59 海旅行は波乱万丈!?③
五十九話 海旅行は波乱万丈!?③
海に来たらみんなは何をする?
素直に海に入って泳ぐか、足首が海水に浸かる程度のところで水遊びをするか、それとも砂浜でビーチバレーや砂のお城を作って遊ぶのか。
今まで友達という存在すらいなかったオレは石井さんや愛ちゃんに誘われるがままに遊んでいたのだが、やはり体を動かすというのは酷なもの……普段そこまで運動等をしてこなかったオレは遊び始めて早々に体力が底をつき、休憩がてら全員分の飲み物を買いに海の家へと向かっていた。
「てか石井さんすげぇな。 少し前までオレ以上のインキャ属性だったのに、なんであんなに体力あるんだよ」
無事海の家に到着したオレは、すぐにまた太陽の下へと出る気力が湧かずにそこでしばらく体力を回復させることに。
案内されたテーブルで一人優雅にかき氷を食べながらスマートフォンを弄っていると、「あれ、加藤?」とどこかで聞き覚えのある声が隣から聞こえてきた。
「ん?」
振り向き確認すると、オレの脳が状況を理解できずに緊急停止する。
どうしてここにいるんだ……隣のテーブルにいたのはヤンキー女子三人組。 金髪クールな進藤さんと、赤茶ボブの陽気な佐々木さん、そして最近退院した黒沢さんが各々セクシーな水着姿で座っていた。
「え、なんで……」
突然のことに言葉を出せず、開いた口が塞がらないオレ。
そんなオレのことなど気にも止めずに、陽キャ佐々木さんは「てか加藤、どうしているの?」とかなり親しげな口調で尋ねてくる。
「それは……友達と遊びに」
「へー、加藤友達いたんだ! だれ!?」
「ん、あ、いやえっと……」
ここで素直に『石井さん』と答えてしまっては、そこから変な噂が流れかねない。
オレは佐々木さんからの質問をあえてスルーして「佐々木さんたちこそどうしてここに?」と逆に質問を試みる。 するとオレが尋ねたのは佐々木さんだったのだが……何故か金髪クールの進藤さんが代わりにオレの問いに答えた。
「そんなの海に来たからじゃん。 他にある?」
はい、会話のキャッチボール終了!!
元から得意じゃないオレはそんなボールキャッチできません!!
オレがクール進藤さんに言葉を返せないでいると、進藤さんはオレに追撃を開始。「ていうかさっきからアタシらの水着見過ぎじゃない? 流石にキモいんだけど」と不快感マックスな表情でオレを睨みつけてくる。
「すみません」
「認めんだね。 きしょ」
「ーー……」
進藤ゆりか……掴めない女だ。 一番苦手なタイプだぜ。
もうあれだ。 まだ体力は皆無の状態だけど、ここにいる方がオレのとってはよっぽど地獄……早々に席を外して進藤さんたちから離れるしかない。
オレはゆっくり立ち上がろうとしたのだが、ここでまさかの陽キャ佐々木さんがオレを援護。
「いやいやゆりか、なんでそうなるわけ? てか絶対にゆりかの水着は見てないから」と急に進藤さんにツッコミを入れた。
「さ、佐々木……さん?」
「ほら、加藤からも言ってやりな。 それは違うよって」
「え?」
「だって加藤も思ってるっしょ? 私や奈々は見ての通りだけど、ゆりかのは……ねぇ」
「ーー……ゴクリ」
佐々木さんの言葉の意味、もちろん分かるぞ。
最初からあまり見ないようにはしていたのだが、そう言われてしまうと視線が勝手に目の前にいる三人の魅惑のエリアへ。
陽キャ佐々木さん、退院した黒沢さん、金髪クール進藤さんの順に、流れるように視線を移していく。
大きい……、大きい……、ヘリポート。
なんという落差。 ここまで明らかな差があると、男のオレからしても同情するぞ。
進藤さんのそこへ視線がいったと同時にオレは全てを理解。
もちろん声には出さずに心の中で「あー」と納得していたのだが、オレの気持ちが顔に出ていたのだろうか……進藤さんがかなり不機嫌そうにオレを睨みつけてきた。
「なに加藤。 言いたいことでもあんの?」
進藤さんが手を胸に当てながらチッと舌打ちを鳴らす。
「え」
「今アタシのココ見て『あ』って顔したよね? いいよ、言いたいことあんなら言いなよ」
「い、いや特に何も」
「ったく、どいつもこいつも……。 じゃあお前は立派なモノ持ってんのかって」
進藤さんがそう小さく呟くと、言葉ってのは本当にすげぇな。 先ほどまでオレ側について進藤さんを弄っていた佐々木さんや黒沢さんも、今の進藤さんの一言で一気に掌返し。
やはり異性の体への興味に勝るものなどないのか、二人ともニヤリと笑いながらオレの某所へと視線を向けてきた。
「確かに、これはゆりかの言う通りですなー」
「うんうん。 てか今更だけど不公平な話だよね。 女のウチらはこうして大きさを強調する水着を着るけどさ、男ってその部分を少しも見せない……逆に全部隠す方が正義って風潮だもんね」
え。
佐々木さん黒沢さんが手をワキワキさせながらオレに近づいてくる。
「さ、佐々木……さん、黒沢さん?」
「とりあえず加藤、観念しなー。 一瞬見せてくれるだけでいいからさー」
「そうそう。 もしそれで加藤のがおっきくて立派だったら、ゆりかが悪かったってことで話は終わりにしよーよ」
「ええ……ええええええ!?!?」
進藤さんはそこまで興味がないのか、佐々木さんたちに「早くしてよ」とだけ伝えてスマートフォンを弄り出す。
そして佐々木さんたちがしゃがみ込みオレの水着に伸ばしたその時、佐々木さん黒沢さんは同時に「え」と声を漏らした。
「ねぇ奈々、これ……」
「うん。 ウチらまだ何もしてないのに勃っ……」
「「アハハハハハハ!!!!」」
二人は顔を見合わせたと同時に大爆笑。
それもそのはず、前のめりになりながら二人が近づいてきたことで、オレの視界は二人の魅惑の谷間を完全に捕捉。 思春期男子がそんなもの見てしまっては、興奮するのも仕方ない……そして今のオレの水着は若干ピチピチなブーメラン!! サポーターなんぞ付けていないため、恥ずかしくもクッキリ形が浮かび上がっているのだ!!!
「ちょっとうるさい二人とも。 どーしたわけ?」
「あははは!!! ゆ、ゆりか見てよこれ!!」
「普通のがどんなのか分かんないし平均がどのくらいかは分かんないけど、これはゆりかの負けだわー!!」
「は? それどういう……っておい、加藤」
進藤さんが視線を向けようとした時にはもう遅い。
オレは隙をついてその場から逃走。 少し離れた自販機でジュースを数本購入し、ヤンキー女子に見つからないよう遠回りして石井さんや愛ちゃん、マリアの遊んでいた場所まで戻ったのだった。
「お兄ちゃんおかえりー。 あ、ジュースだ! 買ってきてくれたの!?」
「あ、あははは。 全員分あるから飲んでいいよ」
「良樹、さすが気が利く。 しかもマリアの好きなナタデココを選んでるあたり、完璧」
「そりゃーよかった」
「ありがとう加藤くん……ってあれ、どうしたの? なんか少し前よりももっと疲れて見えるよ?」
「気のせいだよ気のせい」
ーー……疲れてもそのままここで遊んでおけばよかった。
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