11:バレー部エースと弁当を食べる②
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英太と凛子の昼食回です( ´∀`)
「いっただきまーす!」
「ははっ、元気いいな」
「これでも楽しみにしてたのよ……おお!」
蓋を開けた凛子が感嘆の声を上げた。
長方形の弁当箱の中身は非常に彩り豊か。
まず目に飛び込んで来るのは〝米〟。
蓋を開けた瞬間は赤飯かと見紛うが、よく見るともち麦、玄米、黒米、古代米などをブレンドした雑穀米だった。
これらは白米に比べてタンパク質や食物繊維、ビタミン、カルシウムなどの栄養価が非常に高い。
昨晩の凛子の偏った食生活は一時的なモノではなく、どうやら慢性的なモノらしかったので、英太がそれらを考慮して弁当に取り入れたのだ。
慣れないと白米に比べて少しクセはあるが、もちろんそれを考えた献立になっている。
そしてそのおかずはというと、英太と凛子を繋ぐきっかけになった鳥の唐揚げ。今回はジューシーなモモ肉ではなく、低脂肪高タンパクのむね肉だ。
凛子は左手に箸を持ち、まずは唐揚げを口に運んだ。
「……っ! 美味しいっ」
あまりの美味さに凛子はサファイアの瞳を見開いた。
口に入れた瞬間に感じる程よいスパイスの香り。
ひと噛みするとむね肉とは思えないほど柔らかい事に気づく。
冷めてもしっかりと味が感じられるように、少し濃いめに味付けしてあるが、決して塩辛く無い絶妙な味付け。
噛み締める程に味わいを変化させるそれは、食欲を促進させる。そこに雑穀米を追加する。
唐揚げの少し濃い味付けを雑穀米が見事に相殺し、マイルドな味わいになる。
むね肉は調理の仕方によってはパサついてしまう事もあるが、そこは料理上手の英太。
下処理と加熱時間に気を使いむね肉の良さを存分に引き出している。
「ははっ、気に入ってくれて良かったよ」
弁当の美味しさに表情を綻ばせている凛子を見ていた英太もまた、表情を綻ばせ、ようやく自分の弁当に箸をつける。
当の英太はというと、自分の作った弁当の答え合わせというのか。
ひとつひとつの食材の状態を確認する様に味わっている。
うんうんと唸りながら食べていると、その様子を見ていた凛子が口端を上げて微笑んだ。
「ふふっ、まるで料理人みたいね」
「そんな大層なモノじゃないぞ。弁当は出来上がった時と食べる時の味が違うから、味付けを思い出しながら食べてるんだ」
弁当はその性質から出来上がりから時間がたった後に食べることになる。
料理を作る身としては、塩加減などを後学のために確認しておきたいのだ。
「ほほう。ではシェフ。今日のお弁当の出来栄えは如何ですか?」
「んー、出来栄えはともかく、小清水と一緒に飯が食えることが嬉しい」
「なっ……はっず!」
「良いだろ、ホントの事なんだから。ほら、他のものも食べてみてくれよ。結構頑張ったんだぞ」
「ったくもぉ……」
英太の純粋な物言いを聞いて流石に赤面した凛子は、逃げる様に弁当箱へ視線を落とす。
次に箸をつけるのは、黄色い色鮮やかな卵焼きだ。
黄身と白身がマーブル状になっており、箸で挟むとふわりと形を変えた。
「……あれ、何か入ってる?」
箸で取った卵焼きの断面を見た凛子はそう呟いた。
見るとただの卵焼きかと思ったら、中にほうれん草が巻き込んであった。
黄色と緑が色鮮やかだが、なにより栄養バランスを考えた英太の力作であった。
「野菜も摂らなきゃだからな。ほうれん草好きだろ?」
「うん、大好き。てかよく覚えてたわね」
「比喩でもなんでもなくメモしてるからな」
「比喩じゃないのね」
事実、英太は凛子の好物をメモ帳に記し、それのレシピを調べてアレンジを施したりしている。
それは単に凛子への想いだけでは無く、花月で出すかも知れない料理の参考にしているのだ。
居酒屋のメニューは定期的に見直さないと、よほどの定番メニューでない限りすぐに飽きられてしまう。
箸に取った卵焼きを口に入れる。
口の中に出汁の効いた深みのある風味が広がり、卵のふわりとした舌触り。
そしてほうれん草のシャキッとした歯応えが何とも心地よい。
そしてやや遅れてやってくる、すりゴマの風味。
なるほどこれはほうれん草を胡麻和えにしていたらしい。
ほうれん草に含まれていた麺つゆが葉から出る旨味と絡み合う。
そしてもう一品はひじきの煮付けだ。
ひめひじきを醤油とみりんで煮たものに、枝豆とコーン、そしてパプリカを和えたものだ。
これも栄養を考えて取り入れたものであるが、何より食べ応えのある品だ。
スポーツをする凛子のために、一般的な女子生徒の物と比べて少し大きめの弁当箱を用意した。
いつものように菓子パンばかりでお腹を満たしていては身が持たない。
少しでも栄養価の高いものでお腹いっぱいにしてあげたいという英太の配慮であった。
「あー、美味しかったぁ! ご馳走様でした!」
米粒一つ残さず平らげた凛子は、再びパチンと合掌した。
「喜んでもらえたか?」
「もちろん! って、でもこれだけやって貰っちゃうと悪いわ……」
「だからそれはいいって。ほら、お茶」
お礼を言ってから水筒のコップに注がれたお茶を受け取り、一口すする。
それは凛子が好きだと言った黒豆茶で、何から何まで自分のことを考えてくれているんだなと思った。
暖かい黒豆茶を飲んで一息つく。
五月の風が頬を撫で、暖かい日差しが制服をホカホカと温める。
程よい満腹感と、身体を包み込む幸福感で凛子の心はすっかり満たされてしまった。
フェンスを背もたれ代わりにし、身を預ける。
目を瞑り、多幸感に身を委ねると次にやって来るのは心地いい眠気だった。
「……はぁ、満腹ぅ」
凛子の幸せそうな呟きを聞いて英太もまた幸せそうに目を細めるのだった。
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