々お待ちを!」


 シオンはこれみよがしに指輪と宝剣を見せた。少年も察したようだ。首が取れそうになる勢いで頭を下げ、青白い顔をしながら、すぐさま裏へと走り込んでいってしまった。


 少年が戻ってくるまで一階を見て回るシオンたち。どうやら一階は大衆向けの商品を取り扱っているようだ。どれもこれも銀貨を出せば買える品ばかりだ。高価な品は二階以上にあるのだろう。


 そんな風に辺りを見回っていると、先程の少年が落ち着いた紳士を伴って奥から現れた。その人物こそがベネットその人である。


「お待たせいたしました。私めがベネットでございます。閣下のお噂は伺っておりますよ」

「シオン=バレラード准男爵だ。忙しいだろうに、突然の訪問を済まないと思う。その噂というのは良い噂かな?」


 シオンがそう尋ねるとベネットは笑顔を浮かべるばかりであった。つまり、良くない噂ということである。それはシオンも自覚していた。というよりも、良い噂が立つ要素がない。


 大公の孫娘を助けた英雄なんて祀り上げられるわけがない。どちらかというと卑しくも無理やり貴族に捻じ込んだ下賤の者、という噂が尾びれ背びれ腹びれまで付いて吹聴されているに違いないのだ。


「ここではなんですし、奥でお話を伺いましょう。こちらへ」


 ベネットはベネットでデュポワから事前に知らせを受けていた。子飼いの貴族が買い物に向かうので懇意にして欲しいと。ベネットとしても新しい貴族と繋がりを持てるのは悪いことではない。


 シオンたちを案内するベネット。二階を通過し、三階のある一室に通された。予想通り、二階には貴金属や魔石など高価な品々が並んでいた。


 三階は商談のための小部屋が数多く用意されている階である。富豪や貴族に対する配慮だ。商会らしく、内装の細部にまでこだわってある。


「お待たせいたしました。では、改めて。私が当商会の会頭補佐代理のベネットにございます」


 偉いのだか偉くないのだかわからない名乗りをあげるベネット。実際は会頭は六十を超え既に半ば引退の身。なので、実際は会頭補佐がトップとなっている。その代理なのだから偉くないわけがない。


「シオン=バレラード准男爵だ。よろしく頼む」


 簡単な挨拶を済ませ、すぐに商談へと移る。シオンは無駄な世間話を嫌う質だ。そして、ベネットはそれを見抜いていた。合理的、要領が良いといえば聞こえは良いが、世間話のウィットも余裕もないと言われればそれまでだ。


「今日は何をお求めでしょうか?」


 そう尋ねるベネットに答えたのはエメであった。彼女が自分の欲しいものをだらだらを羅列をする。ベネットはそんな彼女を一度制止して、机に置いてあるベルを鳴らした。すると、丁稚が一人、部屋の中に入ってきた。


「もう一度お願いできますかな?」

「わかった。鋤に鍬に紐に縄、鉈に鋸にシャベル。臼にピッチフォーク、ガーデンナイフに籾袋。それから――」


 エメの欲は留まるところを知らない。丁稚はそれを一つも漏らさず記録していた。そしてエメの要件が終わると今度はインの番である。机だの椅子だの書棚だの欲しいものを羅列していた。


 丁稚とイン、エメの二人が何度も言葉を交わす。欲しいものの擦り合わせを行っているようだ。これは相当額になりそうだとシオンは頭を悩ませる。ここの支払いをどうするか、シオンは良いことを思いつきニヤリと笑うのであった。

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