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魔法人  作者: ケシゴム
一章
33/69

報告

「なぁ?」

「…………」

「なぁ?」

「なんだ?」

「なんだじゃねぇよ!」


 日曜日の午後、優樹と霧崎は隣町にあるファミレスで少し遅い昼食を取っていた。


「何でなの? なんでわざわざギュウギュウ詰めで座らせたの? こんなに席はいっぱい空いているのに、なんで収容限界まで使ってんの?」


 警護、優樹、警護。対面に警護、霧崎、警護。窓を避けた六人掛けの席に、六人目一杯腰かけた席は、屈強な体格も相まって完全に許容オーバーだった。そのうえ食べる量もファミリーでは収まらないせいで、優樹たちのテーブル上はファウル寸前だった。


「仕方ないだろう。こっちの方がお前を守りやすいし、桜井さん(警護の責任者)たちも食事ができて効率が良いんだから」

「効率わりぃよ! 詰め込みすぎて皆飯食いづれぇし、いざって時にギュウギュウ詰めで動けねぇだろ! こんなに近すぎると逆に攻撃されてる気分だわ!」


 警備は十二名いた。四名は入り口や通路で警備を続け、四名は食事休憩。そして残り四人は同伴兼食事という配置だった。

 この配置を考えたのは霧崎だった。警護の責任者は桜井であったが、霧崎がいるときは彼が監督責任者となっていた。これは主導権を霧崎に与えるため坂口が考えた結果だった。


 優樹と霧崎は、小学生の時までは霧崎が主導権を持っていた。それは高い身体能力と正義感からくるカリスマ性でリーダー的存在だった霧崎と、気弱でその輪の中で付いていくだけだった優樹という関係だったからだ。しかし思春期を迎えると、優樹は霧崎に対し、憧れではなく肩を並べて歩く友になりたいと思うようになっていった。そして身体能力では勝てないと悟った優樹は、知識を高め足りない部分を補う存在として肩を並べようと考えた。するとそれに比例して口も上手くなり、中学を卒業するときには優樹が主導権を持つようになっていた。

 それは決して悪い関係ではなく、優樹は霧崎の身体能力を、霧崎は優樹の知性を認め、信頼のもと支え合い、対等で良い関係だった。ただこれには少し悪い面もあった。それは互いを尊重し合うせいで、何かがおかしいと思っても一度やってみてしまう事で、今のギュウギュウ詰めが良い例だった。


 結局霧崎もこのすし詰め状態には疑問を感じていたため、席は桜井ともう一名を残し四人となった――


「それでだな新垣。去年の事故について分かった事を話す」


 食事が一段落し、それぞれが食後のコーヒーやデザートを嗜み始めると、霧崎は見計らったように言った。


「え? あ、あぁ……」


 ここでの重要な話をすると言った霧崎には、優樹は少し驚き、周りを見渡した。

 

 店内は公になった事件のせいもあり、日曜日にも関わらず客は少なく、席の周りは閑散としていた。そして今まさに外に出て煙草を吸いに行こうと思った矢先だったが、桜井たちがいるだけに、優樹は何とも言えず頷くしかなかった。

 それに代わるように桜井が席を立とうとする。


「では俺たちは休憩交代する」


 桜井たちはあくまで優樹を護衛するのが役割だった。そのため捜査には出来るだけ関わらないようにしていた。

 それを霧崎は止めた。


「いえ。桜井さんたちも聞いて下さい。新垣を狙っている者を知っておくに越したことはないですよね?」


 霧崎は既にチームとして桜井たちを認めていた。それは優樹が気兼ねなく話しかける事によって築き上げた雰囲気がそう思わせていた。しかしそれは優樹が桜井たちに対する感謝と、互いに動きやすい環境を作るためだった。

 そんな勘違いをする霧崎に桜井は言う。


「いや。俺たちは新垣君を危険から遠ざけるのが仕事だ。だから“誰か”という先入観は持たないようにしている。気遣いは感謝するが、そう言う事だから済まない」

「い、いえ。こちらこそすみませんでした。では引き続き警備の方をお願いします」

「分かった」


 犯人からではなく、危険から“護る“という言葉に、霧崎は自身が間違っていたと知った。そして役割を果たすため桜井が見せた背中に、改めて信頼を寄せた。それはタバコを吸いたいとのほほんとしていた優樹にも活を入れ、桜井たちが配置に付く頃には真剣な表情にさせていた。


「――それで、去年の事故で何が分かったんだ?」

「あぁ。これは口外しないでほしいんだが、去年の事故は警察に過失があった事が分かった」

「ふ~ん」


 “ならこんな場所で言うなよ”とは思った優樹だが、鎌田たちに繋がる情報だけに、止めることはしなかった。


「どんな過失なんだ?」

「去年の事故は、警察の追跡から逃れようとした運転手が事故を起こし死傷者を出したとなっていたが、そのうちの一名、五十嵐理利愛を死亡させたのは警察車両だったらしい」

「はぁ⁉ お前それマジで言ってんの⁉」

「おい、あまり大きな声を出すな」

「あ、あぁ……わりぃ」


 不祥事の隠蔽は良く耳にしていた優樹だったが、それがこんな小さな田舎で起きていたとは驚きだった。それに加え内容が本当なら、信用そのものを失うだけに信じたくない話だった。


「じゃあ何か、鎌田たちは逆恨みじゃなく、本当に警察に恨みを抱いて報復しようとしてるって言うのか?」

「あぁ」

「じゃあ聞くが、鎌田たちはどうやってそれを知ったんだ? 坂口さんたちでさえこうなってやっと分かった事なんだろ? いくら被害者の遺族でもここまで完璧に隠蔽されれば分からないだろ?」


 優樹は、メディアで見聞きする汚職の数々に、公務員への不信感を抱いていた。それは警察へ対しても抱えていたが、坂口たちと接する中で得た信頼により一部の人間だけだと思うようになっていた。そして田舎だという思い込みが、霧崎の言葉を否定的に受け止めようとしていた。

 そんな優樹に対し、霧崎は淡々と言う。


「五十嵐理利愛が轢かれたとき、五十嵐妃美華も一緒だったらしい。それも五十嵐理利愛は、五十嵐妃美華を咄嗟に庇って犠牲になって、直ぐに助けを求めた五十嵐妃美華に対し、警察は犯人逮捕を優先し救護措置を全く取らなかったらしい」

「ほ、ほんとかよそれ……」

「あぁ。実際事件後、鎌田友子が裁判を起こそうとしていた事も分かっていて、もみ消そうと弁護士に圧力を掛けたという証言も取ったらしいから、間違いないと坂口さんが言っていた」

「まじかよ⁉」

 

 驚愕の事実に、どちらが悪か分からなくなるほど優樹は衝撃を受けた。


「じゃあ悪いのは警察の方だったっていう事か⁉」


 この質問に、霧崎は眉を顰めた。


「それはこの事件に対しての意味か?」

「そうだよ!」

「それは違う。原因はどうあれ、罪を犯す者が悪い。鎌田たちに原因を与えたのは警察だったかもしれないが、理由にはならん」

「泣き寝入りすれって言ってんのか⁉ 家族だぞお前? 殺されてはい終わりってならないだろ!」

「そのために法があるんだろ。罪には罰だ」

「その罪をもみ消そうと警察はしたんだろ!」

「あぁそうだ。だけど罪は消せるもんじゃない。必ず罰は付いて回る。それを鎌田たちは待ちきれず自分たちの手で与えようとして罪を犯した。その罪のせいで新たな憎しみが生まれた。鎌田たちに殺された被害者の家族が、また同じ事を繰り返せばどうなるかお前なら分かるだろ?」

「…………」


 納得は行かない優樹だったが、霧崎が伝えたい真意は理解できただけに、これ以上の反論は出来なかった。それでも熱を帯びた優樹は警察の非をどうしても許せず、険しい表情のままだった。

 

 優樹が熱くなってしまったせいで、雰囲気は悪くなり空気は重たくなった。すると霧崎はこのままでは良い結果には繋がらないと感じ、優樹の機嫌を取るように話題を反らす事にした。


「とにかく、今の話は事実だ。それより、インビジブルに対抗する手段は見つかったのか?」

「え? ……あぁ……まだ見つかってない」

「そうか」


 先ほどの話のせいで、今の優樹は親友である霧崎にも、職業が警察だからという理由で不信感を抱いていた。それが嘘を付かせた。


 優樹はインビジブルを無効化させる魔法陣を、霧崎にだけは教えておくべきか迷っていた。霧崎に魔法陣を渡しておけばもしもの時は必ず役に立つ、しかし霧崎に教えれば間違いなく警察へも渡ってしまう。親友の安全と警察への提供、そんな両天秤で迷っていた優樹だったが、今の精神状態では正しい判断ができなくなっていた。それどころか、心が内側に向いてしまい、会話する気力も失っていた。


 こうなると霧崎にはどうすることも出来ず、二人の間には沈黙が出来てしまった。すると主導権は完全に優樹へ移ってしまった。


「なぁ? もうそろそろ行こうぜ。もう皆飯食い終わったみたいだし」

「あ、あぁ……そうだな……」


 このままではマズいと理解しつつも、気分を害した優樹が威圧するように場所を変えると言ってしまった以上、霧崎には従う他なかった。そして話術も雰囲気作りも霧崎よりも遥かに上手い優樹が場を支配してしまったため、その後はほとんど会話もなく、悪い雰囲気のまま一日が終わってしまった。


 youtubeでオカメインコがチョコボのテーマを歌いながら歩く動画を見ました。すると理利愛が私の頭の中でその真似をしてウロウロしています。


 私はキャラクターを一作で終わらせず、様々な作品に登場させています。その中でも特にリリアは重要なキャラクターで、リーダー的な存在です。ですが基本阿保なので、リリアが出てくると全てギャグになってしまうため今回は抹殺しました。

 もしリリアの方が生きていれば、パトカーを大量の花火で飾ったり、警察署の窓ガラスに油性マジックで落書きしたり、郵便受けに溢れんばかりの生ごみを入れたりするでしょう。そして優樹も基本阿保なので別の物語になってしまいます。ただ根はやさしい子なので、人に直接危害を与えるようなことはしないという事だけは良い子です。


 

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