95 金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり⑦
九十五話 金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり⑦
『ねねヨッシー、私を呼んだってことは、私を必要としてくれたってことなんだよねー!?』
あれからメリッサは、愛ちゃんたちのいる学校から約十分ほどで家に到着。
目の前にいる闇・進藤さんには目もくれず、満面の笑みでオレに顔を近づけてくる。
「あー、近い!」
『そんなこと言っていいのかなー? 私の手助けが必要なんでしょー?』
そう、オレがわざわざ愛ちゃんたちと行動を共にしていたメリッサを呼んだのは他でもない。
進藤さんをどうにか救う事のできる案を……知恵をもらうため。
昨夜メリッサは、愛ちゃんが学校で寂しくならないようにするにはどうしたらいいかという難問に、それはもう簡単に最適解であろう答えをオレや御白に教えてくれたのだ。
だったら今回もおそらくは良い案をくれるはず。 オレは事の経緯を簡単に話した後に、メリッサならどうするかを尋ねてみた。
『んー、この子がそこにいる心の鬼を必要としないで、自分の弱さを受け入れさせた上で、生きる希望を湧かせる方法かー」
メリッサが天井を見上げ、下唇に指先を当てながら『そうだなー』と呟く。
オレや御白はメリッサの邪魔をしないよう、しばらくの間、無言を決めることに。 そしてその時はようやく……静寂に包まれた空間の中、メリッサは『あっ』と声を漏らした。
「なんだ、何か思いついたのか」
『おい、どうなのじゃ』
オレたちの注目を集めたまま、メリッサが自信満々に口を開く。
『ねね、これはどう!? 私がサキュバス特有の力……【性の力】を注入して、性欲を爆発させるの!! そうしたら欲求を発散させるために自分自身を曝け出すことなんて当たり前だし、一人で気持ちのいいことが終わった後には満足感しかない。 また同じ快感を味わうために「生きたい」って思うはずだよ!!!』
「ーー……」
『ーー……』
望んでいたものとは違った回答に、オレと御白はただただ無言に。
メリッサの表情的に、別にふざけてる感じは見受けられない。
国によって死生観が違うように、サキュバスにとっては性的な快楽で辛いことも万事解決って事なのだろうか。
オレが無理矢理納得しようとしていると、その隣で御白は大量の眷属たちを召喚。 一斉にメリッサめがけて飛びかからせた。
「お、おい御白!?」
『え、ちょっ、ネコちゃん!? どうしてええええ!?!?』
『こんの……馬鹿者があああああ!!!! そんなことで解決すると、本気で思うてかああああ!!!』
金縛りなのだろうか。
身動きの取れなくなったメリッサの前に御白が距離を詰めると、その頭を思いっきりバシンとしばく。
『いったああああ!! なんでぇーー!?!? 良い案だと思ったのにーー!!!』
『たわけがアアアアア!!! まだ言うかアアアアア!!!』
メリッサの顔色から見てふざけている様子などなかったのだが、御白のやつ……完全にキレちゃってるな。
御白の周囲にはピリついた空気が充満。
神の怒りの霊力を感じてなのか、気づけば闇・進藤さんや進藤さんの姉・すみれさんが隠れるようにオレの背後へと移動。 御白とメリッサの会話を聞きながら、すみれさんに至っては、『はわわわわ、この力怖い……生きてたら絶対に漏らしてるよぉ……』と涙目で呟いていた。
『待って、待ってよネコちゃん!! 私、別にふざけてないよー!?』
『やかましいわ!! どうして性的な話になってしまうのじゃ!! こっちは真面目なのじゃぞ!!』
『いやいや私、今の結構真面目……ていうか、だって仕方ないじゃないー!! 別に私たちがどうこうしなくても、この子は大丈夫……必要なものは全部揃ってるんだからー!!!』
『「ーー……え?」』
どういうことだ?
御白が詳しく尋ねようとするも、メリッサは『この金縛りを解かないと喋らない!!』とその場での回答を断固拒否。 頬を膨らませながらプイっと御白から視線を逸らす。
『わ、わかったわかった!! 早々に術を解くゆえ、その話を聞かせよ』
『ぶーー!! 後でちゃんと謝ってよねー!? しょうがないネコちゃんなんだからー』
術が解けてようやく動けるようになったメリッサは軽くストレッチをして深呼吸。
視線をオレや御白に向けながら、先ほどの言葉……『進藤さんを救うのに必要なものは全て揃っている』について、ゆっくりと話し出した。
『ネコちゃんはともかく、なんでヨッシーは気づかなかったの?』
「ーー……は?」
『まったくもぉー。 ダメだよヨッシー。 そんなだったら、そのうち愛ちゃんもこの子みたいになっちゃうかもよー?』
「え」
◆◇
その後メリッサは進藤さんを……というよりも、人の心を救うために何が必要なのかを挙げていく。
そこで出たのは『理解してくれる少数の友達』、『落ち着ける場所』、『心から信頼できる家族の存在』だった。
『ヨッシーはクラスメイトなんだから一昨日見たでしょ? この子には心配してくれてる友達がいたじゃん』
「うん」
『それに、見た感じ愛ちゃんみたいに両親が亡くなってるとか、家が無いとかじゃないんでしょ?』
「まぁな。 でも家族関係はかなり悪いらしいぞ」
『そんなの死んでない限りどうにでもなるよー。 だったらまずは、亡くなったそこのお姉ちゃんにあの子の溜まった愚痴を満足いくまで喋らせて、心をスッキリさせてから姉妹でこれからどうしていけば良いかを話し合わせれば良いだけじゃんー』
「ーー……それで解決すんのか?」
『あのねー、心置きなく話せる相手がいるってだけでそれは大きな武器なんだよー? 愛ちゃんに比べたら難易度ベリーイージーだよー』
「なるほど」
要するに、何はともあれまずは姉・すみれさんとじっくり話す時間を作ってあげることが大事ってことなんだな?
すみれさんに視線を向けると、既にすみれさんは不安そうな表情。
しかし拳を強く握り締め、『ゆりかちゃんのために私にできることがあるんだったら……やりたいです』と声を震わせながらオレを見据えた。
「分かった。 じゃあ……今夜も進藤さんウチに泊まるっぽいし、その時にでも二人で話してくれるかな」
『う、うん。 でもどうやって? さっきみたいに、一晩中キミがずっとゆりかちゃんに触れてないとダメなんじゃ?』
オレの心配をしてくれるなんて、なんて出来た姉なんだ。
オレは、オレが触れずとも霊と話せる代物があることを説明。 心置きなく二人だけで話してくれということをお願いする。
『う、うん。 ちょっと自信ないけどゆりかちゃんの為だもんね、頑張る!』
それからしばらくして進藤さんが起床。
何か夢でも見てるような表情だったのだが、オレはあえてそこには触れず、時計の針を指差した。
「ーー……加藤?」
「ほら進藤さん、そろそろ準備しないとマズイんじゃない? 従姉妹と遊んであげるんでしょ?」
「あ、そっか。 そうだね。 それに夜にまたこっち持ってくる荷物も詰めないとだし。 悪い、すぐ用意してすぐに向かうわ」
「うん」
こうして進藤さんはすぐに家を出て自宅へ。
オレは大きなため息をつきながら、ソファーの上に横になった。
『おい良樹、お主結構呑気じゃなー』
『そうだよー。 勉強もしないで平日の昼間にのんびりなんて、贅沢だねー』
「お前ら忘れてないか? オレは病人……さっきから腹痛が再来してて、やっと横になれたんだよ」
『『あっ……』』
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