94 特別編・愛、マリアの休み時間【挿絵有】
九十四話 特別編・愛、マリアの休み時間
『いくよー!! 愛ちゃんもマリアも、見ててねー!』
小学校・休み時間。
良樹からの伝言を預かった御白の眷属が来ているのにも関わらず、メリッサはそれをスルー。 自慢の大鎌を振り上げ、目の前を素早く逃げ回る小悪魔に狙いを定める。
「ねぇメリッサちゃん、みーちゃんの眷属さん来てるけど……って、そんな大きな鎌で切れるの?」
「愛、もし外したら、一緒に笑う」
愛とマリアに注目されている中、メリッサは小悪魔めがけて大鎌の鋭い刃先を振り下ろす。
結果は見事中心を捉え、小悪魔はあっさりと一刀両断。 小さな断末魔をあげながら、そのまま灰となって消えていった。
「わわ、すごいっ!」
愛が思わず感想を口にすると、マリアがすぐに自身の手を愛の口に覆いかぶせる。
「しー。 愛、大きな声出しちゃダメ。 変な目で見られる」
「あ、あーそっか。 ごめん、ありがとマリアちゃん」
慌てて口を押さえ恥ずかしがる愛を見て、マリアとメリッサは静かにアイコンタクト。
前日の夜、少しでも愛に楽しんで貰えるようこっそり話し合った結果が功を奏したので、愛に見つからない角度で小さく親指を立て合った。
『あははー、そんな驚いてもらえて嬉しいなー。 どう? 私凄いでしょー』
「う、うんビックリした。 私、体育のソフトボールでも、ボールがバットに当たらないのに。 メリッサちゃんほんとに凄いね」
『でへへー、そんなことあるよー』
メリッサが愛の言葉に舞い上がっていると、痺れを切らせた御白の眷属がメリッサに向けて捕縛の術を発動。
それによりメリッサは強制的に金縛り状態となり、ようやく眷属は良樹から預かった言葉を伝えるべく、メリッサの胸の上に飛び乗った。
『あー! 私のお胸!! 触るならともかく、上に乗るとか失礼じゃないかなー!!』
メリッサが唇を尖らせながら文句を言うと、御白の眷属は甲高い声でメリッサを威嚇する。
『コーーーーン!!!』
『はわわっ、ごめんってそんなに怒んないでよ! 冗談だって冗談!!』
『コンコーーーーン!!!』
『あーはいはい、伝言ね伝言。 無視して悪かったって!』
『コンコンコーーーン!!!』
『ん? そうなのヨッシーが? うんうん。 えー、そうなんだ、分かった、じゃあもうちょっとしたら向かうって伝えてくれるかな!』
要件を終えた御白の眷属はそそくさとメリッサの胸から飛び降り、すぐに主人・御白の元へと戻ったのかその姿を消す。
その一部始終を見ていた愛とマリアは、揃ってその視線をメリッサへと向けた。
「ねぇメリッサちゃん、何かあったの?」
「一大事?」
愛とマリアが興味津々な表情で見上げてきていたのだが、そんな二人にメリッサは可愛くウインク。
『秘密! ただちょっと呼ばれたから行ってくるねー!』と、背中に生えた翼を羽ばたかせて窓の外へジャンプし、良樹の家へと飛び立っていった。
「ねぇマリアちゃん、さっきメリッサちゃん、お兄ちゃんの名前言ってたけど……何かあったのかな」
「分からない。 でも別に焦った様子でもなかったし、大したことじゃないと思う」
「そっか。 そうだといいな」
「むぅ。 愛、良樹の心配はいいけど、ここにいるのはマリア。 今はマリアと楽しむ」
「う、うん。 ありがとマリアちゃん」
「じゃあ今度はマリアの番。 メリッサに負けてられない。 愛、窓の外……運動場の真ん中くらいにいる霊、視える?」
休み時間は残りわずか。
マリアは愛の気を紛らわせるべく、メリッサに負けずとも劣らないほどの浄霊の光を運動場中心に展開。 夏の日差しも見劣りするような眩い光を放たせながら、対象の霊をその光の中へと飲み込んでいく。
「うわぁ、きれい。 やっぱりマリアちゃんも凄いね」
「愛もこれくらい出来るようになる」
「そうかな」
「そう。 それまでマリアが知識やコツを教える。 もし愛の力が開花したら、マリアのお手伝い、お願い」
「うん!」
二人が言葉を交わし合っている間に霊は一瞬で浄化。 そしてそれをほぼ同時、休み時間を終えるチャイムが校内に鳴り響いた。
「あ、休み時間終わっちゃった」
「愛、また次もマリアと何かする」
騒がしかった休み時間が終わり、静かな授業時間が開始。 しかしこの時、マリアの放った浄霊の光にあえて触れて威力を確かめにきた者がいたことを、二人は知らない。
『ーー……へぇ、見たことない光が見えたから来てみたら、なかなかの威力。 これは特に同族……悪魔相手に効きそうかにゃ? 厄介厄介。 どこからやったんだろ……あの建物の中かにゃー』
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