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88 女の戦い


 八十八話  女の戦い



 それはとある日の夜・加藤家で起きた、女の戦いの記録。

 のちに巻き込まれたオレ……加藤良樹はこうかたる。 



『最高すぎて、体に毒だった』と。



 ◆◇



 事の発端ほったんは高槻さんの発言から。

 本日急遽泊まることが決まった進藤さんに、『下着以外なら貸しますよ』と言ったところから始まった。



 確かに比べてみれば、魅力的なパーツを持つ高槻さんに対して、進藤さんはどちらかというと控えめなタイプ。

 コンプレックスを抱いていたのであろう進藤さんは「貧乳に人権がないわけ?」と反論したのだが、高槻さんは現在お酒に酔っていて脳内がお花畑モードの最強状態。 圧の込められた言葉にも、「大丈夫、まだまだ成長しますよー」と余裕の笑みで返す。



「は?」

「んんー? どうしましたぁー?」



 お互いにバチバチしているわけではないのだが、これこそが女の戦い。

 これから激化していくことを察した石井さんは速やかに愛ちゃんたちをお風呂へと誘導。 あまり巻き込まれたくないのか、リビングに戻ってくるなりオレの隣に腰掛けた。



「石井さん、これって大丈夫……だよね?」


「わ、分からない。 今の話題に関しては、私は入らない方がいいと思うから……」



 石井さんは身を隠すように体勢を低くとる。



 あ、確かにな。

 このサイズの話に至っては、石井さんが加われば火の粉が飛んでくるのは必至だ。

 だって石井さんも高校生というカテゴリーの中では大きい方……進藤さんのコンプレックスを、より最大化させてしまうであろう。



 それにしても……うん、本当に大きい。



 オレが心の中で納得していると、石井さんがオレを見つめながら、不思議そうな顔で「加藤くん?」と首を傾げていることに気づく。



「あ、ええ!? どうしたの石井さん」


「ううん、ただ……勘違いだと思うんだけど、加藤くん、私のここ、ジッと見てたような気がしたから」


「そこを!? いや、いやいやいやいや!! 見てないよ!!」


「だ、だよね。 ごめんね加藤くん、変なこと言っちゃって」



 そうは言いつつも、石井さんは少し恥ずかしかったのか片腕で胸部を隠す。

 かく言うオレも、なんだかんだで事実だったため、出来る限りそこへ視線を向けないよう、必死に目線に言い聞かせた。



 でもさ、近くでプルンしてたら……いくら服を着てるとはいえ見ちゃうよな。



 オレと石井さんが違う理由で顔を赤らめている間にも、高槻さん進藤さん間の話は更なるステージへ。 進藤さんの「胸以外にも魅力があれば良くない?」という発言から、男は女のどこに魅力を感じるのかについて討論していた。



「たとえばどこですかー?」


「そ、そんなの決まってんじゃん! お尻とか……」


「あー、好きな男性多いですよねー。 私、結構柔らかくて学生の時は同性の友達によく揉まれてましたー。 進藤さんのお尻は……うん、小ぶりで可愛いですねー」


「ーー……っ!!」



 高槻さんの華麗なカウンターにより進藤さんは一瞬で撃沈。

 新たな魅力的であろう部位を探し出し、高槻さんと自身のそれを比べていく。



鎖骨さこつとか……!」

「それって胸元が空いた衣装の時に感じるものですよねー。 私はその下にある膨らみ込みで魅力に感じるものだと思いますよー」


「じゃ、じゃあうなじ……!」

「そこは大した違い、ないと思いますよー」


「太もも!!」

「いいですねー。 でもそれも男性によりませんか? ムチっとしたのが好みなのか、細くて華奢きゃしゃなのが好みなのか。 だから胸も同じように好みがあるので、あまり気にしないでいいと思いますよー」


 

 進藤さんはあまり口で負けたことがなかったのだろう。

 高槻さんに言いくるめられる度に進藤さんの顔は徐々に赤く……声も大きくなっていく。 



 いつものクールさが完全になくなっている。

 これは流石に高槻さん有利か?



 オレは勝手に進藤さんの負けを予想。

 この感じならこれ以上のバトルはおそらくないだろう。 そう思っていたのだが、進藤さんはこの場だけでも勝ちたかったのだろうな。 最後にとんでもない発言を投下……それに高槻さんも乗っかってしまい、とんでもない事態へと発展したのだった。



「じゃ、じゃあこうしよう! ちょうどここには加藤がいることだし、魅力的な部分が多かった方の勝ち。 どう!?」


「いいですねー。 じゃあよく見えるように、お洋服脱いじゃいますかー?」



「「「え」」」



お読みいただきましてありがとうございます!!

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