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31. 彷徨う恋
あの夏に堕ちたその恋は
慕い、敬い、惹かれ合う
そんな対等の関係だった
磁石のN極とS極のように
互いが求め合い
純粋に想い合い
けれど
大きな障壁に阻まれて
相まみえることは決してなかった
そんな不毛な恋だった……
今、胸に去来するものは
底知れない孤独と虚無感
あの人は今、何処にいるの
何を想い今、何をしているの
誰も応えてくれる者はなく
しんしんと冷える真夜中に
深い深い果てない暗闇の中
唯、彼の人の想い出を胸に
彼の人の面影だけを探して
今宵もまた私は夢に彷徨う




