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27話 対決・その2

 俺の放ったボールがふわりと浮くようにして、ゆっくりと飛んで……

 ゴールポストを軽く揺らしつつ、通過した。


「「「………………」」」


 野次馬達は唖然としていた。

 目の前の光景が信じられない様子で、誰も声を発していない。


 それもそのはず。

 皆の予想とは正反対の光景が繰り広げられているのだから。


 10―0。


 それが、俺と如月先輩の試合の点数だった。

 ちなみに、俺が10だ。


「くっ……こんな、こんなバカなことが……!」


 如月先輩は苛立ちを隠せない様子で、最初に見せていた笑顔はない。


 顔を歪めつつ、強引なドリブルを仕掛けてきた。

 体ごと押し込んでくるかのような、ともすればラフプレーと判定されてしまうようなもの。


 ただ、それはそれでやりやすい。


 バスケに力は必要だけど、それ以上に技術が必要だ。

 1on1なら、なおさら。

 力任せの突破なんて通用しない。


 俺は、闘牛士になったような気分で如月先輩をいなす。

 それからボールを奪い、俺のターン。


 速攻で前に出て、如月先輩の動揺とミスを誘う。

 簡単に騙されてくれたおかげで、スムーズに突破。

 さらに追加点をもらった。


「くそっ! なんなんだ、いったい……!?」


 ついに我慢できなくなった様子で、如月先輩は汚らしく吠えた。


 うん。

 いい調子だ。


 最初に挑発をして。

 いい感じに釣れたおかげで、如月先輩のプレイは雑なものになっていた。


 その穴を見逃すわけがなくて……

 一気に大量得点。


 如月先輩は俺を侮るのを止めて、追いつくために猛攻をしかけてきた。

 しかし、そこに焦りが含まれている。


 どうして、俺がこんなに動くことができる?

 どうして、バスケ部である自分が負けている?


 たぶん、そんなことを考えていると思う。

 故に、プレイが荒くなり。

 隙ができるようになって。

 簡単に先を読むことができて、俺の攻撃は簡単に通り、逆に如月先輩の攻撃はまったく通らない状況になっていた。


「お、おい……俺、夢でも見ているのか?」

「夢じゃないって……まさか、如月先輩が負けているなんて」

「嘘でしょ? こんなのおかしいって。如月先輩が負けるわけないし……あの一年がなにか卑怯な手を使っているんじゃあ」

「でも、そんな風には見えないよ? なんていうか、その……普通に実力で勝っているように見えるんだけど……」

「バカっ、そんなことありえない! そんなこと……ありえないんだけど……」

「やっぱり、どこからどう見ても、一年の方が……」


 野次馬達がざわついている。

 それらの声は、当然、如月先輩の耳にも届いていて……


「くそっ!」


 如月先輩は、さらに苛立たしそうにして、強引なプレイを繰り返してきた。


 最初、俺が挑発をしたものの、以降はなにもしていない。

 勝手に焦り、苛立ち、自滅していく。


 そんな状態で強引なプレイをすれば、ボールを取ってくれといっているようなもの。

 如月先輩のドリブルを止めて、ボールをカット。

 俺のターンで攻撃に移り、再び点が入る。


 良い流れだ。


 とはいえ、油断はいけない。

 十点以上の点差があったとしても、まだひっくり返される可能性はある。


 最後まで油断せず。

 心は平静に、俺らしい最適なプレイを心がけていこう。


「いいですよ、その調子です、高槻君! そのまま、最後までがんばってください!」

「いいぞ、創! やっちゃえっ、ジャイアントキリングだ!」


 天城さんと凛の声援が聞こえてきた。


 二人が唯一の俺の味方。

 ただ、天城さんが味方をしているということで、他の生徒達の様子も変わってきた。


「なんか……あの一年の方が勝ってもおかしくないよな」

「普通に動きがいいからな。ってか、ここまできたら、勝つところを見たくなってきたかも」

「良いところ、見せてくれるかも?」

「やば、ちょっと期待しちゃうかも」


 わかりやすい人達だなあ。


 でも、これはこれでよし。

 流れが俺に向いたことで、如月先輩はさらに心を乱して、ペースも崩していく。


「くそっ、くそっ……! この僕が、こんなネズミごときに……!」

「……今回の勝負、引き受けた理由を教えましょうか?」

「なに?」

「天城さんが言っていたように、勝手に外から騒がれても面倒、っていうのはありますけど……」

「くっ!?」


 話をしつつ、如月先輩を抜いた。

 そのままシュートを決める。


「そうやって、何度も何度も見下されていたら、さすがにちょっと腹が立つので。男として、ここは負けていられないな……と」

「貴様……!」

「と、いうわけで……ここは俺が勝ちますから」


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こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

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