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8話 釣り合い

「おまたせ」


 昼休み。

 中庭で天城さんと合流した。


 クラスメイトなのだから、一緒に移動する方法もあるのだけど……

 相手は聖女様なので、さすがに目立ちすぎるため、別々に移動することにした。


「はい、これ」

「ありがとうございます!」


 弁当を渡すと、天城さんはとても嬉しそうな顔に。

 ここまで喜んでもらえると、やっぱり嬉しい。


「それじゃあ」

「え? どこに行くんですか?」


 教室に戻ろうとしたら、天城さんは不思議そうな顔をした。


「高槻君もお弁当なんですよね?」

「そうだけど……」

「なら、一緒に食べましょう」

「……えっ、いいの?」

「むしろ、なぜダメだと思っていたんですか?」

「それは……」


 一緒にいて噂とかされると恥ずかしいから?

 もちろん天城さんの方が、だ。


「誰かと一緒に食べるご飯の方が美味しいですよ」


 天城さんは笑顔で言うと、ベンチの隣をぽんぽんと叩いた。


 その意見には賛成だし……

 天城さんが気にしていないのなら、俺が気にすることでもないか。


 そう納得して、天城さんの隣に腰を下ろした。


「ではでは、いざ開封の儀式です!」

「儀式って」

「お弁当は、開ける時が一番わくわくしません?」

「わかる」

「だから、儀式なんですよ。ふふ♪」


 聖女様って呼ばれているけど……

 意外と、天城さんは親しみやすい性格なのかもしれない。


「わぁ♪ 今日は唐揚げなんですね」

「うん。しっかりと漬け込んだから、ちょっと濃いかもしれないけど……」

「んーーー、美味しいです♪」


 もう食べていた。


「確かに濃い目ですけど、これはこれで、私は好きですよ。ご飯が進む味です」

「そう? 男向けで、女の子にはウケないかと思っていた」

「それはあるかもですね。ただ、しっかりと下味がついているので、そこが食べやすさに繋がっているのかな、と」

「わかるの?」

「はい、なんとなくですけど」

「すごいね」


 そこまでわかるのに、なぜ、料理の腕はアレなのだろう……?


「やっぱり、高槻君の料理は美味しいです」

「ありがとう」

「その……」


 天城さんがなにか言いかけた時、


「そこのキミ」


 男の声が割り込んできた。


 振り返ると、ニ年の男子生徒。

 どこかで見た覚えが……?


 ……ああ、そうだ。

 女子の人気が高い、如月修司先輩だったか。


「俺ですか?」

「ああ、そうだ。キミのことだよ」


 如月先輩は鋭い視線をぶつけてきた。


 はて?

 この人との接点はまるでないから、怒らせるようなことはしていないのだけど。


「いったい、なにをしているんだい?」

「えっと……昼を食べていますが」

「ごまかすな」


 なんだ?

 この人は、いったいなにを言いたいんだ?

 意味不明の会話に、ぽかーんとすることしかできない。


「なぜ、天城さんと一緒なのか、と聞いている」

「天城さんと?」

「キミのような冴えず、どこにでもいるような凡人が、なぜ天城さんと一緒に過ごしているのか、と問いかけているのだよ」

「えっと……」

「キミのような男が一緒にいたら、天城さんの迷惑になるだけだと、なぜわからない? 彼女が迷惑している、すぐに立ち去れ」

「……あぁ、なるほど」


 ようやく、如月先輩がなにを言いたいか理解した。

 要するに、俺と天城さんでは釣り合わないから、一緒にいるな……ということだ。


 俺と天城さんが釣り合わないことくらい、百も承知だ。

 冴えない男というのもわかる。


 ただ……


 天城さんが、一緒に食べようと誘ってくれた。

 それを、他者の言いなりになって跳ね除けることは、そもそもの話、天城さんに失礼だ。


「俺は……」

「なんですか、あなたは?」


 反論しようとしたところで、先に天城さんが口を開いた。

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