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25 学校の怪談?②


 二十五話 学校の怪談?②



 女子トイレに入って扉を開けたら女の子……トイレの花子さんが出たとわめく女子。

 オレはそんなことないだろうと心の中で突っ込みながらもその場を去ろうとしたのだが、オレの不運は続く……教室後方の扉をオレが開けるより早く誰かが開け、オレの目に映ったのは最悪なことに他クラスのヤンキー男。 がっしり体型のゴリラがオレに「退け」と言わんばかりに睨みつけながら無理やり体を押し込んできた。



「おわわっ!!」



 体格、見た目のインパクト、それら全てがオレよりも遥かに上。

 ヤンキーに押されたオレはバランスを崩して後方のロッカーにぶつかり、そしてそんなオレを見て自分の方が強者だと感じたのだろうな。 ヤンキー男は鼻で笑いながらオレを横目で見ると、その後は当たり前だが「ごめん」もなしにクラスのヤンキー女子の方へと向かっていった。



「ちょっとさっきの酷くない? 謝んないの?」

「いいってあんなインキャ。 俺の前に立つのが悪いんだよ」

「うーわ、性格わるー」

「そんなことよりカラオケの割引クーポン当たったから行こうぜ」

「えー、いくいく!!」



 カッチーン。



 オレはさりげなくヤンキー男を護っていた守護霊に強制除霊の威嚇射撃を実施。 それに怯えた守護霊はオレに勝てないと察したのか頭を下げて謝罪をし、誠意としてヤンキー男のズボンのチャックを破壊……下着を着ていたため完全制裁とまではいかなかったのだが、ヤンキー女子たちからは「きっしょ! 何見せてんの!!」と大ブーイング。 ヤンキー男の放課後のお楽しみを奪ってくれたのだった。



「へへ、ざまーみろや」



 ヤンキー男の悲しい末路を見て満足して帰ろうとすると、今度は見たくないものを見せられて機嫌の悪くなったヤンキー女子たちがオレにぶつかってくる。



「いって」


「は? さっきから突っ立ってないで早く退けばよかったじゃん」

「え、なに? もしかして脚が震えて歩けない感じ? だったらウケるんだけど。 肩貸したげよっかー? あはははは」



 うわあああああああ!!! なんなんだ今日はああああああああ!!!



 とはいえヤンキー女子に言い返せるほどオレには度胸はない。

 圧に負けたオレは「ご、ごめん」と腰を低くしながら人の隙間を縫うようにして前方の扉から帰ることに。 未だ花子さん話で盛り上がっていたクラスメイトを背に扉を開けたのだがなんてこと……オレの目の前には髪を上の方で二つに結った目のクリクリした小学生くらいの女の子。 少し昔風の服を着た女の子と目が合った。



「ーー……」


『え、もしかして……』



 高校にこんな私服姿の女の子がいたとしたら、誰かが確実に反応しているはずだ。

 皆が反応していないことからオレは目の前の少女を霊だと認識。 視えていないフリをしてそのまま帰ればいいだけなのだが、先ほどのヤンキー男やヤンキー女子にされた行動が頭をよぎった。



 例え霊とはいえ、ぶつかるように歩かれるのっていい気持ちはしないよな。

 しかも女の子だし。



「あ、忘れ物した」



 オレは視えないフリを続行しつつも独り言を言いながら自分の席へ。

 幸いにもオレの席を占領していた男子はお化け騒動の方が気になったのかいなくなっていたので、オレはそのまま席に座って女の子がいなくなるのを待つことに。 すると石井さんが後ろから「加藤くん」と声をかけてきた。



「え」



 振り返って真っ先に感じたのは石井さん可愛いという感情よりも周囲の男子から向けられたヘイト。 しかし石井さんはバk……ゲフンゲフン、天然だからかそこらへんは感じ取っていないようで、そのまま立ち上がるとオレの隣に。 朝と同じく顔を近づけてきて「もしかして、いるの?」と囁きボイスで耳打ちをしてきた。



「ーー……そう」


「扉のところ?」


「うん」


「女の子? 男の子?」


「女の子」



 頼むからこれ以上は勘弁してくれ。

 霊が視えること云々(うんぬん)もそうだけど、周囲からの嫉妬の目がマジでキツイ。 オレには生き霊が視えないっぽいんだから、これで飛ばされてたらどうするんだよ。



 オレがこれ以上話したくないような表情をすると、石井さんは小声で「なるほど、それで加藤くんはその女の子のことが心配で帰れないと……」と謎の解釈をして腕を組む。



「え」


「わかった」


「は?」



 おいおい、オレが反論出来る状態じゃないからって何を狂った解釈をしているんだこの人は。

 石井さんは「任せて」とオレに微笑むなりスマートフォンを取り出し……そこからこれまた意味不明な一人演劇が始まった。



「あ、そうだった。 今日は弟に買い物頼まれてたんだった……ごめん、今日は私帰るね」



 石井さんはそう大きめに声を出すとオレの腕を掴む。



「え?」


「「「え」」」



 その状況からなんでオレ?



 オレと周囲の反応がシンクロしている中、そんなことを微塵も感じていない石井さんは演技を続行。 「加藤くん、前に教えてくれたお店、まだ道覚えてないから案内してくれる?」とオレにアイコンタクトを取りながら、オレに触れていることで前方扉にいた女の子のことが視えたのだろう。 後方の扉からオレの手を引っ張りながら教室を出た。



 ◆◇



「本当に女の子がいたね。 でもあれでなんで加藤くんは花子さんじゃないって分かるの?」


「いや、だってそれは創作の話でしょ。 実際にいるわけないから」


「ええ、そうなの!?」



 やっぱりバk……天然だ。

 でも何故かそこも可愛く感じる。 顔が可愛いってだけで、そういうのもプラスに働くんだから徳だよな。


 オレは石井さんとその足で靴箱のある正面玄関へ。 しかしそこでオレが「じゃあオレ、特にあの女の子のことは気になってないからこれで」と靴箱に向かおうとしたのだが、石井さんは再びオレの手首を掴んで引き止める。

 その後オレを見上げながら……魅惑の言葉をかけてきたのだ。



「加藤くん、この後用事ある?」


「ーー……っ!」



 これを無意識にやってるのだとしたらかなりタチが悪いぞ。



 今石井さんがオレにしているのは可愛い女子の必殺技・【上目遣い】。 愛ちゃんやマリアので慣れた気でいたのだが、同い年の上目遣いは色気も混じっていてロリのそれとはまったくの別物。 オレは一撃で沈んでしまい、「いや、特に大きな予定はないよ」と答えてしまう。



 ーー……この現場をマリアに見られたらまた白い目で見られるんだろうな。



「そっか。 じゃあさ、ちょっとだけ私のわがままに付き合ってくれないかな」


「わがまま?」


「うん。 みんながいなくなってから、またあの女の子を見てみたくて」


「え」



 いくら可愛い石井さんとはいえ、興味本位でそこに手を出すのはかなりマズい。

 愛ちゃんたちにはオレがついてるからもしもの時は強制除霊やらなんやらで守ってあげられるけど、石井さんはそうじゃないからな。

 オレが無闇に近づくことを危険だということを伝えると、石井さんはそれは重々理解しているとのこと。 しかし気になったことがあったらしく、一目だけでいいから見せて欲しいとお願いをしてきた。



「気になったこと?」


「うん。 なんかその……本当に一瞬だったけど、あの女の子、困ってるような顔してなかった?」


「そう?」


「詳しくは言えないけど、昔の私……助けてくれる人を探してた時の私によく似てた。 だからお願い、一回だけでいいから」



 石井さんはオレの手を両手で包み込みながら再度上目遣いで見つめてくる。



 か、可愛い……だけどこれで確信したぜ。 石井さんは男を虜にする天才……そりゃあ男は言い寄ってくるし、同性からも嫉妬されて生き霊を飛ばされるわけだ。



 もちろんオレのそれに対する返答はイェス。

 皆が帰っていなくなるのを待つため、一時間ほど図書室で時間を潰すことになった。


 

「ふふ、なんかちょっとミッションみたいだよね」



 図書室へと向かっている途中、石井さんが口元に手を当てながらクスクス笑う。



「ミッション?」


「うん。『クラスメイトに見つかるな!』みたいな」


「そ、そうかな」


「そうだよ。 それでさ、時間まで図書室のどこに隠れよっか」


「え、隠れるの?」


「そりゃあそうだよ、見つかったらおしまいだもん。 どこにクラスの子たちがいるか分からないでしょ?」



 なんかまだにわかには信じられないな。

 オレの目の前にいる石井さんが、昨日まではあのオレに負けず劣らずのインキャだったなんて。



 オレがボーッと見惚れていると、石井さんが「加藤くん? どうしたの?」と立ち止まり顔を近づけてくる。



「ーー……いや、なんか石井さん、昨日までと違ってめちゃくちゃ明るくなったなーって」


「うん。 これも加藤くんのおかげだよ。 やっと本来の自分を出せて幸せ……本当ありがとね」



 図書室に到着したオレたちは誰も興味のなさそうな分野の本棚を見つけてそこで身を隠す。

 まぁかなりの至近距離で隠れていたもんだから、女の子の香りは直に嗅げるわ、たまに肌が触れ合って興奮するわでオレは全く退屈せず。

 体感では五分、いや十分くらいだろうか。 しかし現実には一時間経ったとのことで、いざ教室へと向かうべくオレたちは静かに立ち上がったのだが……



「ん、どうしたの加藤くん。 行くよ」



 先に立ち上がった石井さんが中腰止まりのオレを不思議そうに見つめてくる。



「あ、うん。 ちょっと待って。 あれだったら先に行ってくれても」


「ううん、一緒に行こ。 もう一時間経ったんだから誰もいないはずだよ。 ほら、立って」


「わ、わかってる。 一時間経ったのは分かったし、今立つからもうちょっと……」


「加藤くん? 一体どうしたのって……あっ」



 果たして、石井さんは一体何を見たというのだろうか。

 石井さんは一瞬視線を下へと移したかと思うと、それと同時に何かを察知。 オレに背を向けしばらく顔を赤くしていたのだった。



「ゆ、ゆっくりでいいから……ね」


「すみません。 ほんとすみません」



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