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53 心


 五十三話  心



 これは……何がどうなっているんだ?

 


 確か少し前まで、オレは御白と愛ちゃんの今後について話し合っていたはずだ。

 それで自分の不甲斐なさに絶望してその場で呆けてしまって、その後そのままそこで寝落ちでもしたんだろうが……



「えっと……愛ちゃんに、マリア、だよな?」



 ふと目を覚ましたオレの隣には、いつもと違う雰囲気をまとった愛ちゃんとマリア。

 愛ちゃんはツリ目気味になり高圧的に……そしてマリアはそこまで主張のない女の部分をオレの腕に押し当てていた。


 

「えー、お兄ちゃん何言ってるの? あはは、とうとう脳みそまでチェリーに……大人になるのを諦めちゃったのかなぁ」


「なっ……!! 愛ちゃんどうしたの!!」


「どうしたのって……プークスクス!! 一日前のことも忘れちゃったわけー!? 私、龍神ちゃんから【メスガキ】の力を貰ったじゃんー!!」


「メ、メスガキ!?」



 愛ちゃんが悪戯に笑いながら「お兄ちゃんしっかりしなきゃー」とオレの口に自身の人差し指を突っ込む。



「ふごっ!? にゃ、にゃにやって……!」


「物忘れの酷いお兄ちゃんは、私の爪の垢でも舐めていい子になりまちょーねー」


「ふぇ、ふぇえ!?」


「あははは!! いまお兄ちゃん吸ったでしょ、吸ったよね!? 本当に吸っちゃうなんて、どんだけ欲求不満なのー!?!?」



 あ、あああああ愛ちゃん!?!?!?



 オレはあまりの愛ちゃんの変貌ぶりに我が目を疑う。

 確かにオレは数時間前に愛ちゃんの裏の部分をどうやって引き出そうか……とは考えてはいたが、まさかこんな性格を隠し持っていたなんて!!



 ーー……とはいえ、まぁ、悪くはない。



 愛ちゃんの人差し指を堪能しながら必死に脳を落ち着かせていると、今度はマリアのターン。

 マリアはオレと目が合うや否や、妖艶に笑いながら全人類の男が一番触ってほしい部分を、その小さな手で押し当ててきた。



「良樹……熱い。 マリアもお腹の下、熱くなってきた」


「マ、マリアまで……どうしたんだ!!」


「もしかして良樹、マリアのことも忘れた? マリアは龍神から【サキュバス】の力を貰った」


「サ、サキュバス!?」


「そう。 だから、マリアとってもエチチな気分」


「はああああ!?!? ていうかエチチな気分って、どこでそんな単語を学んだんだ……って、んん? 」



 改めて二人の姿を観察してみると、二人ともが普段絶対に着ないような衣装を身につけていることに気づく。

 例えば愛ちゃんはピチピチの白Tシャツに紺色ジーンズ生地の短パンで、マリアは胸元が大きく開いた黒光りしているレザー製の衣装……二人ともかなりエロい。



「あははは!! お兄ちゃん見過ぎいー!! 小学生に欲情するとか男として終了だねー!」



 オレが生唾を飲み込んだと同時。 オレの熱い視線に気づいた愛ちゃんがアハハと笑いながら口内に突っ込んでいた指を引き抜き、その濡れた指先をオレの頬で拭う。



「見てよお兄ちゃん、お兄ちゃんが舐めすぎて私の指がシワシワ。 あ、でもしょうがないよね、お兄ちゃん、赤ちゃんになっちゃったんだから」


「ぐっ……!」


「なんでちゅかー? なにも言い返せない感じでちゅかー? バブバブ言っていいんでちゅよー?」


「バブって……! ちょ、ちょっとマリア! さっきからずっと触ってないで、愛ちゃんをどうにかしてくれ!」



 マリアとの言葉プロレスは慣れているが、愛ちゃんにはどうしても強く言うことが出来ない。

 オレはほぼ可能性がないことを知っていながらもマリアに助けを求める。 しかしマリアはオレの方を見るなり、なんとも言えないセクシーなため息をついた。



「マ、マリア?」


「良樹、マリア……もうトロトロ。 どうすればいい?」



 トロトロ……だと。

 オレの脳内では以前より蓄えられてきた数多のエロ漫画での知識・シーンが数多く浮かび上がってくる。



「良樹……」


「ちょっと待ってくれ、本当に意味が分からない!! 二人は何で……って、ハッ!!!」



 ここでオレはとあることに気づく。

 


 偶然にもオレは窓の外へと視線を向けたのだが、窓の向こうに浮遊霊たちの姿が見えない。 普通、こういうイレギュラー……というか、面白そうなことが起きた場合は必ず浮遊霊たちは窓の向こうからこっちの様子を眺めて楽しんでいるはずなのに。



 こんな状況になっていても浮遊霊たちがいないということはつまり……



 断言できる。 そう、これは夢だ。



 マリアの僅かな膨らみや温かな体温は何故か感じ取れてはいるが、それはオレがかなり疲れているからに違いない。

 となれば、今からオレはやるべきことは……



 ふへへ。


 

 オレがゆっくりと視線を二人に戻すと、早速メスガキ愛ちゃんが「ていうかそのおっきくしてるの恥ずかしくないの? ねぇねぇ」とつま先でオレの元気な某所をツンツンと突いてくる。

 そしてマリアはオレの太ももの上にまたがり、今度は別の箇所を擦り出した。



「愛ちゃん、マリア……」



「ねぇねぇ、気持ちいいの? こんな姿をお兄ちゃんのパパやママが見たらどう思うかな? ね、マリアちゃん」

「良樹。 マリア、ここ、溢れて止まらない……っ! せん、してほしい」



 こんな夢を見てしまうなんて、どれだけオレは欲求を溜め込んでいたんだ。


 冷静に考えたら愛ちゃんが龍神から受け取った力は【陰陽】と【龍】の力であって、決して【メスガキ】といったユニークなものではない。 それにマリアに関しては何も力を貰っていなかったはずだ。

 というよりも、そもそも現実ではこんなこと起きるわけがないし、愛ちゃんもマリアもあんな服を持っていなかったじゃないか。

 本来ならここでオレがするべきは必死に目を閉じて夢から覚めるのを必死に待つことなのだろうが……



 いな!! そんなの勿体ない……今は夢!! 何をやってもビバ合法なのだ!!

 だったらもう全ての欲求を曝け出して、いざ男の『夢』を満喫してやろうじゃねえかああああああ!!!



 オレは理性とともに、身につけていた衣服を全て解放パージ

 ありのままの自分になると、愛ちゃんマリアに満面の笑みで抱きついた。



「お兄ちゃん!?」

「よ、良樹?」


「マリアああああああ!!! 栓をしてほしい場所はどこだ、オレに任せろおおおおお!!!! そして愛ちゃん!! この際だから言わせてもらう……短パンに顔をうずめさせて香りを嗅がせてえええええええ!!!!!」



 愛ちゃんの本性をさらけ出す以前に、自分を抑えていたのはオレも一緒だったのかもしれないな。 洗濯物を干している時も、できるだけ愛ちゃんたちのパンツを見ないようにしていたし。

 ということはあれだ。【人に名を聞く時はまず自分から名乗る】のと同じように、【人の本性をさらけ出してほしいのならまず自分からさらけ出す】ことこそが一番重要なのではないか?



 ではまずは、このちょうどいい夢の中で練習するとしようか。


 

 そこからオレは本性というよりも、思春期の男子全員が持っているであろうエロ魂を全解放。 

 夢から覚めるまでの間、もはや言葉では説明が出来ず、現実では許されない行動を謳歌し、愛ちゃんやマリアの生々しい声や反応を楽しんだのであった。 



「あーー!!! くんかくんか最高!! もっと……もっと鼻を押し当てて、もっと、もっとおおお……



「ーー……いちゃん、お兄ちゃん!」



 ん、なんだ? まだまだ物足りないのに急に視界が暗くなって……



「お兄ちゃん!」


「ハッ!」



 目を開けると既に外は明るくなっており、オレはテーブル横の床の上で横になっている。

 そしてそんなオレを、パジャマ姿の愛ちゃんとマリアが心配そうにしゃがみ込んで覗き込んでいた。



「あれ、オレ寝てて……、起こしてくれたの?」



 重たいまぶたを擦りながら起き上がると、愛ちゃんが「そうだよ。 お兄ちゃん、うなされてたから」と小さく頷く。



「そうだったんだ」


「何か怖い夢、見たの?」


「んーー、なんだったかな。 あんまり思い出せないけど、別にそこまで怖い夢ではなかったような……」


「でも私とマリアちゃんの名前叫んでて……助けてほしいのかなって」



 愛ちゃんの言葉に、隣にいたマリアも頷き同意。 その後マリアの口から発せられた言葉で、オレは全てを思い出すこととなる。



「そう。 良樹、体をよじりながら、『愛ちゃんクンカクンカ、マリア受け止めろー』とか、切羽詰せっぱつまった感じで叫んでた」


「へ?」


「クンカクンカってなに? あとマリア、何を受け止める?」


「ーー……」



 ハッ!!



 そうだった。 思い出しちまったぜ……全てを。



 思い出した途端、オレは下半身に異変を感じたためすぐに体を丸める。

 するとそんなオレを見た愛ちゃんは「うわわわ、ごめんねお兄ちゃん! 怖い夢思い出せちゃったね!」と何故かそっち方面に勘違いしてオレの頭を撫で始め、マリアに至っては「今のは思い出させたマリアが悪かった」とオレの隣で横になり、後ろから優しく抱きしめてくる。



「え、えええ!? 愛ちゃん、マリア!?!?」



 今までにないこの逆転現象にオレは大混乱。

 もしかしたらまだ夢の中なのかもしれない。 そう考えて一応窓の外へと視線を向けてみたのだが……



『ギャハーハハハ!!! 見ろよ、良樹にやつ、女の子にヨシヨシされてるぜええええ!!!』

『こりゃあ傑作だあああ!! どうせアッチが熱くなっちゃったから隠してるだけだろ!!』

『うるさい聞こえるぞ!! というよりも俺も久しぶりにヨシヨシされてええええ!!!』



 ーー……うん、現実だった。



「ん、どうしたのお兄ちゃん。 今度は寂しそうな顔をして」


「ううん、なんでもない。 おかげで元気になったよ、ありがとう、愛ちゃんにマリア」



 夢じゃないなら、ずっとこうしていても何も変わらないからな。

 まずはオレのしたいことをしつつ、愛ちゃんの裏の部分も少しでもさらけ出せる環境を作っていこう。



 オレはゆっくり起き上がって大きく背伸び。

 その後愛ちゃんマリアの頭を撫でながら、優しく微笑みかけた。



「お兄ちゃん?」

「良樹?」



「よーーし!! 今日は天気もいいし、遊園地に行こう!!!」



「ええ!! 遊園地!?」

「マリア、日本の遊園地、初めて」



 こうしてオレたちはすぐに準備をして遊園地へ。

 各々の心の中に溜まったマイナスな感情を少しでもなくすため、日が暮れるまで目一杯遊び尽くしたのだった。



お読みいただきましてありがとうございます!!

励みになりますので感想や評価・レビューブクマ・いいね等、お待ちしておりますーー!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] さっそくメスガキの力とサキュバスの力がw そしてファンタジーだからって大暴れする良樹くんサイテーww
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