62 妖狐 夢を見させられる
俺は妖狐。
夏休みの間……地獄でした。
ご主人様との再会が終わってからと言うもの、お隣のお姉さんに毎日のように呼び出され、おじさんと一緒に全力のいたぶりを受けた。
幸い、俺の力の方が凌駕していたので、どんな攻撃を受けても、たいして痛くはない。
なんなら横に寝たまま、五本の尻尾で相手をしてやったぐらいだ。
今思うと、それが悪かった……
お姉さん達はプライドを傷つけられて、その無念を晴らすために、最終兵器ひよりに過去最大の術を教え出したのだ。
それからと言うもの、ひよりの術の実験動物となり、何度か死にかけた。
実際、体の半分以上が消し飛んだ事もあった。
さすがにひよりもやり過ぎたと気付いてくれて、泣きながら俺に抱きつき、霊気を分けてくれて事なきを得た。
だが、それで治るのなら、時々、練習させてくれと言われ、地獄は続いた。
そんな地獄の日々の間に、おじさんが危険なあやかしがいるから協力してくれと、何度もあやかし退治に連れ出された。
どうやら土蜘蛛や最近の達成率の関係で、危険な依頼はおじさんに回って来るようになったのとのこと。
たしかに強いあやかしと戦う事になったが、俺とひよりがいれば何も怖くはない。
あやかしは……
怖かったのは、ご主人様だ。
どうやら俺達と遊びたいらしく、占いで俺達の退治しに行く場所に勝手について来て、無茶をする。
遠くから巨大な炎の玉を放ったり、管狐達を巨大な生物に変えて、あやかしだけでなく、俺達や自然にまで被害が出ていた。
ひよりより霊力が強いから調整が難しいと言っていたが、嘘だと思う。
ずっとケラケラと笑っていたからな。
辛くもひよりと乗りきったが、昨日も無茶をしてくれた。
八匹の管狐を一匹の巨大生物に変えて、「ヤマタノオロチ〜」とか言いながら、ダイダラボッチなる、これまた巨大な、山のように大きなあやかしにけしかけていた。
大社の者達と一緒に戦って、苦戦していたから助かったのだが、そのせいで、山の形が変わってしまった。
まったく、巻き込まれる俺の身にもなってほしい。
まぁ今日は一日、平和でありがたい。
ひよりも俺の尻尾に抱かれて気持ち良さそうに、モフモフ言いながらテレビを見ている。
「あ! 昨日行った場所がテレビに出てるよ」
「本当だな。でも、山崩れ? ダイダラボッチの事は出てないんだな」
「そうだね〜」
「ひより達は昨日、ここに行ってたの!?」
ん?
奥さんが珍しく驚いているな。
最近ではあやかし退治に、たまについて来て、見えていないのにひよりを応援していたのにな。
「行ったよ〜。どうしたの〜?」
「じゃあ、この慰問に来ている人にも会ったの?」
「あ! おじいちゃんだ〜。テレビに出てるなんてすごいね!」
「嘘……この人は、日本で一番偉い人よ!!」
たしか天皇とか言っていたか。
ダイダラボッチに大社の者達と俺とひよりが苦戦していたら、ご主人様のヤマタノオロチに助けられ、それでも互角の戦いだったところを助けられたんだったか。
ご主人様に匹敵する……いや、ご主人様より強い力を持つ人だと思っていたが、そんなに偉い人だったんだな。
別れの挨拶で、鵺や崇徳上皇が復活した際には、是非とも協力してくれと言われたが、嫌な予感しかしない。
出来れば、ひよりには断って欲しいのだが、きっと巻き込まれるんだろうな。
「はぁ。ビックリだわ〜……あ! もうこんな時間よ。明日から二学期が始まるんだから、早く寝なさい」
「は〜い。ママ、おやすみ〜。ヨウコ。行こ!」
「おう!」
………
「ヨウコ。起きてる?」
「ああ。どうした?」
「尻尾、増えそう?」
「昨日増えたばからだから、もう少しかかりそうだ」
「あんなにあやかし退治したのに、五本目になってから、六本目になるのは遅かったよね〜」
「そうだな。でも、あと三本でひよりの夢の、九尾の狐だ」
「わたしの夢じゃなくて、ヨウコの夢でしょ〜」
「う〜ん……俺達の夢かな?」
「わたし達の? それいいね!!」
「ああ。いい夢だ」
「じゃあ、いつものおまじない、もう一回してから寝よう!」
「わかった」
「「早く尻尾が増えますように……」」
「おやすみ〜」
「おやすみ」
今日も俺は、幼女に妖狐の夢を見させられる……
おしまい
最後までお読み頂き有難う御座いました。
現在連載中の「アイムキャット❕❕❓」も読んで頂けると幸いです。




