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46. 巡り来る春に
僕は決して裏切っていない
心変わりをしたのは貴女だ
あの一年前の浅い春
あなたはそう言って
私に重い楔を打った
姿を消したのはあなた
私の前から消えたのはあなた
私に優しい便りをよこさなくなったのはあなた
それなのにあなたは
遥かな星空の向こうから
私に温かい吐息をかける
私が何処にも行かないように
私がだれをも愛さないように
暗くて深い呪文をかけて
私の四肢の自由を奪って
嗚呼、私はもう自由になりたい
あなたへの愛から逃れたいのに
なのに巡り来る三度目の春を前に
あなたへの消えない想いを胸に抱いて
今夜もまた私は南天に輝く星を見つめる
あなたが愛を誓ったあのシリウスを……




