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96. 冬が来る前に
何もかも凍てつく冬が来る前に
唯一度でいい
あなたに逢いたい
この寒々とした白い部屋の窓から覗く
秋桜の咲く彼方へとそう叫ぶのは
叫び続けるのは
心から
心の底から望む唯一の願い
あなたに逢いたい
あなたに逢いたい
愛も恋も
真心も優しさも
言の葉をさがし続けて
互いの姿を探し続けて
長い迷路を歩き続けて
冬が来る前に
あなたの姿を求めて彷徨い続ける
優しいあなた
慈しみ深いあなた
私だけを想ってくれるあなたに
あなたに逢いたい……
冬が来る前に
何もかも虚像でしかない秋の風が吹く中
崩れ落ちてゆく砂の城を迷い踏みしめて
今日も唯一人あなたの微笑みを待つ為に




