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76. いつかまた逢う日まで
肩先の髪をとかす風が頬を優しく撫でる午後
ふと思い出すのはあなたのこと……
あなたへ別れの手紙を書いた
二年前の早春
そんな私に相聞歌を認めて
真実を吐露してくれたあなた
私達は絆を契り
誰よりも互いを深く感じていたのに
訪れた初夏
あなたは忽然と私の前から姿を消した
私は
探して
探して
探して
あなたが帰ってくる日を狂うほど待って
夏が過ぎ
冬が来て
春が去り
また夏を迎えた頃
或る日、あなたはようやく
私の許へ帰ってきてくれた
けれど
歓びの涙を流したのも束の間に
あなたは再び私の前から姿を消した
あなたと出逢ってから迎える
四度目の浅い春に
私の胸を去来するものは諦念
あなたが誰と何処にいて
私をまだ想っているのか
知る術もなくて
私は唯、あなたの無事を祈るだけ
あなたがどうか健やかでありますように
あなたといつかまた逢う日が訪れるまで




