80 悪魔を狩る者⑧
八十話 悪魔を狩る者⑧
あれから時間は経って、終わりのホームルーム。
担任の話が終わると同時にヤンキー女子の一人・金髪クールの進藤さんが早足で教室を出ていく。 それを見たメリッサは『よーし!! レッツ悪魔狩りーー!!』と勢いよく飛んでいき、すぐにオレもその後を追った。
快感のよだれ……もうすぐ見られるのか。 ドキドキしてきたぜ。
◆◇
教室を出ると、すぐにオレは進藤さんを発見する。
オレと目が合うなり、メリッサは『そんじゃ、始めるよーん!』と進藤さんの下腹部あたりに二本の指を軽く押し込んだ。
「ーー……!!」
オレの視界からは進藤さんの後ろ姿しか見えていないが、メリッサの指が触れたであろうタイミングで進藤さんの体がビクンと反応。 若干内股になって立ち止まり、驚いた表情で周囲を見渡し始める。
おぉ……こんなにも敏感に反応するものなのか。
めちゃくちゃエロいぜ。
「誰……? 気のせい……?」
周囲に自分に触れたであろう相手が誰もいないことで、進藤さんは首を傾げながらも視線を自身の下腹部あたりへ。
しかし続々と教室から出てくるクラスメイトたちの姿を見て、進藤さんはすぐに歩みを再開させる。
『ちょっ……! えぇ!? なんでその状態で歩けるの!? もしかして快感状態で歩く経験者とか!?』
快感状態で歩く経験者とは!!!
進藤さんが歩き出したため、メリッサもそれに並走するような形で何度も進藤さんの下腹部に指を押し込み当てていく。
『ていっ! とりゃー! えぇ、なんでー!? ていうかヨッシー、そんなところで立ち止まってないで早くこっちきてよー!』
「ぐぬぬ」
もちろんオレも【快感のよだれ】がかなり気になっていたため追いかけたかったのだが、あんな進藤さんの内股姿や先ほどメリッサの発言『快感状態で歩く経験者』等で下半身が色々と大変なことになってしまいそれが出来ず。
『ヨッシー!?』
「ーー……」
『ーー……あ、あー。 そういうこと。 うふふん、ヨッシーもエッチだねぇ』
何かを察したメリッサはオレにウインクを送る。
その後大きく肩を回して気合を入れ、『よーく見ててねヨッシー!』と声を上げながら進藤さんの前に回り込んだ。
『今からちょっと本気出しちゃうよ! この子が快感に溺れるところ、絶対に見逃さないでね! 霊力をもっと込めた一撃……そいやぁー!!!』
気合を入れたメリッサの指先が再び進藤さんの腹部に触れる。 するとメリッサの会心の一撃が効いたのか、進藤さんは身体を捩りながら近くの壁にもたれかかった。
「んんっ……!」
『おやおや、脚に力が入らないみたいだねぇ』
好機だとみたメリッサはニヤリと口角をあげる。
足を若干震えさせている進藤さんを前に、メリッサはトドメと言わんばかりに彼女の腹部への連打を開始させた。
『ほらー!! 力入れないで快感に身を任せてー!! そしたらすぐに楽になるよーー!!』
「!?!?!?!?」
『はーい!! トントントントントン!!!』
「んんっ……く、ンンンン!!!」
おお……おおおおお!!!!
なんと繊細で……かつ細かい連打なんだ。
まるでゲーム中のAボタンを高速連打しているような動き。 進藤さんの息遣いが徐々に荒くなっていくのが分かる。
「んあっ……、な……に、これ!! くっ!!!」
『なかなかやるねー!! でも負けないよー!! サキュバスの意地ー!!!』
それから数秒間はメリッサと進藤さんの一進一退の攻防戦が繰り広げられていたのだが、やはり快感の前では人は無力。 進藤さんの体が大きく跳ね上がったかと思うと、それとほぼ同じタイミング。 進藤さんの下半身辺りから、スマートフォンサイズの小さな悪魔が勢いよく飛び出してきた。
ーー……!!
あれが赤ちゃん状態の悪魔か!!
『でたーー!!! さーて、私のご褒美のためにやられちゃってねー!!!』
そういや昨日初めてメリッサと会った時も思っていたのだが、あの大鎌、重くはないのだろうか。
メリッサは自身の身長くらいはある大鎌を器用に使いこなし、飛び出してきた悪魔を素早くカット。 細切れになった悪魔はそのまま灰となって消滅した。
「す、すげえ」
驚いているオレをよそに、メリッサは『ねねヨッシー、今の見てたー!?』と嬉しそうにピースサイン。
もう悪魔の憑いていない進藤さんには興味がなくなったのか進藤さんのもとから離れ、早く次の相手を探しに行こうよとオレに近寄り催促をしてくる。
「あー、そうだな。 ていうか、オレ別にいらなくないか?」
『何言ってんのー? 確かにヨッシーは何も出来ないけど、一人で悪魔狩りしてるのつまんないもんー。 だから、私の勇姿をヨッシーには見届けてほしいんだよねー。 それにこの建物の中、複雑すぎて迷っちゃいそうだし』
「ーー……なんだよそれ」
そうはツッコんでみるものの、必要とされるのなら悪い気はしない。
それからオレたちは校舎内をグルっと一周。 基本的に一人で行動している人限定で、体内に潜む悪魔狩りを続けたのだった。
「そういやさ、悪魔が憑いてるの、ほとんどが女子だったけど……何か関係あんのか?」
『んーどうだろ。 ただ単に難しいお年頃だからじゃないのー?』
「そういうもんか?」
『分かんないよー。 だって私、人間じゃないもん』
「確かに」
一周し終えると、オレがそろそろ帰りたいということもあってその日の学校での悪魔狩りはこれにて終了。
愛ちゃんとマリアに今から帰るよメールを送り、再び騒がしい浮遊霊たちとともに帰路に着く。
『メリッサちゃん……本当に今夜……』
『んふふー。 それはキミたち次第かなー。 あーあ、悪魔を見つけるの、手伝ってほしいなー』
『『『詳しく教えてください!!!』』』
オレの後方ではメリッサと欲にまみれた浮遊霊たちが大盛り上がり。
しかしオレはその会話に入ることはなく、早く家に帰って色々と発散……スッキリしたいということだけが頭を駆け巡っていた。
まさかこの一日で、何人もの快感の姿を拝めることが出来たなんて。
オレには少しだけ刺激が強すぎたようだ。
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