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13. 彼の人の住まう処
西へ
西へ
西へ
地平線の彼方にある
此の世の果ての地へ
初夏の風が通る丘を越え
荒ぶる深い海を渡り
花々の咲く野の原を
人のいない山あいを
ものともせず分け入って
朝も
昼も
夜も
絶え間なく、休むことなく
唯、ひたすら西へと歩み続けたなら
あの人に逢うことができるだろうか
懐かしい瞳をして
人懐っこい笑顔で
唯、私が逢いに行くのを
家の中で独り静かに待っている
あの人に本当に逢うことが……
そう信じて歩み続けよう
あの人が住まう山麓の
あの人の住まう西へと




