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6. 道化師の涙
辛い
辛い
辛い
あなたの心がわからない
あなたはいったい
何を見て
何を考えて
何をどう感じているの
あなたの視線は私の瞳の奥を通り越し
あなたは私にあの女の姿を重ねていて
あなたは過去の美しい想い出に囚われて
あなたはあの女のことだけを愛していて
嗚呼、それは識っている
わかっているだからこそ
私は自分の愚かさを呪い
道化のように虚しく自嘲う
唯、あの時のあなたの言葉を
ただそれだけを信じて
心から縋って
それしか術のない私は
素肌の自分を抱き締め
今宵もまた独り
涙に暮れるだけ




