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野良の管狐は幼女に妖狐の夢を見させられる  作者: ma-no
第二章

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51 あやかし退治 父と娘の戦い


 ヨウコ達と別れた琴葉と父は、巨大な土蜘蛛に向かって駆け出す。


「どっちが多く、脚を潰すか勝負よ!」

「がはは。父さんに勝てると思うのか?」

「ええ。私は右に行くね!」

「気を付けろよ!」


 二人は軽口をした後、笑顔で左右に別れる。

 琴葉は退魔の木刀を何度も振るい、父は霊気を纏った拳で何度も殴り付ける。

 だが、土蜘蛛の脚は硬く、攻撃を弾かれてしまう。


 数分攻撃を続けるが、らちがあかず、父が琴葉を呼び戻す。

 そこで二人は協力し、守りを固めながら、言葉を交わす。


「全然、手応えがない」

「そっちもか。俺の攻撃も、少ししか効いてないみたいだ」

「お父さんでも!?」

「これはマズイかもしれないな」

「どういうこと?」

「この土蜘蛛……御神体を取り込んでしまっている」

「え……あやかしが御神体なんか取り込んだら死ぬんじゃないの?」

「本来ならな。琴葉にはまだ教えていなかったが、まれにいるんだ。死ぬどころか、力を増して、人間に害なすあやかしがな」

「力を増すって、どれぐらいなの?」

「前に戦った時は、神主レベルが10人以上いたな。それでやっと互角だ」

「嘘……」

「その時より土蜘蛛は弱いみたいだから、取り込んで間もないのかもしれない」

「じゃあ、勝てそう?」

「いや。無理だ。だから琴葉は、嬢ちゃん達を連れて逃げろ」

「お父さんはどうするつもり? まさか……」

「なにを心配してるんだ。適当にあしらって逃げるに決まっているだろ」

「そ、そうよね……じゃあ、行って来る!」

「おう!」


 父は琴葉を見送ると言葉を漏らす。


「はぁ……俺が逃げ切るのは無理だろうな……だが、必ず琴葉を逃がしてやる!」


 父は土蜘蛛に向かって行こうとするが、土蜘蛛は目標を、背を向けた琴葉に移し、走り出す。


「待て! 琴葉! 琴葉〜〜〜!!」


 父の叫び声が聞こえたのか、琴葉は振り返る。


「きゃあ!」


 それと同時に土蜘蛛の脚が振り降ろされる。

 父の叫びのおかげで、琴葉は防御に間に合ったが、それでも巨大な脚を防御するには体勢が悪く、吹っ飛ばされる。

 その倒れた琴葉に、土蜘蛛の爪が襲い掛かる。


「琴葉!」


 その絶体絶命の危機に、父は間に合った。


「グフッ……」

「お、お父さん……血が……」


 だが、琴葉を優しく包み込むと同時に、土蜘蛛の爪が父の背中を斬り裂いた。


「がはは。これぐらいどおってことない」

「嘘よ!」

「……琴葉。お前の今すべき事はなんだ?」

「それは……土蜘蛛を倒す事よ」

「そうじゃない。お前は賢い子だ。わかっているだろ? 俺達は関係ない子供を巻き込んでいるんだ。まずはひよりの安全確保だ」

「でも、土蜘蛛を放っておくわけには……」

「そんなの、ひよりが助かってから、大社(たいしゃ)に報告すればいいんだ」

「お父さん……」

「さあ! 早く行け!!」

「……わかった。すぐに応援を呼んでくるからね!」

「ああ。それまで粘るとしよう」


 父は立ち上がり、琴葉が走る足音を聞きながら、土蜘蛛に鋭い目を向ける。


 その瞬間、土蜘蛛の大きな脚が振り落とされた。


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