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34 魅力的な小学校教師②【挿絵有】


 三十四話  魅力的な小学校教師②



 今日はまさかの愛ちゃんやマリアの通う小学校との交流会。

 神がかった運命力で愛ちゃん・マリア・石井さんとグループを組むことになったオレは、ひとまず皆が顔見知りだということで安堵の息を漏らした。



 これで周りがみんな知らない人ばかりだったらと考えただけでも恐ろしい。

 確実にオレは浮いて……愛ちゃんやマリアにかっこ悪いところを見せちゃってたんだろうな。



 グループごとに集まって最初に行われたのは各自の自己紹介。

 他のグループでは互いに挨拶が交わされており、全員のそれが終わるまでの間、必要のないオレたちは雑談に花を咲かせていた。



「ええ、マリアちゃんも加藤くんと同じで幽霊視えるの?」


「視える」


「じゃあ退治も出来ちゃうんだ」


「出来る。 マリア、パパみたいなエクソシスト……悪魔退治をする人になりたい。 ちなみに愛は巫女さんになりたい」


「そうなんだ」


「うん! 私、お兄ちゃんみたいになりたいの!」


「へー、なんかいいね。 ちょっとだけ分かるかも」



 うん、頼むからもうちょっと声のボリューム下げてくれな。

 ちょうど周りが自己紹介に集中してくれてて助かったぜ。



 全てのグループが自己紹介を終えたようで、担任と小学校教師・高槻先生が次のステップの説明を始める。


 他クラスは劇や創作などをするらしいのだが、うちのクラスがするのは宝探し。 事前に担任が学校中に宝……景品の名前を書かれた紙を隠しており、見つけたチームにそれをプレゼントするという内容だった。

 もちろんそれを聞いたオレたち高校生は『どうせあめとか文房具なんだろ』と予想。 しかしそこは流石担任……たった一言でオレたちのやる気を爆上げさせた。



「ちなみに言っておくと文房具とかが多いんだが……大当たりにはモバイルバッテリーもあるぞ」



「「「「!!!!」」」」



 現在の時刻は午前九時半……宝探しは午後三時まで行われるとのこと。

 高級なモバイルバッテリーをゲットするため、高校生たちも固唾を呑んで担任の「はじめ!」の合図を待っていたのだが……そんな中、事件が起こってしまったのだ。



 ◆◇



「ちょっと進藤さん、佐々木さん!! 帰るって……何言ってんの!?」



 いきなり響いた女子の怒声。

 声のした方を見てみると、一人の女子がクラスのヤンキー女子、進藤ゆりかさんと佐々木楓さんの手を掴んでいた。


 ちなみに進藤さんは金髪の少しウェーブのかかったロングヘアーで、佐々木さんが赤茶色の二つ結び。 二人の印象としては普段から態度がかなり悪い。

 

 二人は目の前で怯えている小学生のことなど気にもとめずに、引き止めようとしていた女子に対して舌打ち。 「痛いから離してくれる?」と殺気ビンビンの視線を女子へと向けた。



「ちょ、ちょっとどうした!!」



 担任が割って入るもヤンキー女子……進藤さんたちは一切怯まず。

「アタシら、そこまで暇じゃないんで」と冷たい視線を向けながら、引き止めていた女子の手を振り払って教室を出て行く。



「お、おい待ちなさい! モバイルバッテリーもあるんだぞ!? なんのために俺がこれを選んだと……お前らも欲しいだろ!?」


「んなもん、おっさんや大学生に媚び売れば余裕で買ってくれるから。 ほら、行くよ楓」

「だってさ、ごめんねセンセ。 あ、でも今ゆりかが言ってたのは冗談だから、そこは心配しないでダイジョーブですよー」



挿絵(By みてみん)



 二人の姿が完全に消え、教室内に満ち溢れていた熱い空気が一気に冷え込む。

 その後オレたち高校生組の目に入ったのは、取り残された小学生の女の子二名だった。



 二人の女の子が目に涙を溜めながら進藤さんたちが出て行った扉をジッと見つめている。

 戻ってきてくれると考えているのか、はたまた生まれて初めて見たヤンキーに驚き声も出ていないのか。


 周囲を見渡すと、皆どうしたらいいのか分からず出方を伺っている様子。

 だったらオレもあまり出しゃばらないでこのままでいよう……そう思っていたのだが。

 


「お兄ちゃん」



 不安そうな顔をした愛ちゃんがオレの手を握り、続けてマリアもオレの服の袖を引っ張ってくる。

 もしかして……



「え、なに?」


「お兄ちゃん、助けてあげて」

「良樹」



 ーー……やっぱりだ。



「オレが?」



 一応のオレの確認に、二人は無言で頷く。

 そんな上目遣いで見つめられてお願いされたら……はぁ、可愛いな仕方ない!!!



 オレはゆっくりと立ち尽くしている女の子たちの前へ。

 担任と高槻先生が「どうします?」と小声で会議しているのを無視して、女の子たちに話しかけた。



「あのお姉ちゃんたち怖かったねー」


「「!」」



 オレの声に驚いた二人が、涙目のまま……揃ってオレへと視線を向ける。

 

 

「あんな怖いお姉ちゃんたちとやるよりもさ、オレのチームに入って一緒にやらない? 実はオレ、宝探し苦手でさ、人数多い方が助かるんだけどなー」



 そう声をかけると女の子たちは「え、でも……」と戸惑った表情。

 これ以上は厳しいと感じたオレはすぐに後方で見守ってくれていた愛ちゃんとマリアに目配せ。 オレの意図を察してくれた二人はオレのもとへと駆け寄り、二人の手を優しく握りしめた。



「ね、お兄ちゃんもそう言ってるし、一緒にやろ?」

「マリアも、一緒にしたい」


「「ーー……っ!」」



 愛ちゃんとマリアの言葉が決め手となったのか、孤立した二人は一旦顔をも合わせ、笑顔を取り戻してこちらのグループへ。

 担任たちに視線を向けてみると、担任は申し訳なさそうな顔でオレに手を合わせており、高槻先生は……テンパっていたのだろうか。 若干涙目でオレに小さく頭を下げた。



「えーと、こうなっちゃいましたけど、問題ないですよね先生」


「あ、あぁ。 メンバーが増えた分、ちゃんと宝を探せよ!」


「あ、はい」


「じゃあ少し時間が押したけど……宝探し、スタート!!!」



 担任の合図とともに、各グループが一斉に教室を出て宝の探索へと向かう。

 普通に考えたら見つけるのは運なのだろうが……オレはそんな正々堂々挑むつもりはないぞ。


 石井さんたちが楽しそうに「どこにあるかなー」と話をしている後方で、オレは静かに後ろを振り返りながら小さく呟いた。



「ーー……ということだ。 お願いできるか?」


『任せてよ!』

『もちろん!』

『あやめちゃんを成仏させてくれたお礼! 分かったわ!』



 オレが話していたのは昨日母親とともに天国へと旅立った女の子・小西あやめの愉快な仲間たち。

 オレのお願いを聞いた人体模型・金次郎像・日本人形は大きく頷くと、他の霊仲間たちに協力を募り、担任が隠した紙を探しに向かう。



「一応は結構な大人数のグループなんだ。 できれば霊現象とかを使ってさ、一箇所……例えばそうだな、オレの靴箱に集めておいてくれると助かる」


『わかったわ。 多分ここにいる皆の力を合わせたら、そのくらいなら出来ると思う』


「ありがとう。 今度何か差し入れするよ」


『だったらワタチ、くしが欲ちいわ。 最近髪が乱れてて困ってるの』


「任せろ。 んで人体模型にはエロ本、金次郎には漫画、他の霊にはジュースでいいな」



『やったーー!!! 読んでみたかったんだエロ本ー!!!』

『僕もやっと娯楽の本が読めるー!!』

『『『ジュースー!!!』』』



 こうしてオレの味方になってくれた霊たちは一斉に四散。


 視線を前へと戻すと石井さん、愛ちゃん、新たに加わった女の子二人は未だ楽しそうに「あ、あそこありそうー!」などと話していたのだが、マリアは視えたり聞こえるんだったな。 オレが霊たちと話し終えるまで気づかないフリをしてくれていたのだろう……オレの方を振り返るなり、静かに微笑んだ。



「どうしたマリア」


「んん、なんでもない」



 しばらくして日本人形から『集まったわよ』との報告を受けたオレは、「ちょっとトイレ行ってくる」とその場を後に。

 指定したオレの靴箱を覗くと、十枚ほどの紙がビッシリと詰め込まれていた。



『どうかちら』



 靴箱の上にいた日本人形が、誇らしげな視線をオレに向けてくる。



「おお、想像以上だ。 サンキュな」


『まだいるかちら?』


「そうだな。 もし見つけづらそうな場所にあるやつとかあったら……それも頼めるか?」


『まかてて!』



 更なる宝を求めて日本人形が軽快に飛んでいく。

 オレはそんな彼女の後ろ姿を眺めながら宝の書かれた紙を一旦ポケットの中へ。 その後愛ちゃんたちのもとへ戻ろうと体の向きを変えようとしたタイミング……後ろから声がしたので視線を向けてみると、そこには先ほどの女性教師・高槻さんが息を切らせながら立っていた。



お読みいただきましてありがとうございます!!

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