表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/43

ゴーレム

5体のセイントナイトの内、3体は俺に向かって突進してきた。デカい図体の癖して尋常じゃない速さだ。人間の機動力を遥かに凌駕した動きで、俺に剣を突き立てくる。


同時に残りに2体のセイントナイトがティアの方へと剣を向けて突っ込んできている。様子見も牽制も何もなし。容赦なくティアに剣を突き立てようとしている。


(ティアを守るのが優先だ!)


ティアは戦えると言ったが、それは魔法による桁違いの破壊力によるものだ。戦いの駆け引きや、剣の躱し方など、戦いの一切を知っているとは思えない。


「ティア、距離を取れ! 俺が囮になる!」


俺は叫ぶようにして言うと、ティアに向かってくる2体のセイントナイトに向かって飛び出した。当然、俺を狙っている3体のセイントナイトも付いてくるが、そのためにティアに距離を取るよう指示を出した。


巨体のセイントナイトが一斉に人間サイズの俺に攻撃を仕掛けるとなると、何よりも邪魔になるのが、セイントナイト自身の体だ。5体全てのセイントナイトが俺に対して、同時に攻撃を仕掛けるなど物理的に不可能。


もし、距離を取ったティアにセイントナイトが向かったとしてら、そいつを後ろから強襲する。そして、またティアに距離を取らせる。というのが俺の頭の中に描いた作戦。


もっと考える時間があれば、まともな作戦を提案できるのだろうが、そんな暇はない。


俺は向かって来ているセイントナイトを見据えて戦闘態勢に入る。案の定、攻撃を仕掛けてくる気配があるのは2体だけだ。他の3体は手を出しあぐねて、少し後方に下がっている。


向かって来た2体のセイントナイトは、左右からの同時に剣を振り下ろしてきた。巨人サイズの大振りの剣だが、その動きは繊細で素早い。お手本のような剣裁きだ。


俺は剣筋を見切って後ろに飛ぶ。剣が俺の目の前を通り過ぎるほどのギリギリの距離でセイントナイトの剣戟をやり過ご――


「アイク、上!」


俺のすぐ後ろからティアの声が聞こえてきた。って、えっ!?


「ティ、ティア!? お前なんでまだ――」


「それより、上から来てるのは、私が受け止める」


ティアはそう呟くと、右手を天に翳した。つられて俺も上を見上げると――そこには、大きく跳躍した1体のセイントナイトの姿が見えた。今まさに、落下の勢いと自重の力を利用して切っ先を向けて来てるところだった。


次の瞬間、ティアが透明の力場を発生させると、上から飛んできたセイントナイトの剣を受け止めた。ティアの力場とセイントナイトの剣が激しくぶつかり、放電現象を発生させる。


「ふんッ!」


ティアが更に力を籠めると、力場は強く光り、受け止めていた剣をセイントナイトごと弾き飛ばした。


「お、お前、そんなことも――」


「アイク、前!」


ティアに言われて咄嗟に前に注意を向けと、セイントナイトが再び俺に向けて剣を振り下ろそうとしているところだった。


俺は思いっきり体を捻って、その斬撃を回避。正直言って、ティアが声をかけてくれなかったら危なかった一撃だ。


続けて、もう一体のセイントナイトが剣を振り下ろしてくる。体を捻って態勢が崩れている所への一撃だ。無理をして回避すると、更にこちらの態勢が崩れてしまう。


(もってくれよ、俺の剣……)


俺は仕方なく、手に持っている安物の剣で受ける流すことにした。俺の持っている剣は、ただの鉄の剣だ。セイントナイトのような巨大なゴーレムが放つ斬撃を正面から受けたら絶対に折れる。


だから、剣を斜めに構え、攻撃を受けると同時に斬撃を流した。


セイントナイトの剣がぶつかった瞬間、重たい衝撃を感じたが、なんとか剣は折れずに済んだ。


(だけど、攻撃を受け流したところで、折れるのは時間の問題か……)


所詮、500Gで買った中古の剣だ。ティアの服よりも安い。さっきの攻撃で折れはしなかったものの、若干曲がっている。


これでは、俺がセイントナイトに剣を叩きつけても折れてしまう可能性がある。


(だったら、柔らかい部分を狙うだけ!)


俺は攻撃を仕掛けて来ている一体のセイントナイトに狙いを絞った。狙うは鎧と鎧の隙間。関節部分だ。可動部分だから、絶対に隙間が空いている。そこだけは鎧による守りのない無防備な箇所。


巨大なゴーレムだからこそ、その分、的が大きくなって狙いやすい。


俺は振り下ろされてきたセイントナイトの腕を斜め前に出て回避、同時に剣を振り上げて、セイントナイトの関節を狙う。


当たりはドンピシャ。振り下ろさた勢いと俺が振り上げた斬撃が重なり、セイントナイトの関節を斬り上げた――が……。


バキッ!


「なッ!?」


折れたのは俺の剣の方だった。完全にセイントナイトの関節を斬ったはずだった。鎧の隙間を縫って、守りのないところを斬り上げたにも関わらず、俺の剣が折れてしまった。


俺が動揺しているのも束の間、別のセイントナイトが剣を向けてきている。どうやら、セイントナイト達の狙いは完全に俺に向かっているようだ。


そもそも、教会の目的はティアの生け捕りだ。邪魔な俺を殺そうとしているのは間違いない。ティアに対しては身動きが取れなくなるまで痛めつける算段だろう。だが、ティアの防御障壁が思いのほか強固だったから、まずは俺に全てのセイントナイトを嗾ける方針に切り替えたということか。


俺はセイントナイトの攻撃を回避しながら、どうやって倒すか思案を巡らせる。鉄の剣では俺の力とセイントナイトの硬さに耐えることができない。


考えてみればそうだろう。相手はゴーレムだ。鎧を身に着けていない箇所が柔らかいという人間の基準で考えるべきではなかった。鎧の部分の方が硬いだけで、鎧がない部分も十分に硬いのだ。


「アイク、ここは私に任せて」


俺が考えている間に、いつの間にかティアが前に出て来ていた。そこは完全にセイントナイトの間合い。振り下ろされる剣の領域だ。


「ティア、危ない!」


「コオリツケ!」


ティアが冷たく言葉を発すると、一瞬だけ強風が吹いた。その風は、一体のセイントナイトを飲み込むと、たちまち真っ白な氷で包み込んだ。


純白の鎧は、青白い氷の中に閉じ込められ、今まさに振り下ろされようとしているセイントナイトの剣が止まった。


これで一体のセイントナイトが完全に無力化。圧倒的な物理耐性をもつセイントナイトも、ティアの魔法の前ではこの様だ。


「魔法……。魔法か……、なるほどな!」


俺は剣技ばかりを磨いてきて、魔法の知識は学校で睡眠学習した程度しか持ち合わせていない。だけど、ティアが以前、俺に言っていたことがある。『魔王竜の魂と結ばれた俺だったら、ティアと同じことができる』と。


魔法の詠唱なしに、イメージして魔力を込めるだけで発動する魔王の力。


俺は、次に剣を振り下ろしてきたセイントナイトを標的に選んだ。


(思い描け……。敵を破壊する力を!)


折れた剣をセイントナイトに向けて振り抜いた。剣と剣が触れるよりも前、俺が振った斬撃から、凄まじい爆発が起きた。


魔王竜の魂と結合した魔力がセイントナイトに襲い掛かり、振り下ろされてきた剣とその腕を含めて、半身を完全に吹き飛ばしていた。


「これなら、いける!」


俺は思わず声に出していた。元より剣が得意な俺だ。剣に魔力を込めるというのは、とてもイメージがしやすい。魔力の使い方とかはまだよく分かっていないけど、剣と合わせることで直感的に使うことができている。


セイントナイトは残り3体。その全てが俺に向かって突進してきた。


2体のセイントナイトが左右からの同時攻撃、そして、残り1体が大きく跳躍していた。


さっきと同じ攻撃を仕掛けてきている。ティアの防御障壁がなければ、仕留められるとでも思っているのだろうか。舐められたものだ。


俺は左右からくるセイントナイトは一旦無視。頭上に目を向けて、落下してくるセイントナイトに向かって飛んだ。


魔王竜の力で、俺の跳躍力は人間を遥かに凌ぐほど飛ぶことができる。急降下してくるセイントナイトの胴体に向け、折れた剣に魔力を込めて振り抜いた。


空中でのすれ違いざま、セイントナイトの胴体を薙ぎ払う。同時に開放された魔力が大爆発を起こして、セイントナイトを木っ端みじんに吹き飛ばす。


そして、次に地上へと目を向けた。見えたのは、俺を見失ってるセイントナイトが2体。その内一体に狙いを付けて、落下に合わせて剣を振り下ろした。


俺に狙われたセイントナイトは、斬撃に乗せた魔力の爆発を頭から受けることになる。激しい爆発と共に、セイントナイトの上半身が砕け散った。


これで、残りは1体。


最後に残ったセイントナイトは、攻撃を仕掛けてくることはせず、盾を構えて防御に徹した。その選択は苦肉の策だろうが、まあ、そうする他ないな。


「ツラヌケ!」


そこにティアの魔法が発動した。地面から突き出しきた幾本もの氷の槍が、セイントナイトの盾ごと滅多刺しにしている。


ティアの魔法の前に、セイントナイトの防御など何の意味もなしていない。鎧でも盾でも関係なく、ティアが放った魔法の氷はセイントナイトを貫いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ