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85 金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり①


 八十五話  金髪クール系ヤンキー女子・進藤ゆりかとの関わり①



 まさかの、オレの腹痛は食中毒。

 消化のいい栄養ドリンクなどを勧められたため、病院帰りにスーパーでゼリー飲料等を買い込んでタクシー乗り場へと向かっていると、ここで驚きの出来事が起きた。



「あれ、加藤?」


「え」



 今日は平日。 オレを知る人物がいるはずがないのだが、振り返ってみるとそこにいたのはヤンキー女子・金髪クールな進藤さん。


 制服姿ってことは、学校をサボってるのか?


 進藤さんはオレだと分かるなり近寄ってきて、「てかなんで加藤ここにいんの?」と尋ねてきた。



「いや、実はお腹が痛くて」


「っていうズル休み?」


「ち、違うよ。 カン……なんとかっていう食中毒になっちゃったんだ」



 一瞬カチンときてしまったが、ヤンキー相手にオレが強気でツッコミを入れられるはずがない。

 オレは証拠と言わんばかりに病院で処方してもらった薬を進藤さんに見せた。



「えー、なんかガチじゃん」


「そ、そりゃあそうだよ。 痛み止めの薬が効くまでは、歩くことすらも苦痛だったんだから」



 薬の入った袋を見て、進藤さんは「お腹痛いのキツいよな、分かるわ」と納得。 その後解放してくれると思っていたオレだったのだが、まさかの発言が進藤さんの口から飛び出したのだった。



「てかさ加藤、今って家に家族いんの?」



 ん、どうしてそんな話になるんだ?



「いや、うち両親は海外に行ってるからいないんだよね」


「そうなんだ。 じゃあさ、ここ暑いから涼しくなるまで家に入れてよ」


「え」


「なんか代わりにしてほしいことあったら、家事くらいならやったげるし」


「ーー……え?」



 突然のお願い事にオレが脳を固まらせていると、進藤さんはオレの持っていた結構重めな買い物袋を無理矢理奪い取る。



「し、進藤さん!?」


「体調悪いんだったらこれキツいっしょ。 持ったげるし」


「あ、ありがとう」



 こういうとき、女の子に耐性がないとすぐに信用してしまうのが男の辛いさがだよな。

 思ってもみなかった優しさに触れたオレは、嬉しさのあまり半泣きになりながら「ありがとう」と伝える。



「は? 何泣いてんの? 痛み止めの効果切れた?」


「違う……嬉じぐで」


「あー、あるよね。 病んでる時に急に優しくされたら心に響くやつ。 私も経験あるわ。 てか家どっち?」


「タグジーで帰る……から、いいよ、進藤さんも一緒に。 なんか訳ありっぽいし」


「まじ? ラッキー、喉乾いて死にそうだったんだよねー」



 こうしてオレは進藤さんとともにタクシーに乗って家へと帰宅。 

 最初こそお茶を飲み、エアコンの前で涼んでいた進藤さんだったのだが、ここでオレは進藤さんの驚きの動きを目にすることとなる。



「とりあえずこのゼリー、半分は常温で置いとくよ。 冷たいのが一気に入ると、胃がびっくりするから」


「え」


「あと薬、昼の食後に飲むやつあるから忘れんな? てか食欲はあんの? おかゆくらいなら作れるけど」


「え」


「他にしてほしいことあったら言って。 動くし」


「ええええええ!?!?」



 なんという女子力。 これは……能力面だけ見てみれば、石井さんを軽く凌駕りょうがするのではないだろうか。



 オレが信じられないような表情で目を見開いていると、それに気づいた進藤さんが「どした? 私の顔、なんか付いてる?」とクールな視線を保ったまま近づいてくる。



「え、あ……いや」


「あ、顔が違うのは大目に見て。 メイク道具で持ってんのフィニッシングパウダーだけで、ほとんど汗で流れたから」



 進藤さんが若干気まずそうに目線を逸らしながら、自身の頬を軽く指の腹で撫でる。



「フィ……フィニッシングパウダー?」


「メイク終わった上にパフるやつ。 てかそれ知らないの流石にやべーぞ? 七歳の従姉妹でも知ってんのに」


「ーー……すいやせん」



 言えない。

 進藤さんがただのヤンキーで、女子力皆無だと思ってたなんて口が裂けても言えない。



 オレはなんとか笑って誤魔化すことに成功。

 その後はなんともありがたいことに、オレはただ安静に寝てるだけ。 掃除等の家事全般は、全て進藤さんがしてくれていたのだった。



「何から何まで、ありがとう進藤さん」



 テーブル前でスマートフォンを弄っていた進藤さんに声をかけると、進藤さんはゆっくりとオレに視線を移してくる。



「何また感謝? そんなに私がここまですんの、意外?」


「う、うん。 最近まであまりちゃんと絡んでなかったし。 まさか進藤さんがこんなにも面倒見が良くて……家庭力あったなんて」



 オレがそう褒めると、進藤さんは一切嬉しそうな表情を見せることもなく、「まぁね。 中学一年までは身体の弱かった姉の看病とかよくしてたかんねー」と呟きながら息を吐く。



「そうなんだ。 それでもありがとう」


「んだよ、用がないなら寝てろ」



 進藤さんは全く圧の感じられない舌打ちをして視線を再びスマートフォンへ。

 オレはそんな進藤さんの姿を、眠気がくるまでジッと眺めていたのだった。



 それにしても……姉、いたんだな。



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