61 海旅行は波乱万丈!?⑤
六十一話 海旅行は波乱万丈!?⑤
ヤンキー女子の中で、一番愛ちゃんたちにウケが良かったのは黒沢さん。
石井さんとオレが佐々木さんから先ほどの詳細を聞いている間、進藤さんと二人でいい感じにこちらの話が聞かれないよう相手をしてくれていた。
「へー、奈々ちゃんってヤンキーじゃないんだ!!」
「そーだよー。 ウチがこうなったのは、ゆりかたち……そこの金髪たちと友達になったからちょっと影響受けただけなんだよねー」
黒沢さんが「ねー、ゆりか」と少し前まで入院していたとは思えない笑顔で進藤さんに話を振る。
「まぁ……そうだね。 最初は奈々、結構大人しかったもんね。 ていうか……キミはどうしたの? さっきからジッと私を見て」
そう言いながら進藤さんがたまらずツッコミを入れたのはマリア。
マリアは先ほどから進藤さんを無言で見つめていたのだが、オレが会話に割って入るのも野暮だからな……やっと突っ込んでくれてスッキリしたぜ。
「マリア? マリアはマリア」
マリア……相変わらずすげぇやつだな。
こんな派手な髪をしてる人を間近で見つめるなんて、そうそう出来るもんじゃないぞ。
オレが静かに感心していると、進藤さんが「私の顔に何かついてんの?」とマリアに対抗するかのように顔を近づけながらマリアに尋ねた。
「ううん、その髪の色、綺麗」
「髪かよ。 あのねマリア、そういう時は髪と一緒に顔……容姿も褒めるもんなの。 覚えといた方がいいよ」
「それがギャルのルール?」
「違う、女のルール」
「分かった。 マリア、いい女になりたいから覚えておく」
なんというかあれだな。
愛ちゃんと黒沢さんは感情豊かに話していて、逆に進藤さんとマリアはほぼ無表情の中での会話……あまりにも対局的すぎるだろ。
オレが佐々木さんの話を聞きながらもそっちの方へと興味を移していると、目の前から「おいちゃんと聞け」と佐々木さんから頭部へチョップが飛んできた。
「え、ああ……ごめん。 なんか意外で」
「意外? 何が?」
「黒沢さんはまぁ百歩譲って分かるけどさ、進藤さん、結構ちっちゃい子の相手するの上手いんだなーって」
「あー、確かにね。 てかゆりかって親戚にこの子たちくらいの女の子いたよね」
思い出したように佐々木さんが進藤さんに話を振ると、進藤さんが「何が?」と聞き返してくる。
「だから、ゆりかって親戚にそこの愛ちゃんやマリアちゃんくらいの女の子いなかったっけ」
「あー、いるよ。 同じ市じゃないけど」
「だよね! 加藤がゆりかのこと褒めてたよー。 ちびっ子の扱い上手いねーって」
「まぁ懐かれても困りものだけどね。 親戚の子、私に懐きすぎて『将来はギャルになる!』って親の前で宣言してたし」
「そうなん?」
「そ。 美咲っていう、うるさいのがいるんだけど……マジでそれ宣言された時は私の親が向こうの親に謝ってたわ。 確か今が小二だから……マリアたちの一個下か」
「!!!」
進藤さんの発言にオレはすぐに反応。
視線を高速で愛ちゃんマリアへと向けた。
「ん? どうしたのお兄ちゃん」
「良樹、なに?」
愛ちゃんマリアが揃ってオレに顔を向けながら首をかしげる。
「いや、ごめん……なんでもない」
二人の様子を見る限り、進藤さんのようなギャル……ギャルJKになりたそうな感じは今のところ見受けられない。
助かった。
子供って年上のいろんなところを見て育つって言うし、ギャルみたいなあまり教育上よろしくないものは目に入れないようにしないと。
オレは愛ちゃんやマリアに話を中断させてしまったことを謝まった後、石井さんとともに改めて佐々木さんからあの大学生グループとヤンキー男子たちとの間に何があったのかを聞くことにした。
「まぁ話も脱線したしざっくり説明すると、あの大学生……アタシらと一緒に遊んでた男子たちがイキって喧嘩売って、あっさり返り討ちにしたって話よ」
「「え」」
「それで一緒にいたアタシらにも怒りの矛先が向いて、このままじゃ気が収まらないから誰か自分らの相手をしろ……嫌ならアタシらにも彼氏がいるはずだから、そいつを今すぐここに呼べって」
「ーー……で、オレが呼ばれたと」
「そういうこと。 最初は倒れてる男子の中から誰かを選ぼうとしたんだけど、加藤って実は喧嘩強いって噂がアタシら三人の中であったからさ。 ワンチャンスいけんじゃねって」
佐々木さんの話を聞いて、石井さんが「そうなの加藤くん!?」とかなり驚いた様子でオレを見てくる。
「いやいや、そんなことないから。 現にほら、あまり大きな声では言えないけどオレ、殴られたわけだし」
「そ、そっか……。 そうだよね、加藤くんがそんな荒々しい性格してたのかなって驚いちゃった」
話が終わった頃には愛ちゃんやマリアはヤンキー女子たちとも打ち解けた様子で全員が笑顔に。
喫茶店前で解散する際、黒沢さんに至っては「ねぇ、加藤の妹たち可愛すぎない?」と聞いてくるほど、愛ちゃんたちにメロメロになっていた。
「んじゃ、アタシら少し離れたところのビジネスホテルだから、じゃーねー」
ヤンキー女子三人は海の家近くに設置されていた簡易シャワーを浴びに砂浜の方へ。
時間を確認してみると午後六時を既に回っていたため、オレたちも各自独特の空腹の音を鳴らしながら旅館へと戻ったのだった。
◆◇
夕食は豪華な海鮮料理。
愛ちゃんと石井さんが盛り上がりながら写真を撮っているのを対面から見ていると、隣に座っていたマリアが静かにオレの服の袖を引っ張り見上げてきた。
「ん、どうしたマリア」
「良樹、多分大丈夫だとは思うけど、夜にあそこの海、近づかない方がいい」
マリアが愛ちゃんたちには聞こえないくらいの声量で、窓の向こうを指差す。
「え? なんかヤバそうなのいたか? オレには低級霊がほとんどで……たまに中級と悪霊が混ざってたくらいだったけど」
「分からない。 でもここに戻る時、海の方から変な気配を感じた。 昼には感じなかったもの……マリア、ちょっと怖い」
小さく可愛いマリアの手が細かく震えている。
悪魔や霊を相手にしてきて、あのヤンキー女子たちにもまったく怯まなかったマリアが怖がるなんてな。 やはりあれか、夜の海っていうシチュエーションも相まってのことなのだろうか。
オレは「心配すんな」と陽気に答えながらマリアの頭を優しく撫でる。
「そう?」
「そう。 だってマリアは悪魔特効の力を持ってるし、オレは悪霊クラスまでなら倒せるんだぞ? 二人揃えばもう怖いものない……いざとなれば、前みたいにマリアがオレの霊力を使ってフルパワーで力を発揮すればいいんだしさ」
「確かに。 それは、そう」
オレの言葉で少しは安心したのか、マリアはそっと手を離す。
「よし、じゃあマリアもお腹空いたよな。 食べるか」
「うん、マリアお腹空いた。 ゆづき、写真はその辺にする。 温かい料理が冷める」
それからオレたちは、果てしない量の高級そうで新鮮な海の幸満載の料理を楽しんだのだった。
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