50 レベルアップ愛ちゃん!!②
五十話 レベルアップ愛ちゃん!!②
『あのー、それで御白さん。 今日はどう言ったご用件で……、あ!! もしかしてボクのこと、やっとここから解放してくれる気になったんですか!?』
御白がいない間のお留守番係とは聞いていたが、やはりイヤイヤだったんだな。
龍神は御白が解放してくれると本当に思い込んでいるのか、目を輝かせながら御白に『ありがとうございますー!!』と何度も頭を下げる。 しかしそんな御白の口から出たのは……龍神の理想とはかなりかけ離れたものとなっていた。
『そんなわけあるか。 龍神よ、妾がここに来たのは他でもない……お主にお願いがあってのことじゃ』
『お願い? もしかして代理の延長とか?』
『いや、お主がこの約一千年に渡って蓄え続けてきた力の一部をこの娘……愛に分けるのじゃ』
『え』
己の耳を疑ったのか、龍神は『え、なんて言いました?』と苦笑いで御白に問いかける。
『ん、なんじゃ? 妾は何か変なことでも言ったかの?』
『は、はははは。 そうですよね聞き間違いですよね。 いやはや、御白さんがボクの力をそこの女の子にあげろって言ってたように聞こえたもので』
『うむ。 そう言ったぞ』
『エ』
『だからほれ、さっさとやるのじゃ』
『エエエエエエエエ!?!?』
聞いてる分にはほとんどカツアゲだ。 龍神がどれだけの力を持っているのかは分からないが、それを渡したくない龍神は御白に必死の説得。『そんなぁ……! ボクがこれまで溜めてきたものをそんな簡単に……そりゃあないですよ!!』と涙ながらに訴える。
『考え直してくださいよ御白さん!』
『考えた結果がこれじゃ』
『いやいや、もっとボクのことを思ってくださいって!!』
『はぁ? 何を言っとるのじゃお主は』
オレも最近までヤンキー女子たちに振り回されてたからな。 龍神に同情する……申し訳なく思ってきたぜ。
流石のオレもかなり良心が痛んだため、御白にそこまでしなくてもいい旨を伝えようとしたのだが……ここで事態が一気に動いた。
『ふんっ! ならもうよいわ!! 龍神、お主が考えを変えぬのなら、妾はもうお主とは未来永劫、一切口を聞かぬ!!』
『ええ!! そんな御白さん!! それだけは勘弁してください、喜んで提供させていただきますーー!!』
「「えええええええ!?!? 」」
「ーー……マリア、脚、痒い」
まさか子供の駄々っ子的な態度で考えが変わるなんて。
どうして先ほどの御白の一言で力を提供することを了承したのかを尋ねてみると、龍神曰く『力の一つや二つでこの可愛い姿を今後も拝めることが確約されるのなら、安いものだよ!』とのこと。
ちなみに御白もあの一言でOKがもらえるとは思っていなかったらしく、目を大きく見開きながら『お主……本当に欲望に忠実じゃのう』と半ば呆れ顔でため息をついていたのだった。
『それじゃあ、早速ボクの力を継承させる【継承の儀】を執り行うとするよ』
龍神が両手を広げながら、愛ちゃんに『ほら、こっちにおいで』と誘拐犯さながらの雰囲気を纏わせて声をかける。
「えっと……みーちゃん、行っていいの?」
『うむ。 龍神は見た目こそあれじゃが、別にやましいことをされるわけではない故、何も怖くない……安心せよ』
「ほんと?」
『妾も近くで指示を出すからの。 大丈夫じゃ』
御白の言葉に背中を押された愛ちゃんが一歩、また一歩と龍神のもとへ歩み寄る。
『じゃあ愛ちゃん、目を閉じて……ボクが良いって言うまで自分の呼吸だけに集中していてね』
「うん」
愛ちゃんが静かに目を閉じる。
それを確認した龍神はオレたちに静かにしているよう、そっと人差し指を唇に当てて何の前触れもなく巨大な龍の姿に変化。 若干想像していたそれよりも、かなりふくよかな気もするが……龍神は愛ちゃんを中心にトグロを巻き、『それでは始めます』と囁いた。
◆◇
どうやら継承の儀を始めるにはしばらくの時間が必要とのことで、オレやマリアは準備が整うまでその場から少し離れ、御白からどうして龍神がそんなに力を蓄えていたのかについて教えてもらっていた。
『人は死んだら基本、輪廻転生で生まれ変わるじゃろ? 龍神はそんな彼らから輪廻転生の際に必要のない能力を貰うことが許されておるのじゃ』
「必要のない能力?」
「って、どういうのを指す?」
『うむ。 例えば霊力や知識、武術などじゃな。 生まれ変わる際は赤子から……ゼロからの再始動。 前世の知識や経験を受け継いでおったらその先色々と厄介じゃし、不公平じゃからの』
「なるほど」
マリアはこの話題に一番関心を示したのか、その後も「じゃああの龍神は退魔の力も持ってる?」やら「もしかして受け継いだ時に変態な人の考えも混ざっちゃったから、あんなに変態になった?」などと矢継ぎ早に質問を投げかける。
『ふむふむ。 退魔については当然持っておると思うぞ。 そして次の問いじゃが……残念ながらあれは龍神本人の性格じゃろうて。 仮に趣味・趣向まで受け継いでおったら、下手すれば残虐な思考まで受け継いで世界なんぞとっくに無くなっておるわ』
ちなみにそれを隣で聞いていたオレが、マリアに「じゃあマリアもあとで退魔の力を分けてくださいって頼んでみたらどうだ?」と提案してみたところ、マリアの答えは「それは大丈夫」。
マリア曰く、それをしたら今後努力することを忘れたり、今まで苦労しながらも頑張ってきたことが無駄になるから……とのことだった。
少し前まで、いろんなことから逃げていたオレとは違いすぎて恥ずかしい。
「ーー……なんだよマリア、お前結構熱い心の持ち主じゃねぇか」
「良樹、今更すぎる。 マリアの心、とっても熱い」
「すげぇな」
「でもそれを一番強く思わせてくれたのは良樹。 だからマリア、良樹のもとで修行すること、選んだ」
「マリアっ……!!!」
予想していなかったマリアからの温かい言葉に目頭が熱くなる。
オレはその感動的なテンションのままマリアを抱きしめようとしたのだが、それとほぼ同時……龍神から準備が整ったという報せが届き、オレたちはそれを見届けるべく再び龍神の近くまで歩み寄った。
『では頼むぞ龍神。 必要な力は妾が追って指示を出す』
『わかりました、お願いしますー』
太陽光眩しい青空の下、龍神と御白サポートによる【継承の儀】が始まった。
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もう50話……早い!!
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