24 学校の怪談?①【挿絵有】
二十四話 学校の怪談?①
「お兄ちゃん、みーちゃん、いってきまーす!!」
「良樹、みい、行ってくる」
朝。 ランドセルを背負った愛ちゃんとマリアが、オレと御白に手を振りながら玄関を出ていく。
てか神社の神でもある御白のことを『みーちゃん』や『みい』呼びって……一夜で打ち解けすぎだろ。
「うん、いってらっしゃい」
『勉学、頑張るのじゃぞ』
「あ、お兄ちゃん! 今日は放課後マリアちゃんと公園で除霊の練習して帰るから遅くなるね!」
「そうなの?」
「ね! マリアちゃん!」
「そう。 心配ない、マリアがいるから愛に危険はない。 もしもの時は良樹のお友達……浮遊霊を囮にして逃げる」
「そ、そうか。 まぁあいつら危険察知能力鋭いし逃げ足も速いから問題ない大丈夫だと思うけど……あんま無理させないでくれな」
「わかった」
二人を見送ったオレは大きく背伸びをしながらリビングへ。
ソファーに腰掛けスマートフォンを弄っていると、御白が『ていうか良樹はまだ行かなくていいのか?』と宙に浮かびながら尋ねてきた。
「あぁ。 家事も慣れてきたからな。 まだ余裕だ」
『そうか。 では妾に新たな貢ぎ物を……』
「ーー……学校行ってくるわ」
『薄情者ーー!!!!』
こうして一切走る必要もなく学校に到着。
自分の席でのんびりしていると、周りからのリア充な会話が耳に入ってきた。
昨日誰と遊びに行っただとか今話題のドラマ、アイドルの新曲……
「やべぇ……何一つ会話に混ざれる気がしねぇ」
オレは改めて自分のインキャレベルを再確認。 絶望に浸り机に突っ伏していると、なんだろう……いきなりクラス内の雑音がピタッと止まる。
まだ時間はあった気もするけど、担任でも来たのだろうか。
時間でも確認しようと顔を上げようとした……その時だった。
「お、おはよう」
清々しく透き通った声が静寂に包まれた教室内に響き渡る。
その後に聞こえてきたのは「え」、「あれって……」、「うそー」といった女子たちの驚きの声。 一方で男子たちからは「誰?」やら「お前知ってる?」など困惑の声が聞こえてきた。
ん? なんだなんだ?
まったく状況が理解できなかったため顔を上げて周囲を見渡すと、皆の視線は一点……教室前方の扉にいる女子へと注がれている。
かなり美人だ……そんなことを感じながらその女子をオレも見つめてしまっていると、何故かその女子と目が合い……ゆっくりとこちらに向かって歩き出したではないか。
え、なになに? なんでこっち来て……
見てたことで怒られると感じたオレは、慌てて視線を黒板へと移してそこで固定。
しばらくすると先ほどの女子はオレの隣で立ち止まり、罵倒されるのかと思っていたのだが……優しく肩を叩いてきた。
「加藤くん、おはよう」
「え、あ、いや、ごめ……って、え?」
この声って……
「い、石井さん?」
「うん、そうだよ。 おはよ」
「お、おおおお、おはよ」
そこに立っていたのは昨日までとは真逆の雰囲気を漂わせていた石井さん。
長く重かった前髪も綺麗にカットされて可愛く巻かれて……ボサボサだった毛先も綺麗に整えられている。 それになんだ……香水なのかは分からないのだが、石井さんから漂ってくる甘い香りが心地よい。
生き霊が消えるだけでこんなにも明るく、可愛くなるものなのだろうか。
オレが驚きながら変貌を遂げた石井さんを見上げていると、石井さんは「昨日はありがと」とオレに顔を近づけて耳打ち。 そのまま後ろの自身の席に座った後、そこで石井さんだと認識したクラス内が一気に盛り上がりだした。
「えええ! やっぱ石井さんだ……なんであんなに変わったの!?」
「おわあああああ!! 可愛いいいい!!!!」
「いやいや変わりすぎ……お前話しかけてこいよ!!」
「恥ずかしいからお前が行けよ!!」
「てかなんで加藤に話しかけてたんだろ、ウケる」
いや最後に感想言ったやつ誰だ。 勝手にウケんな。
この石井さんの劇的な変化により石井さんの人気が爆発的に上昇。
休み時間になるたびにオレの後ろでは人だかりができ、女子たちはもちろん男子たちもなんとか石井さんとお近づきになろうと話しかけていたのだった。
まぁそれは良いことなのだが……
頼む……頼むからオレから離れたところで盛り上がってくれ。 あまりの格差で惨めすぎる。
「ねぇねぇ石井さん! お昼は一緒に食べようよ!!」
「え、いいの?」
「もちろん!! てかこれからは一緒に食べない!?」
「頼むそこに俺たちも混ぜてくれ!」
「えー男子は下心見えてるから無理」
「そんなぁ!!」
「あ、あの……みんなで食べたら」
「っしゃああ!!! ほらみろ、石井さんから許可出たから俺たちも一緒に食べるからな!」
「あああ、楽しみすぎてお昼が待ち遠しいぜえ……!!」
ーー……うん、お昼はどこか一人になれるところを探そう。
◆◇
昼休みになった途端、石井さんの周囲は大反響。
オレはお弁当を片手に教室を抜け出し周囲を探索していたのだが、ふと窓の外に視線を向けた先に見えたのは、今はもう倉庫がわりになっている誰にも使われていない旧校舎。
「旧校舎か。 確か鍵が掛けられて封鎖されてるっぽいけど……」
確か一年生の頃、近くにいた浮遊霊からどこの鍵が壊れているか……とか教えてもらった記憶がある。
まだ壊れたままだったら、これはチャンスじゃないか?
「あそこなら人もいないだろうし、ゆっくり出来そうだな」
人目がないことから浮遊霊たちと雑談してても変な目で見られないし、仮に悪霊とかが沸いてたとしても、そいつらを消せばいいだけだしな。
思い立ったら即行動だ。
オレはまだ誰もいない旧校舎へと直行。 記憶を頼りに以前浮遊霊が言っていた箇所の窓に手を掛けスライドしてみると、見頃開けることに成功……静かに侵入して簡単に掃除をした後、かなり有意義な時間を過ごした。
ーー……のだが。
「えー、あまり皆には関係のないことなんだが……近いうちに旧校舎を取り壊すことに決まった。 だからまぁいないとは思うけど、興味本位で近づくなよー?」
帰りのホームルームでの担任からの無慈悲なお知らせ。
「ーー……タイミング、悪すぎだろ」
ベストプレイスを見つけたと思った数時間後にこの仕打ち……あんまりだ。
オレがガクリと肩を落としている間にホームルームは終了。 それと同時にまた後ろの席が一気に騒がしくなった。
「ねね石井さん、家どの辺? 一緒に帰ろうよ」
「てかどこか遊び行かない?」
あー、うるせえ。
てか後ろにいるの誰だか分からんが、さっきからぶつかってくるなよ周りを見ろ。
もうこの気持ちを癒してくれるのは愛ちゃんやマリアしかいないと考えたオレはゆっくりと席を立ち扉の方へ。
すると……野良犬でも迷い込んだのか? 扉の向こうから「きゃああああ!!!」という女子の叫び声が聞こえてきた。
「お、なんだなんだ!?」
「何かあったの喧嘩ー?」
声を聞いたクラスメイトたちが一斉に視線を扉の方へと向ける。
え、喧嘩? だったら巻き込まれるの嫌だしもうちょっとここで待ってようかな。
皆が扉に集まっていくのとは逆に、オレは再びオレの席へ。
しかし時すでに遅しとはこのことで、オレの席では他の男子が腰掛けながら石井さんを口説き中。
くそ!! 今日はとことんツイてねぇ!!! くそお!!!
こうなったら少し遠回りにはなるが、後ろの扉から帰るしかない。
オレは自分のあまりの不運に舌打ちをしながら扉に手をかける。 すると前方の扉から先ほど叫んでいた声の主であろう女子がが血相を変えて飛び込んできて、息を切らしながら……かつ若干体を震わせながら周囲に群がりだしていたクラスメイトたちを見渡す。
「なになにそんな慌てて」
「変質者でもいた?」
叫んでいた女子は正面にいた女子の手を握りながら全力で首を左右に。
ゴクリと生唾を飲み込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「ーー……オバケ、出た。 絶対あれ、トイレの花子さん!!!」
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ラフすぎる挿絵、早く完成出来るのですがやめました 笑
前作の『小五転生』のように一枚に時間かけます!!!




