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50. 三度目の春に
あなたと重なりあったのは
三年という短い季節だった
それは鮮やかに眩しくて
樹々も、鳥も、風も
目に清かな
何もかも輝いていたあの夏の日に
黒い切れ長の涼やかな瞳と
落ち着いた佇まいで爽やかに笑む
魅惑的なあなたに出逢った
私達は惹かれあい
やがて同時に恋に堕ち
それは本当に幸せな時を共有した
なのに運命は残酷で
神は嘲り笑いながら
私達をこんなにも傷つけ打ちのめし
ふたりの仲をずたずたに引き裂いた
皮肉な悪戯に抗えなかった
私達は脆く心弱すぎたのか
まだ頬に冷たい二月の風に
さらされながら考えている
あれから三度目の春が巡り来る




