21話 恥ずかしいけど、でも……
「それじゃあ、また」
「はい。今日はありがとうございました」
玄関で高槻君を見送る。
一人になったところで鍵を閉めて、自室に戻った。
「……」
ベッドに座り、そのまま、ぽすんと横になる。
そして、じたばたと悶える。
「っーーー!!!」
私は!
私は!!!
なんていうことをしようとしたんでしょうか!?
下着を確認してほしいとか……
「痴女ですか!? 痴女なんですか!? 痴女ですよね!?」
あああああ……!
と、そんな感じで悶えます。
悶えずにはいられません。
どうして私は、あのようなことを……?
思い返すだけで恥ずかしくて。
顔が赤くなり。
とてもじゃないけれど、人様に見せられないものになってしまいます。
「うぅ……高槻君は、どう思ったでしょうか?」
引いた?
それだけなら、まだなんとか……
マイナス印象を与えたとしても、その後、どうにかこうにかプラス印象で帳消しにすればいい。
ただ……
「もしも、もしも失望されて、友達を……や、や……やめたい、とか思われていたら?」
鏡を見ていないのだけど、自分の顔がさーっと青くなるのがわかりました。
な、なんて恐ろしい想像を……
いえ。
これは実際にありえる未来かもしれません。
あの後、高槻君は普通に見えたけど……
でも、内心では冷めていて。
もう私と会いたくないとか、そんなことを……
「……うぅ……」
泣いてしまいたい。
消えてしまいたい。
もう絶望しかありません。
なにもすることができず、ただただ落ち込み、ベッドの上で丸くなるだけ。
「……あれ?」
ふと、スマホのメッセージアプリに通知があることに気づきました。
誰でしょう?
メッセージアプリのやりとりをしているような人は限られているのですが……
「って、高槻君!?」
確認すると、高槻君からでした。
アプリでもやりとりできた方が便利だからと、今日、IDを交換したばかり。
「も、もしかして……ブロックされた、とか?」
最悪の想像が。
いや、落ち着いてください、私。
ブロックされているのなら、そもそも、高槻君からの通知なんて来ません。
なにかしらメッセージが送られてきたことは確か。
その内容は、とても冷たいものかもしれないけど……
「……確認しないと」
恐怖に手が震えるのだけど、それでも、がんばってスマホを操作してアプリを開いた。
そして……
「……今日はありがとう?」
そんな簡素なお礼。
それと、猫がぺこっと頭を下げているスタンプ。
最後に、
「明日の弁当はなにがいい……?」
そんな一文が添えられていました。
「これは……」
嫌われたわけではない?
失望されたわけではない?
「はぁあああああ……」
長く深く、安堵のため息がこぼれました。
よかった。
本当によかった。
もしも高槻君に嫌われていたら、私は……
「どう……なるのでしょうか?」
ふと、不思議に思う。
私は、どうして、そこまで高槻君に嫌われることを気にしているのだろう?
正直なところ、男子は苦手でした。
良い顔をして。
でも、裏ではろくでもないことを考えている。
世の中、全てがそうとは言いませんが……
少なくとも、私が出会ってきた男子はそんな人ばかり。
だから、表には出さないものの、距離を取るようになって。
笑顔の下に嫌悪感を隠して。
なるべく関わり合いにならないようにしていました。
でも……
高槻君のことは気になる。
関わり合いにならないのではなくて、むしろ、関わりたい。
もっともっと仲良くなりたい。
自然とそんなことを考えてしまう。
「いったい、どうして……?」
高槻君と他の男子。
なにが違うのだろう?
この差は、どこから生まれてくるのだろう?
考えるけど、わからなくて……
「むぅ?」
私は一人、首を傾げるのでした。




