31:バレー部エースと幼馴染と約束と
ご覧頂き、ありがとうございます♪
前回の後書きで妹登場予定だと言ったな。あれは嘘だ。
ごめんなさい話が思ったより長くなってしまい、前後編の構成にしたらちょうど切れてしまいました…すみません。
今回もどうぞご覧ください。
「次はこれだ。初めて作ったんだけど、どうだ?」
ミニピザの次に英太が出したのは、鶏肉をスパイシーに味付けしたタンドリーチキン。
鶏のもも肉を適当な大きさに切り、漬けダレを揉み込んで一晩寝かせた物だ。
漬けダレは、ケチャップ、醤油、塩、みりん。生姜、ニンニクを少々、そしてカレー粉。そして決めては加糖されていないヨーグルト。
それらをジッパー付きの袋に入れてよく揉み込み、一晩寝かせる。
寝かせる時間はそれぞれで、そこまで長い時間でなくても良いらしい。
それを炭火でじっくりと焼き上げる。
最後に塩胡椒をサッと振りかければ完成だ。
「わぁ、すごく美味しそうだよぉ」
六花が嬉しそうに小さな手のひらを合わせた。
英太が初挑戦した料理を食べられるのだ、なんだか特別さを感じたようである。
一口大より少し大きめのもも肉は、焼き立てで旨味が凝縮されているであろう肉汁がふつふつと音を立てている。
カレー粉の色が活きているのだろうか、ややオレンジ色に着色されており、エキゾチックなスパイスの香りが食欲をそそる。
「どれ、俺も試食してみるか……」
「私も食べてみよぉっと」
英太、六花に続き凛子も自身の箸を手に取り一口頬張る。
程よい弾力のもも肉を一度、二度と噛み締めると想像通りに凝縮された肉汁が口の中に広がる。
そのジューシーとも言える肉汁には鳥の旨味、それに英太が作成した漬けダレに配合されたさまざまな調味料が絶妙なバランスで合わさり、カレーのスパイスの香りが口いっぱいに広がっていく。
そしてほんの少しの酸味。
これはヨーグルトによる物なのだろうか。
ヨーグルトには肉を柔らかくする作用があるらしいが、確かに効果はあるようで肉は非常に柔らかい。
英太自身も納得したようにうんうんと頷きながら食べている。
そんな英太の様子を見ていた六花は笑みをこぼしていた。
「ふふっ、満足出来たみたいだね英太クン」
「そうだな、にんにくと生姜を強めにすれば花月で出せるかも知れない」
「花月って、下の居酒屋? もしかして英太ってそこで料理とかしてるわけ?」
「ん、ああ、そうだぞ。言ってなかったか?」
先程、バイト中がどうとか話していた気がするが、料理までしているとは思わなかった。
しかし、それならば英太の料理の腕前も納得だ。
「どうだったかな、多分、聞いてないかも」
「そうか。定休日以外の夜はだいたい毎日、居酒屋で働いてるんだ」
「そうなんだ。だからこの料理の腕前なわけね」
ふとそこで疑問が生じる。
「けど、なんで料理を?」
両親が居酒屋兼レストランを経営しているということもあるだろうが、それでも料理に興味を持ったのは英太本人である。
凛子自身が料理に全く無頓着で不器用、自分には向いていないんだと思っているので、英太が料理に興味を持った経緯が何となく気になった様子であった。
凛子にそう聞かれた英太は照れ臭そうに頭を掻き、視線を外しながらポソリと呟いた。
「うーん……昔、約束をしたんだ。頑張って料理を上手くなるって。それがきっかけで料理が好きになったんだ」
遠い日の約束。
相手がどんな女の子だったのか覚えていないが、確実にした約束。
その事を他人に話したのは初めての事であった。
大事に大事にしていたから、誰にも話さなかったというわけじゃない。
単純に誰かに話すのが照れ臭かったから。
しかし今日はそれが口から出た。
多分、明け方に見た幸せな夢。
遠い日の記憶から来る夢を見たせいで心が素直になっていたのかも知れない。
珍しくそんな事が口から出た。
「……!」
英太のふとした呟きに、六花の目が大きく見開かれて英太を見つめる。
覚えていてくれた?
覚えていてくれた……!
私だけじゃなかった。英太クンも覚えていた!
あの日の約束を覚えていてくれていた!
それが分かっただけで胸の奥が熱くなり、目の奥も熱くなった。
「ははっ。って言っても、かなり前の事だから相手は忘れているかも知れない。実は俺も相手のことが思い出せないんだ。薄情だけど」
「……そんな事、ないよ。昔の事だもん」
「ははっ、そうか?」
約束の事を覚えていてくれただけで、もう十分。
約束した相手が言うんだから間違いないよ。
涙のせいでジワっと視界が歪むが青空を見上げて涙を堪える。
泣いたらダメだと思った。
こんな所で急に泣いたらダメだ。
そう自分に言い聞かせて、空を見上げて涙を乾かそうとする。
同じ記憶を共有しているかもしれない、そう思うだけで胸が熱くなった。
そして、その一言は凛子の心すらも揺さぶった。
……心当たりがある。
子供の頃に交わしたはずの約束。
その時の相手の男の子が確実に言った言葉。
『ぼく、もっとりょうり、じょうずになるよ!』
確かに交わした約束。
あれは確か母方の親戚の家に遊びに来ていた時の事……つまりは青葉市で交わされた約束。
もしかして……いや、まさか。
けれど、もしそうだとしたら?
気づけば凛子は口を開いていた。
「……約束? 一体どんな――」
ご覧頂き、ありがとうございました。
今回は当作品の主人公的存在の英太くんの人物紹介です。
【碧 英太】
身長180cm 73kg
凛子に片思いする高校一年生。
実家は居酒屋。(昼間は食事処)
料理が趣味で得意。日頃から研究熱心。
勉強はそこそこ。どちらかと言うと運動の方が得意。実は俊足。
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先日、とうとう総合評価3000ptを突破いたしました。
これもひとえに読者様あってのことでございます。
本当にありがとうございます。
これからも読者様に楽しんでいただけるような作品づくりをしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願い致します。
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