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93 金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり⑥


 九十三話  金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり⑥



 突然進藤さんの背中から黒いもや……瘴気しょうきとともに現れた、進藤さんと瓜二つの……しかし額からツノを二本生やした何か。



 一瞬だけ面食らってしまったけど、『善』なものでないことは確かだ。



 オレは強制除霊を撃ち込むべく手に力を込める。

 しかしそれを察した御白は、なぜかオレに向けて『やめい!!』と叫んだ。



「ーー……!?」



 慌てて中断し御白へ視線を向けると、御白は言葉を続ける。



『あやつを除霊してはならん。 それを消したら最後……あの小娘、進藤さんとやらの精神は崩壊するじゃろうて』


「崩壊……?」


『だからその娘の話を聞く前に、妾の話を聞いたほうが良いと言ったのじゃ。 まぁお主は聞いておらぬかったようじゃがの』



 御白は後ろで怯えていたすみれさんに『大丈夫じゃ』と諭すと、ゆっくりと進藤さんの背後にいる何か……闇・進藤さんへと近づいた。



『ーー……』

『ーー……』



 何か話してるのか?



 二人の会話は聞こえないものの、闇・進藤さんが小さく頷く。 その後話が終わったのか、闇・進藤さんは大人しく進藤さんの中へ戻り、そしてそれと同時……進藤さんの意識がプツリと途切れ、まるで電池の切れたおもちゃのように、その場にパタリと倒れ込んだ。



「し、進藤さん!?」


『安心せい。 小娘……進藤はただ寝てるだけ、というよりも先ほど背後にいた奴に眠らせてもらったのじゃ』


「眠らせ……なんでだ?」


『そんなの決まっておろう。 あの者に詳しく話を聞くためじゃて』


「ーー……?」



 御白は静かに視線を進藤さんの方へ。 完全に熟睡しているのを確認して『もう良いぞ、出て参れ』と声をかけると、再び進藤さんの体から瘴気と共に、ツノの生えた闇・進藤さんが姿を現した。



『ーー……あなた何者? すごい力を感じるけど』



 おお、喋った。



 前髪からチラリと見える眼を光らせながら、闇・進藤さんが御白に尋ねる。



『妾か。 妾は御白神社が神・御白じゃ。 まずは……うむ、お主が変な行動に出ない限り、危害を加えないことをここに約束しよう』


『それもう半強制的じゃん』



 おいおい、声や話し方、態度まで瓜二つかよ。 本当に何者なんだ?



 疑問を投げかけたいのは山々なのだが、オレは御白の邪魔をしないことを優先。 序盤は黙り込むことを徹底し、二人の会話に耳を傾けることにした。



『では早速で申し訳ないのじゃが……お主は鬼で合っとるかの?』


『うん』



 ーー……え。



「ええええええええええええええ!?!?!?」



 ◆◇



 話を聞いていて分かったのは、先ほども言っていた通りあの闇・進藤さんの正体が鬼だということ。

 何故進藤さんに鬼が憑いていたのかについてだが、それはヤンキー女子らしくない……なんとも切ないものだった。



『私を創り出していなかったら、こいつはとっくの昔に壊れてた』



 どうやら進藤さんは姉の死や家族間のゴタゴタが影響して精神を少しずつ衰弱。 このままでは自ら命を絶ってしまう危険があったため、本能が自身を守るべくもう一つの人格を形成……そうして生まれたのが闇・進藤さんらしい。



『なるほどの。 じゃから何に対しても少し冷めた様子で……淡々とこなしておったのか』


『そう。 たまに感情が湧き上がりそうになってた時は、私が強制的に抑えてた』


『にしても、よくこの良樹の目から隠れられておったのう。 学校で見つかってたら、消されておったかも知れぬぞ?』


『見つからないのは当然。 私は他の奴らとは違って、表面に取り憑いてるわけじゃない。 そのもっと奥……心に絡み憑いてるから』


『ただ、お主も分かってると思うが……それを続けていても、根本の解決にはならんぞ?』


『知ってる。 でも私はこいつが死なないように、全力で守るだけ。 仮に私が離れたとしたら……こいつは一気に感情的になる。 何をしでかすか分からない』


『まぁ、それはそうじゃが……、そんなに感情の起伏が激しいのかお主の主人は』


『そうだね。 今までは安定……というより安定させてきたけど、昨日の朝から特に酷いかな』



 進藤さんが感情的になった場面は、直近で三回あったとのこと。

 一回目は進藤さんも話してくれた、先日の父親との口論。 二回目は昨夜の高槻さんとの煽り合い。 そして三回目が今さっき起こった姉・すみれさんの姿を見た時だったらしい。



『一回目は突発だったけど、まだすぐに抑えられた。 問題は二回目の……あの女と話してる時。 あの時、こいつはあの教師に以前いた姉・すみれの影を重ねていた。 何を言っても軽く流さ言い負かされる……そのことにこいつは懐かしさを感じ、感情の波が溢れ出た結果……素のこいつが出てしまっていた』



 どうやら進藤さんの心の扉は高槻さんと会話したことで半開きに。 そしてそれが完全に閉め切る前に先ほどの出来事……すみれさんを目にしたことで、全開になってしまったとのこと。 



「あ、だからさっきの進藤さん、いつになく純粋な表情してたのか」



 思わず感想を漏らすと、闇・進藤さんがコクリと頷く。



『そういうこと。 どうすることも出来なくなったから、仕方なく私は出てきただけ』


「ーー……敵を呪おうとか、そういうつもりじゃなくてか?」


『当たり前。 私は確かに鬼だけど、所詮は心の弱いコイツが作った存在……そんな大層な力はない。 ただこいつの心が暴走しないように守ってるだけ』



 そういうことだったのか。



 話を聞いたオレは、これからどうするべきなのかを御白に尋ねる。

 しかし御白の口から出た答えは、オレの想像を遥かに超えた……ほぼ無茶振りのようなものとなっていた。



『それは簡単じゃ。 この進藤を救う一番の方法は、己の弱さを受け入れさせつつ生きる希望を抱かせ、この鬼と決別することじゃ』



 御白の言葉に同意するかのように、闇・進藤さんも『それはそう』と答える。



「なるほど。 それで、それはどうやってやるんだ?」


『そこで良樹、お主の出番じゃ!』



 御白が待ってました言わんばかりの表情でオレを指差す。



「ーー……オレ?」


『うむ! お主は愛やマリア、ゆづきの心を救ってきた。 今回も良い考えが思いつくじゃろうて』



 ーー……は?



「はああああああああああああああ!?!?!? い、いやいやそんな急に言われても無理……てかオレのこと、買い被りすぎだろ!!!」



 しかしそうだな、こうなったら……賭けるしかないか。



 オレは御白にお願い事を一つ。 眷属を使って、愛ちゃんたちと同行しているメリッサに至急戻ってくるよう伝えてもらった。


 


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