3: 幼馴染に告白の結果を心配される②
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告白の結果を心配してきた幼なじみの六花。
しかし授業が始まってしまい、中途半端な所で話を切り上げられてしまいます。
話の続きが気になってしまった六花が取った行動とは……。
授業開始からしばらく。
昼食直後の授業という事もあり、ややダラけた雰囲気が漂う中、数学教師の山里は淡々と授業を進めていく。
山里本人もまた昼食直後なのだ。教師といえども人間。
このふわっとした雰囲気に飲まれてしまい、眠気を押し殺しながら何とか授業を進める。
そんな山里の言葉を話半分に聞き流す英太の脳みその大半は、凛子と約束した明日の昼食を考えることに使われていた。
ブルッ
頭の中で弁当の構成を練っていたその時、消音モードにしてあった英太のスマホが何かしらの通知を告げた。
山里の視線に気をつけつつ内ポケットからスマホを素早く引き抜き、机の影に隠し確認する。
無料通信アプリの『LAIN』に新着メッセージ有りの表示。
相手は六花だった。
六花の席は教室の中心当たり。英太からは左後ろの方向になる。
チラリと六花を見ると自分の机を指先し、スマホを見ろという旨のジェスチャーを送っていた。
その様子に眉をしかめるが、再び英太はスマホを操作しアプリを開いた。
『で? お弁当作るってどういう事?』
六花からのメッセージはそれだけだった。
それに素早くスワイプして返信する。
『で、じゃねぇよ』
『詳しく』
『LAINじゃめんどい』
そう返すと英太はスマホを内ポケットにしまった。
高校入学と同時に買ってもらったスマホはまだ手に馴染んでいない。
学校に持ってくるのは許されているが、授業中に操作して良いはずがない。
英太の席は端とはいえ最前列。ただでさえ見つかりやすいのに、英太は身長が高いので余計に目立つ。
下手に見つかって没収なんてされたら堪らない。
ブルッ
再び通知。
今度はスマホを取り出さず六花を睨む。
送信者は英太の睨んだ通り六花らしく、再びさっきのジェスチャーを送っている。
山里に目をやりながらも『LAINを見ろ』と口パクしている。
ブブッ
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ
無視だ無視。
どうせスタンプを連発してるんだろう。
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ
連続してメッセージを送っているのか。
スマホが脱水中の洗濯機みたいにブルっている。
あまりにしつこいので、英太は六花を睨みつけてからスマホを取り出した。
今じゃなくても良いだろう、どうせ今日も一緒に帰るんだし!
そう思いながらアプリを確認する。
六花から送られて来ていたのはスタンプではなく画像だった。
見覚えのある机の上に置かれている文庫本を写した写真……。
見覚えのある机。
それは英太の部屋にある愛用の学習机だった。つまりこの写真は英太の部屋で撮られたものという事になる。
英太と六花は幼なじみで、家も同じ区画にある。
両親も仲がいいので15歳になった今でも気兼ねなくお互いの家を行き来する仲。
だから英太の部屋で本人の知らないうちに写真を撮ったとして何もおかしい事はない。……常識的にはアウトだが。
まぁ、それはいい。それはいいのだが。
その文庫本がまずい。
ピンクと〝肌色〟が基調とした表紙。
時代錯誤のミニスカートのナース服に身を包んだ女性二人が艶かしく抱き合い、何か物欲しげに視線を向けている文庫本。
総頁400の英太秘蔵の禁書目録。
「ほわぁ!!?」
ガタッ!
奇声を発するのと同時に思わず立ち上がってしまう。
昼下がりのフワっとした雰囲気が漂う教室にいた全員が肩を震わし、一気に英太に視線が集まる。
「ど、どうした碧!?」
それは数学教師の山里も例外ではなく、驚いた拍子に白チョークをへし折ってしまった。
特徴的な赤縁のメガネもずれており、非常に間抜けに見えてしまった。
「あ、いや、何でもありません……」
「居眠りして夢でも見てたのか? 気持ちは分かるけど我慢してくれ」
「あ、は、はぁ……」
教室のあちこちからクスクスと押し殺したような笑い声が上がる中、英太は曖昧な返事をして席に着く。
もちろん六花を睨もうと視線を送る。
英太に禁書目録を送りつけた張本人といえば、机に突っ伏して肩を震わせていた。
耳の先まで真っ赤になって笑いを耐えている。
あいつ! 絶対許さねぇ!!
クラスの晒し者にした事、それと大切に隠しておいた禁書目録を探し出した事を!
英太はイタズラっ子の幼なじみにそんな呪いじみた視線を送りながら席に着いた。
彼もまた最上級に赤面していた事は言うまでも無い。
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