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【21話】四人でゲーム


 四人はリビングに降りた。

 テレビの前のソファーへ横並びで座って、レースゲームを始める。

 

 ルールは、四人での対戦プレイ。

 参加者はプレイヤーのみで、一位になった人が勝者となる。

 

「絶対負けないわよ!」

「私だって!」

 

 コントローラーを握る二人は、メラメラと熱を上げている。

 尋常じゃなく気合が入っていた。

 

 意気込みがすごすぎて、ここまでくると怖いな。

 

 闘志を燃やしている女子二人を、ビビりながら横目で見やる。

 

 そんな俺の肩を、隣にいる舞がつんつんと指で押してきた。

 顔を近づけてきたかと思えば、コソコソと耳打ちをしてくる。

 

「乃亜さんと陽菜お姉ちゃん、どっちが本命なのですか? 教えてくれたら、そっちを勝たせるように舞が協力しますよ」

「……なに言ってんだお前は?」

「あ、そうか。お兄ちゃんは二股してるんでした。どっちも本命ですよね。二股ってそういうものですものね」

「だから二股なんてしてねぇよ」


 またもや舞にからかわれてしまう。

 空気を変えるために使ったことを、根に持たれているんだろうか。


 そんなことをしているうちに、ゲームはスタート。

 

 雨宮さんと陽菜は相変わらず口喧嘩をしているものの、ゲームをしながらということが影響してか、先ほどよりも勢いが無くなっていた。

 

 よしよし、いい感じだ!

 あとは……。

 

「いいか、舞。どっちも一位にさせちゃダメだ。すべてのレースで、俺かお前が一位を取る」


 二人に悟られないような小声で、舞に極秘ミッションを伝える。

 

 二人のうちどっちかが一位になれば勝った方がマウントを取って、喧嘩をおっぱじめるだろう。

 そうなるのはごめんだ。

 

 だったら、俺か舞が勝者であり続けるしかない。

 平和のために、勝ち続けるのだ。

 

 絶対に負けられない戦いが、こうして幕を開けた。



 空が暗くなってきた頃。

 時間も遅いし、そろそろ解散しようという流れになった。


 俺の作戦は見事に成功。

 全てのレースで俺か舞が一位となり、雨宮さんと陽菜がマウント合戦を繰り広げるという事態を回避した。

 

 かなり頑張りましたよ、はい。


「いやー、村瀬くんも舞ちゃんも上手だね。一回も勝てなかったよ。……でも結城さんって、ゲームは苦手なんだね。なんでもできる人だと思ってたけど、意外な弱点を見つけちゃった」

「は? あなたなに言っているの? 私の方がずっとうまかったけど!」

 

 結局、二人は口喧嘩を始めてしまう。

 

 俺の頑張りっていったい……。

 

 せっかくの努力が泡となって消えていってしまう。

 なんとも悲しい気持ちになった。

 

******

 

「お兄ちゃん。今日はありがとうございました!」


 雨宮さんと陽菜が帰ったあと。

 舞がニコニコしながら、俺に話しかけてきた。

 

「久しぶりに楽しそうな陽菜お姉ちゃんと遊べました! なんだか懐かしかったです!」

「どこかだよ? あいつ、ずっとキレてただけだろ」


 陽菜はずっと雨宮さんに突っかかって、ワーワー喧嘩していた。

 常にキレ顔で、一ミリも楽しそうには見えなかった。

 

 いったい舞は、なにを見ていたのだろうか。

 節穴にもほどがある。

 

「そんなことありません。きっと、久しぶりにお兄ちゃんと遊べて嬉しかったんですよ。素直になれていないのは恥ずかしいからです。お姉ちゃんは恥ずかしがり屋さんですから」


 それは勘違いだ。

 

 陽菜は俺のことを嫌っている。

 嫌いなやつと遊んで楽しいなんて、そんなのはどう考えてもありえない。おかしい。


 でも俺は、それを口にしなかった。

 

 舞は今、ものすごく嬉しそうに笑っている。

 ここで思っていることを言うのは、舞の笑顔をぶち壊すということだ。

 

 そんなことをするようなやつは、兄失格だ。

 だからこれでいい。

 

「また四人で遊びましょうね!」

「……」


 いやごめん、それはマジで勘弁してくれ。

 

 二人の言い争いを聞いていたせいで、今日はどっと疲れた。

 せっかくの休みだっていうのに、少しも気が休まらなかった。

 

 こんなのは一度経験すれば十分だ。

 二度目はもう勘弁してほしい。

 

 けれどもキラキラ瞳を輝かせている舞に、そんなことを言えるはずもなかった。

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