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チート覚醒したおっさん、【絶対命令】の権能で全てを服従させる超越者となる。  作者: 六志麻あさ @『死亡ルート確定の悪役貴族2』発売中!


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24 【上位存在】の力でディオーネをさらに成り上がらせる

 軍部を掌握したディオーネが次に着手したのは、経済の改革だった。


 しかし、そこにも抵抗勢力が待ち構えていた


 王都の商業を一手に牛耳る『商人ギルド』である。


 その日、俺はディオーネとともに商人ギルド長と面会していた。


「例の減税の話ですが、我々ギルドとしては到底受け入れられませんな。だいたい我々に一言の相談もなしにこのようなことを決められては困ります。ギルド上層部一同、非常に困惑しているところです」


 ギルド長は開口一番、そうまくしたてた。


「相談なら今までに何度となくしただろう。そのたびにお前たちの態度は頑なだった」


 と、ディオーネ。


「聞く耳を持たなかったではないか。民の生活の困窮を救うためには、迅速な行動が不可欠だ。こうしている間にも飢えている者が次々と出ている」

「恐れながらディオーネ殿下は大変勇猛で、軍功も挙げてらっしゃいますが、商業に関しては素人のはず」


 ギルド長が言った。


「市場というものは、我々商人が管理してこそ円滑に回り、そして健全な成長を遂げていくのです。その流れを見極めず、王族が思い付きで減税などを口にされては、すべてがぶち壊しになるというもの……」


 そこまで言って、ギルド長はせせら笑った。


『素人は黙っていろ』と言わんばかりの態度だ。


 だが、俺はディオーネから聞いて知っている。


 この男がギルドの上納金を懐に入れて、私腹を肥やしていることを。


 市場の流れを、一部の富裕層に有利なふうに操作し、その陰で生まれる大半の中小規模の商人たちの苦境などどこ吹く風だということも。


 この男が考えているのは市場の健全化などではなく、自分と周囲の一部の者たちだけの利益だ。


 彼の汚職の証拠をつかむたび、商人ギルドの横やりが入り、幾度となく証拠を隠滅されてきた……とディオーネは悔しげに語っていた。


 ならば……その証拠をこいつ自身の手で提出させよう。


「ギルド長、一つよろしいですか。私から提言があります」


 俺はギルド長をまっすぐに見つめた。


「なんだ、従者ごときが?」


 ぎろりとにらんでくるギルド長。


「お前は今日限りで私腹を肥やすことをやめ、市場の健全化のために職責を果たせ」

「っ……!」


 俺がそう言葉を発すると、彼はびくんと全身を痙攣させた。


「な、何を――」

「そしてディオーネ殿下の政策に全面的に協力するんだ。お前は汚職の限りを尽くしているが、その権力は有用だ。健全な市場を形成し、好景気を生み出し、その利益が民に正常に還元される――その状態になるまで尽力しろ」


 俺はギルド長に言い含めた。


 さっき『提言』と言ったが、もちろんこれは『命令』だ。


【上位存在】としての絶対命令――。


「そのすべてが一段落した時点で、お前は今まで不正に蓄えた財産をすべて国庫に返納しろ。そうすれば、ディオーネ殿下が民に還元されるだろう」


「な、何を……俺が、そんなことを……」


 言いながら、ギルド長の顔中に脂汗が浮かぶ。


「命令だ」


 俺は最後に一言、そう告げた。


「し、承知いたしました……私は、今まで多くの不正をして私腹を肥やしてきました……その償いとして、ディオーネ殿下に全面協力いたします……!」


 言いながら、ギルド長はディオーネの足元に平伏す。


「いいだろう。お前がやって来たことは下衆そものだが、しかしお前自身は非常に有能だ。この国の財政を立て直すために、存分に使ってやる」


 ディオーネが傲然と彼を見下ろした。


「今後は私のために……そしてこの国のために尽くせ。私心を一切捨てて、な。分かったか?」

「は、ははあっ!」


 ギルド長は額を床に擦りつけ、ディオーネに忠誠を誓ったのだった。




 こうして、軍部と財界という国の両輪を掌握したディオーネは、急速に確固たる地盤を築いていった。


 もともとディオーネは民からの人気が絶大だったうえに、最大の政敵である第一王子は側近と頼んでいたバルデスの失脚に伴い、その権威が失墜した。


 もはや彼女の台頭を阻む者はいない。


 たった一か月足らずで、王女ディオーネはメルディア王国における最大の実力者の座に駆け上がっていた。


「ザック、本当にご苦労だったな。お前の力がなければ、こうも早く事態は収まらなかっただろう」


 執務室で二人きりになった時、ディオーネが俺を労ってくれた。


「殿下のお役に立てて何よりです」

「だが……いいのか? 私はお前を政争の道具として使っている。本当は、こんなことをしたくないのではないか?」


 彼女のまっすぐな視線が俺を射抜く。


 俺の心のすべてを見抜くような、底知れない瞳だった。


「……私自身、この力が何なのか、どう使うべきなのか、迷うところはあります。ですが今は、あなたの野心と使命感がこの国を良い方向に導くと信じています」

「なら、その信頼を裏切らないようにせねばならんな」


 ディオーネが微笑む。


「もし、信頼を損なったときは……お前のその恐るべき力が私自身に向くだろうからな」


 それもお見通し、か。


 ともあれ、俺はディオーネのもとで力を振るっていく。


 今は、それでいい。


 彼女の野心の行く末――それを見届けてみたいと思うから。


 その先に何が待っているのか、俺がその先で何を為していくのか。


 今はまだ、俺自身にもはっきりとは見えない――。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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