89 意外な一面
八十九話 意外な一面
貧乳の話から、女の魅力の話へ。 その後どういう方向へ進んだらそうなったのだろうか。
ヤンキー女子・進藤さんはあろうことか自身と高槻さん、どちらが魅力的な部位が多いのかをオレに決めさせるという話になってしまったのだ。
まぁ、結論から言うと……オレが鼻血を出して強制終了したんだけどな。
進藤さんの提案に、高槻さんは悪ノリなのか「じゃあよく見えるように、お洋服を脱いじゃいますか」とおもむろに服を脱ぎ始める。
最初こそ『これはラッキースケベ、キタアアアアア!!!!』と心の中で乱舞していたオレだったのだが、そう……オレはエロに対する抗体があまりなく、すぐに血圧が上昇して鼻の奥から赤い液体を噴射。 加えて状態異常【食中毒】により体力もあまり残っていなかったことから、その場で意識が遠のいていった。
薄れゆく意識の中、最後にオレの視界に映ったのは高槻さんのダイナマイトな果実。
「あぁ、まるで褐色の……葡萄」
「か、加藤くんー!?!?」
「あらら? 良樹くんー?」
「ちょ、加藤、まだ私……!」
ばたり。
◆◇
目を覚ますと深夜で、既にリビング内は真っ暗。
既にみんな寝静まってしまったのか、リビングにはオレ一人だけとなっていた。
「あれ、いつの間に寝て……。 あ、そうか、オレ鼻血出して倒れたんだった」
鼻に詰められていたティッシュを抜き取り、お腹の調子を確かめるように摩っていると、オレが起きたことに気がついたメリッサと御白が静かに近づいてくる。
『お、思ったよりも元気そうじゃの』
『ヨッシー、おはー。 帰ってきたらヨッシー鼻血出して倒れてたからビックリしたよー。 お腹の調子はどうなのー?』
「あーうん。 心配かけてごめんな」
オレはメリッサに、全快ではないが良い感じなことを伝えると、メリッサは『そっかー』と安心したように微笑む。 その後、『だったら少しお話しても大丈夫だよね!』と昨日愛ちゃんたちの学校へついて行った際の話を語り出した。
『あのさ、私あまり詳しくは知らなかったんだけど、愛ちゃんってご両親いないのー?』
「え、あーうん。 そうだけど……なんでだ?」
『そうなんだー。 それ聞いて納得しちゃった。 てなると、マリア良い子だねー』
「ンンンン!?!?!?」
話を理解できなかったオレは詳細を教えてもらうことに。
そこには、オレの知らない二人の姿があった。
「ーー……え、マジか。 愛ちゃんが」
『そうだよー。 でもさ、そこで泣いたり怒ったり……とか、感情を表に出さないあたり大人だよねー』
メリッサの話では、小学校での愛ちゃんは基本的に無口。 休み時間等もあまりクラスメイトと絡んでいなかったらしい。
「えええ、愛ちゃん暗いの!?」
『うんー。 私がいた時は、周りの子が「昨日お母さんと喧嘩した」とか、「今度の夏休みに家族旅行に行く」とかそんな話をしてたんだけど、それを愛ちゃん、離れた席で一人涙ぐみながら聞いてたんだよねー。 私も家とのギャップに驚いちゃった』
メリッサは顎に指先を当て、記憶を思い出しながら当時……といっても昨日のことを語っていく。
「家族の話……だからか?」
『さっきヨッシーに聞いた感じだとそうかも。 でもね、そんな愛ちゃんに寄り添うように、すぐにマリアが愛ちゃんの隣に来て話しかけてたんだよ』
「マリアが?」
『うんっ、多分あれは周りの子の声を気にならないようにするためだとは思うんだけど、マリア、ちっちゃな声で除霊のお手本とかを見せてあげたりしてたんだー』
「ーー……」
衝撃的すぎて固まっているオレに、メリッサは『え、そういうのマリアからとか……誰からも聞かされてなかったの?』と意外そうな顔で首を傾げる。
「いや……オレの耳にはまったく」
御白に視線を向けてみると、御白は諦めたように小さく息を吐く。 その後、オレの心に余裕ができた時に話す予定だったことを先に伝えた上で、愛ちゃんに口止めされていたことを告白した。
「オレの心に余裕ができた時?」
『うむ。 今のお主は少しは家事や世話に慣れてきたとはいえ、自分やその他のことで精一杯。 そこに悩みの種を増やせばお主の脳が限界を迎えてしまうと思ってな』
「ま、まぁ確かにそれはそうだけど……」
『それに愛が本当に危なくなったら言うつもりだったのじゃが、マリアが来てからというもの、愛の心も若干ではあるが落ち着いてきていてな。 それでまだ大丈夫だと思って黙っていたのじゃ』
愛ちゃんがオレに学校でのことを口止めしていた理由は、オレを心配させたくないからとのこと。
御白は更に、『愛は自分が笑っていれば良樹も嬉しそうに笑う。 お主の笑顔を見れるだけで、愛は幸せだと言っておったぞ』と、愛ちゃんの寝ている方向を見上げながら付け加えた。
『絶対に愛には、妾が口を破ったことを喋るなよ?』
「あぁ、大丈夫だ言わない。 でも、じゃあオレはどうすればいいんだ? ていうか愛ちゃんが【陰陽】の力を使えない原因に、学校で心を殺してることも関係してるってことなのか?」
『かもな』
「マジか」
ダメだ、こればっかりは完全に詰みだ。
家でのフォローは出来たとしても、流石に小学校までは手が届かない。 そこを高槻さんに任せるというのも酷な話だしな。
「んんーー!!!」
頭を悩ませ考えていると、メリッサが『どーしたの、そんなブチャイクな顔で唸っちゃって』とオレの額を指で弾いてくる。
「痛っ、なんだよメリッサ」
『てかさ、オンミョーの力ってなに? 私そこらへん全然知らないんだけどー』
そりゃあ言ってないからな。
オレは色々あって愛ちゃんが心にまだ壁を作っていることだけを説明。 そしてその壁をどうにかして壊すため悩んでいることを伝えると、お気楽なメリッサは手を頭の後ろで組みながら、『ふーん、それでどーするの?』と呑気に尋ねてくる。
「それがわかったら苦労しねーよ。 とりあえずは愛ちゃんに学校で寂しい思いにさせないことだけど、これはオレには……いや、オレたちではどうしようも出来ないだろ」
他人事といえば他人事なのだが、オレはそんなお気楽モードのメリッサに軽く憤りを覚えながら答える。
しかしどうだろう、オレのそんな言葉を受けたメリッサは、『なんだ、そんなことかー』と聞こえるように呟いた。
「ちょ、そんなことってなんだよ、そんなことって」
『いやさ、だって学校で寂しい思いをさせなければいいだけなんでしょ?』
「お、おう」
『そんなの簡単じゃん。 今の愛ちゃんは他のクラスメイトたちを羨ましがってるんでしょ? だったら逆に、皆から羨ましがられる方向にシフトしていけばいいだけじゃん』
「それをどうやって……」
『ったくもー、ヨッシーは頭が硬いなー。 硬いのはシンボルだけにしてよねー』
その後メリッサはオレと御白に自身の思いついた方法をお気楽モードのまま語り出す。
それは意外にもメリッサにしては理にかなったものとなっていて、話を聞いたオレと御白は揃って驚きの声を漏らした。
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