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69. 最愛のひと
世界の全てが息を潜め
眠りゆく静謐なこの時間に
想えばおもう程
はらはらと涙こぼれ
けれど恋しくて
唯一度でいい
全てを忘れて
貪りあいたい
日々募りゆく慕情は
私をただひたすらに
破滅へと誘う
あの夏、出逢って
恋をして
それは私の理性を奪い
何もかも私から吸い尽くした
私は彼を愛している
嗚呼、けれど
最初から知っていた
わかっていた
なのにどうして
何故、惹かれてしまったんだろう
この恋は報われない
決して成就することはない
何故と問われて胸痛むのは
あの人にはもう
最愛の妻がいる……




