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55. 巡り来る季節は
あなたに抱かれてこの世を去るなら
死んでもいい……
そう告げたのは一年前の蒼い夜
その言葉は心からの真実だった
あなたは私の全てを捧げられる
唯一無二の人だった
あなたも私を大切にしてくれた
あなたも私と同じ気持ちでいた
なのにあの時、どうして私達は
お互いの手を離してしまったんだろう
運命の皮肉は私達を揶揄い
私とあなたをずたずたに引き裂いて
今、あなたは何も応えてはくれず
わたしはあなたが無事でいることだけを
心から祈り
あなたとの幸せだった恋の想い出を
暗い部屋の中でひとり反芻している
あなたのことを愛していた
あなたのことが好きだった
桜が散り、爽やかな風が吹く頃
あの季節がまた巡り来る……




