23話 悶える聖女様
家に帰り。
ハンバーグを作ってもらい。
今日もありがとうございました、と見送り。
その後……
「うーーーーーああああああぁ!!!?」
一人になった私は枕を抱きしめて、ベッドの上を転がりました。
うん。
ここ最近、こうすることが日課のようになってきました。
「私は! 私は! いったい、なにを言っているんですか!? なにを!?」
思い返すのは、スーパーでのやりとり。
周りから恋人のように見られて。
恥ずかしいけど、でも少し嬉しくて。
気にしていないというか、そう見てほしいとさえ思う。
……なんていう本心を、軽くではあるものの高槻君本人に伝えてしまった。
「あああぁ……本当に、私はどうしてあのようなことを……」
恥ずかしい。
思い返すだけで頬が熱くなってしまう。
ただ……
そこまで後悔していない自分がいた。
恥ずかしいものの、伝えてよかった、というか……
知っておいてほしかった、というか……
「……私は、なにがしたいんでしょう?」
ここ最近の私は、よくわからないことをしてばかり。
付け足すのなら、自分でもなにを考えているのかよくわからない。
自分で自分をコントロールできない。
感情が乱れてしまう。
その原因は……
「……全部、高槻君が悪いんです」
枕をぎゅっと抱きしめた。
「高槻君と一緒にいると……私が私でなくなるような」
彼の言葉一つ一つに敏感に反応してしまう私。
なぜ? と不思議に思うのだけど、それを止めることができない。
落ち着こう。
冷静にいこう。
そう考えても、結局、高槻君の言葉で浮つかされてしまう。
「もう……なんなんでしょう、これは……」
頬が熱い。
胸も熱い。
よくわからない感情。
甘く切なくて……
でも、時々、苦しくて。
「本当にペースを乱されてばかりです」
それがちょっと悔しい。
たまには、高槻君の慌てる顔とか見てみたいです。
あるいは、照れた顔とか。
あ、拗ねるところも見てみたいですね。
それから……
「って、私はなにを考えているんですか!?」
気がつけば、高槻君のことばかり。
思考が彼で染められてしまう。
「もしかして、これは……」
ふと、とあることに気づいた。
今の私の状態。
それは、つまり……
「……高槻君に餌付けされている?」
なるほど、と納得できる推理だった。
高槻君の作る料理はすごく美味しい。
美味しいだけじゃなくて温かい。
食べると、ほっと安堵することができる。
そんな高槻君の料理に、私は、いつの間にか心を掴まれていたのだろう。
簡単に言うと、餌付け。
「だから、こんなにも高槻君のことを考えてしまうんですね。また料理が食べたいから、自然と高槻君のことも……なるほど、そういうわけだったんですね!」
答えは出た。
納得の理由だ。
「謎が解けたので、今日はぐっすり眠れそうですね」
笑顔になった私は、抱きしめていた枕をベッドの上に戻しました。
それから部屋を出て、お風呂に入るのでした。




