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61. 真夏の夜の愚者の恋
それは気怠い夏の夜
あなたの背中に腕を回して
あなたは私の白いうなじに
あの女を抱くその指で触れ
私達はどこまでも
奈落の底まで堕ちてゆく
それはひとときの甘い幸福な夢
決して永遠には続かない
嗚呼、知っている
わかっている
けれどでも……
あなたには愛する女がいて
私にはいとしい良人がいて
その忘れたくても消えない事実は
蟻地獄のように私達を逃しはしない
あなたは私の中に青春の
果たせなかった夢を見る
私はあなたの中に
真の恋を見つける
嗚呼、私達はどこまでも愚かで
決して結ばれることはないのに
果てない尽きぬ夢を見る
それは気怠い夏の夜……




