28 癒しの空間!!【挿絵有】
二十八話 癒しの空間!!
トイレの花子さんと間違われていた少女の霊・小西あやめとその愉快な仲間たちに、明日旧校舎であやめの家族が経営している花屋の情報を探してくることを約束したオレと石井さん。
最終下校時刻になり石井さんと別れて一人のんびりと家路についていると、偶然にも通りかかった公園から愛ちゃんの声が。
覗き込んでみると、ちょうどマリアと特訓していた最中らしく、二人で低級霊を追い詰めているところだった。
「愛、これであの霊はそこから身動き出来ない。 あれ、まだある?」
公園の端。 壁際で何をされたのか、必死に体を動かしてこの場から逃げようとしている低級霊と、数メートル手前に愛ちゃん。 その後ろにマリア。 マリアが視線を低級霊へと向けたまま愛ちゃんに話しかける。
「うん、あるよ!」
「じゃああれ、早速使う」
「わかった!」
あれ? あれって何だろう。
思い浮かぶものが何もなかったため様子を伺っていると、愛ちゃんはポケットから何故か紙飛行機を取り出して、その先の低級霊へと狙いを定める。
か、紙飛行機? 一体なんで。
愛ちゃんとマリアのやっている意味が全く分からない。
しかしオレが覗いていることなど気づいていない愛ちゃんは低級霊めがけて紙飛行機を発射。 それは決して早いとはいえない速度ではあったが無事目標へと届き、その先端が当たったと同時……低級霊は苦しみの声をあげながら一瞬で灰と化した。
「やった! 出来たよありがとうマリアちゃん!!」
「愛、紙飛行機の練習、たくさんやった甲斐があった。 ナイスコントロールだった」
二人は目標を倒せたことで、お互いに抱きしめあって可愛くピョンピョン跳ねながら喜びを表現。 オレはそんな二人の様子を口を開け、呆然と眺めていたのだが……
「ん、良樹」
「あ、ほんとだ! お兄ちゃーーん!!!」
◆◇
家に着き先ほどの件を詳しく聞いてみると、どうやらあの紙飛行機はオレが力を込めた紙……お札で作ったとのこと。
マリア曰く、愛ちゃんがお札を霊目掛けて当てに行くのは非常に危険だということで、どうにかして対象に近づかないであの札を当てられないかと考えた結果、あの姿に行き着いたらしい。
「それにしても良くそこに……紙飛行機に辿り着いたな。 オレは全く想像もつかなかったぞ」
「それが良樹とマリアたちの差。 大人になるにつれて柔軟な発想が出来なくなることは、仕方のないこと」
「ぐぬぬ、何も言い返せねぇ」
その後お風呂が沸いたため愛ちゃんとマリアは二人仲良くお風呂場へ。
オレが一人黙々と夕食の準備を進めていると、昨夜からうちに住み着いた御白神社の神・御白が背後から『マリアに一本取られとったのう』と笑いながら顔を覗かせてきた。
「なぁ、本当に大丈夫なのか? 神社に戻らなくて」
『くどい。 舎弟を置いてきたと言っておろうが』
「でもさ、ぶっちゃけオレや愛ちゃんたちって学校があるし、誰もいなくなった家で一人とか寂しくないのか?」
『問題ない。 色々と楽しめておるよ』
「ーー……なんか悪戯してんの?」
『んなわけあるか。 実は愛の影に眷属を忍ばせておってな。 眷属からの視界を共有させて現代の学び舎……学校の内部を楽しませてもらっておったのじゃ』
「え」
マジ? そういうの聞かされてないぞ?
オレが大きく瞬きをしながら固まっていると、オレが信じていないとでも思ったのか御白は『じゃあ少し待っとれ』と瞳を閉じる。
そして次に放たれたのは衝撃的な言葉。 どうやら目を閉じると眷属の視界とリンク……見ている景色を観れるらしく、『あー、今愛がマリアの背中を流して……くすぐりあいに発展して、じゃれあっておるところじゃな』と何とも微笑ましそうな表情で呟いた。
「なん……だと」
お風呂場で裸で洗いっこ……それだけでも最高のシチュエーションなのに、そこからくすぐりあいからの、じゃれあい……だと?
「なぁ御白、その景色ってオレにも見せることが出来たりとかって……」
『何を言っとるのじゃお主は。 そんなに見たければ見にいけば良いじゃろて』
「エ」
行って……いいの?
思ってもみなかった御白の言葉に動揺するオレ。 確かに神様クラスの存在にもなるとその寿命もかなり長そうだし、人の年齢なんてほとんど差を感じていないのかもしれない。
試しに「それ、本気で言ってるのか?」と尋ねてみたところ、御白の答えは『何を言っておるのだ? 当たり前じゃろ婚約している男でもあるまいし』とのこと。 だからオレは、こう返したんだ。
「だよな。 じゃあ御白、一緒に行こうぜ」
『はぁ? どうして妾まで』
男というものは本当にちょろいもので、今日石井さんにオレの男として恥ずかしいところを見られたから……というのが大きいのだろう。 愛ちゃんとは何度か入ったことはあるけどタオルを巻いていたからな。 だから今回はタオル無しバージョンで突撃……二人の反応を見てみたくなってしまったのだ。
「いいじゃないか御白。 お前とは昨日会ったばかりだけどさ、風呂場での付き合いってかなり親しくなりそうな気がしないか?」
『ふむ。 確かにな。 ならば妾も……湯船に浸かることこそ出来ぬが、裸の付き合いをするとしよう』
「おおおお!! マジか!!!!」
御白の眷属からの情報では、まだ愛ちゃんとマリアは湯船の中で楽しくお喋りをしているとのこと。
ここで真の変態だったら『よっしゃああああ!! じゃあ今からオレの動物園、開園してやるぜええええ!!!』とか言うんだろうが、あいにくオレはそこまでの変態力を持ち合わせてはいないからな。
「御白、準備はいいか?」
脱衣所の扉前。
オレが緊張しながら声をかけると、御白は悪戯に微笑みながら親指を立ててくる。
『うむ。 妾たちがいきなり入って驚かせるのじゃろ? くふふ、心躍るのじゃ』
オレは静かに脱衣所の扉を開けて、御白とともに速やかに中へと潜入。 音を立てないよう細心の注意を払いながら、身につけていた衣服を解放する。
『良樹……お主、貧相な身体じゃのう』
「黙れぺったんこ」
浴室へと繋がる扉に手をかけると、勢いよく開いて突入した。
「うわあああ!! お兄ちゃん……に、みーちゃん!?」
「よ、良樹なんでここに……ってま、丸見え、うわああぁう」
二人とも罵倒してこなかったところをみるに、どうやら歓迎してくれたようだな。
それからオレたちは楽しい楽しいお風呂タイムを満喫。 愛ちゃんやマリアは眷属越しに様子を見ていた御白から、それぞれに合った除霊の特訓方法を教えてもらっていたり、オレはそんな三人の姿を鼻を伸ばしながら見守っていたのだが……
「へぇ、そうなんだ」
『うむ。 じゃからして、例え距離をとっておったとしても、目の前に立つことは……って、ん? どうしたマリア、そんなに顔を赤くして。 そんなに良樹が気になるか?』
「だって……し、仕方ない。 マリア、見るの初めて」
「そうなのマリアちゃん、パパのは?」
「それはある……けど、あんなに上を向いてるの……見たこと、ない。 なんか、恥ずかしい」
「あ、ほんとだ。 言われてみればそうかも。 ねぇお兄ちゃん、どうして……」
や、やべぇ。
オレ……石井さんの時とは比べものにならないくらいに興奮してる!!!
おそらくマリアはオレの気持ちが前を向いていることを、海外式に……ユニークな言い回しで口にしたのだろう。
もっとマリアや愛ちゃんの反応……ゲフンゲフン、会話を楽しみたかったのだがオレの感情がすでに爆発寸前。 やはりガールズトークに男は混ざるべきではないという言い訳を伝えた上で先に上がり、夕食の準備を再開することにしたのだった。
「今後一緒に入るのはやめておこう。 くせになりそうだぜ」
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作者、隠し方が上手い!!笑




