27:バレー部エースの私服
ご覧頂き、ありがとうございます♪
英太、凛子を迎えに行きます。
凛子と六花の初対面回になる予定でしたが、前フリが長くなってしまいましたので、次回に持ち越しさせて下さい。
凛子との待ち合わせ場所に選んだコンビニへの足取りが自然に早足になってしまっていた。
時間にはまだ余裕はあるのだが、英太は早る気持ちを抑えられない。
むしろその高揚感にも似た気持ちすら楽しんでいる。
足取りが軽い。
なんと言っても休日に凛子と会えるのだ。
もしかしたら私服を着てくるかもしれない。いや、かもしれなくない。絶対着てくる! そう信じている、念じてすらいる。
180cmという長身の彼女。
長い手足、引き締まったウエスト。そしてヒップへ続いていく曲線。白い肌、美しい髪。目鼻立ちの整った顔も驚くほど小さい。
パリコレとかに出演しているスーパーモデルもかくやというスタイルの持ち主。
十人が十人とも美人というだろう。凛子はそんな容姿をしている。
きっと何を着ても似合うんだろうな……。
普段の凛子のキャラクターから考えるとボーイッシュなコーディネートだろうか。
いや、あのスタイルの良さだ。
私服は思い切り大人に振り切っているかも知れない。
ギャルっぽいファッションも似合うだろう。
……逆に女の子らしい可愛い系!?
やばい。鼻の下伸ばさない様に注意しないと。
英太の頭の中で凛子の私服に妄想がどんどんと大きくなって、これ以上ないほどハードルが上がっていた。
凛子がもしそれを知ったら勘弁してもらいたいだろうが、恋する男子高生の妄想力は常軌を逸している。
もはや出会う前から凛子の私服に想いを巡らせ、半ば満足してしまっている英太であったが。
実際に凛子に会ってみれば、そんな無粋な妄想は吹っ飛び、ただただ目の前の美少女に釘付けになってしまった。
コンビニの前の歩道に私服姿の凛子を見つけた。
それと同時に凛子も英太に気づいた様で、長い手を大きく挙げて笑った。
「……あっ。おーい、おはよぉー」
それに合わせて通行人の数人が英太を見る。
こんな美人と待ち合わせなんてどんな男だ、とでも言った視線である。
しかし凛子はそんな周囲の視線には慣れてしまっているのか、気に留める様子もなく手を振り、英太に歩み寄ってくる。
今日のファッションはベージュ色のカットソーとハイウエストのスキニージーンズ。
それに黒のエナメルのヒールを合わせた大人びたコーディネートだった。
凛子のスレンダーな体系が強調されるピッタリとした服装であり、細く引き締まったウエストからヒップへのライン……非常に女性らしい曲線に目を奪われる。
カットソーの裾とハイウエストジーンズの間に白雪の様に透き通った、引き締まった凛子の腹部が……見えるか見えないかの微妙なラインでチラついている。
スキニージーンズにねじ込まれた凛子の長い脚は英太の腕ほどの太さしかないのでは、と思えるほど細い。
しかし確実に肉付きは良く、ジーンズ越しにもそのハリの良さが伺い知れた。
そこに合わせた大人びた印象のブラックのハイヒール。素足で履いているので、透明感のある肌の色とエナメルの黒色とのコントラストがなんとも官能的である。
いつもの7:3に分けられた黄金色の前髪の間から覗く整った顔にも薄っすらとメイクが施されているようだ。
いつもの薄いリップではなく、少しグロスが入った物を使っているのか、ぷるんと潤ったその柔らかそうな唇はまるで英太を誘惑しているかの様な魅力を感じざるを得ない。
ほんのり塗られたチーク。
長いまつ毛をより強調したマスカラ。
それらが凛子の日本人離れした美しさとマッチして……マッチし過ぎて、この平凡な街並みに溶け込めていない。
まるで凛子が立っている空間だけがドラマか映画のセットの中になってしまったかの様な……。
そんな異次元じみた美しさだった。
少なくとも英太にはそう感じられた。
「……」
「……おーい? 英太?」
その常軌を逸した美しさに、本当に絶句している英太。
凛子が目の前にやってきてベタに目の前で手を振ってみるが、それに反応出来ていない。
口と目を開けてただ目の前の凛子を見る……いや、見惚れているという方が正しいか。
例えるならば、凛子はスクリーンの中の女優。
自分はそれを観ている観客。
それほどまでに凛子の美しさは別次元的なものであった。
「おい、英太郎!」
「……はぅ!?」
業を煮やした凛子が英太の鼻っぱしらをぎゅむっと摘むとようやくこちらの世界に戻って来た。
「お、おお、小清水……迎えに来たぞ。そして太郎じゃないから」
鼻を押さえて涙目になっているが、いつもの英太に戻った様である。
そんな彼を見て凛子は眉根を寄せてため息を吐く。
「どこ行ってたのよ」
「え、いや、俺んちから来たんだけど」
「違うわよ。そうじゃなくて今意識飛んで、完全にここに居なかったでしょ。パイルダーオンする前のマ◯ンガーZみたいになってたわよ」
「例えに光子力を感じる!?」
「それともファイヤーオンする前のグレートマ◯ンガー?」
「例えが戦闘のプロ!? てかほぼ一緒だからっ!」
例えがどうもあっち寄りなのが気になったが、いつもの調子に戻った様子の英太。
そこでようやく凛子もふっと描きに戻った。
「ふふっ、いつもの調子に戻ったみたいね」
「うん。その、あのな……」
「うん?」
「小清水の私服姿はじめて見た。その、すごく、似合ってるぞ」
「そ、そう……かな。あはは、なんか照れるわね。その、ありがと……」
この洋服自体はそこらで、手に入るような安物ではあるが、彼女なりに思考し工夫したコーディネートである。
手足の長い凛子であるから、市販のものだとウエストに対して裾や袖の丈が短くなってしまう。
現に今来ているカットソーやジーンズなんかも8分丈の様になってしまう。
今日この日の為に新調した物ではないが、しかしそれでも試着を繰り返し、工夫を凝らして良く見せようと努力したのだ。
そういう背景があるからこそ純粋にそう褒められれば多少なりとも努力した甲斐があったというものだ。
しかし素直に褒められてしまったら、それはそれで気恥ずかしくなってしまう。
最後の方は彼女らしからぬゴニョゴニョ声になってしまい、おまけに赤面までしている。
……か、可愛いっ!
そんな彼女の一面を見せられてしまえば、英太とて男の子。
ニヤける口を手で押さえて顔を逸らして、内から湧き上がってくるものを耐えるしかなかった。
ご覧頂き、ありがとうございました。
少し書き溜めをしたいので、土日は更新をお休みさせていただくつもりです。
たくさん書けたら投稿するかも知れませんが、果たして!?
次回は凛子と六花の初対面です。
お楽しみに^_^
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